見出し画像

90歳までに使い切る お金の賢い減らし方 (大江 英樹)

(注:本稿は、2023年に初投稿したものの再録です。)

 いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。

 ストレートに “タイトル” に反応して手に取ってみました。
 私も「定年」を目の前に控える歳になりました。今後、定職をもって働き続ける予定はないので、これからは年金に加え僅かな資産を取り崩しながら日々暮らしていく生活に移ります。
 この物価上昇の世の中、インフレ対策として少しでも資産運用をとの気持ちもありますが、やはりそれが定年後のやるべきこと中心というのは如何にもおかしな話です。

 そのあたり、著者の大江英樹さんはどうとらえ、どうアドバイスしているのか。
 本書のタイトルでもある「お金の減らし方」について、大江さんはこんなふうに議論を進めます。

(p156より引用) まず本章では、「お金の使い方、減らし方」について、4つの側面から考えます。
 それは、(1) 自分の好きなことにお金を使う、(2) 思い出にお金を使う、(3) 人のためにお金を使う、そして (4) 無駄を楽しむ、という4つのテーマです。

 この議論の冒頭で、そもそも大江さんは「お金は増やすよりも減らす方が楽しい」と語っているのです。なるほど “減らす方が楽しい” という発想は、私にとっては新鮮な気づきでした。

 “楽しい” と感じるお金の減らし方、使い方にはどんなものがあるのか・・・、その点について、本書に記された最も印象に残ったくだりです。

(p152より引用) 人生の終盤が近づくにつれて、人生で最後に残る大切なものは何だろう、と考えるようになりました。そして・・・一番大切なのは「思い出」ではないだろうか、と自分なりに考えています。人生の充実度を高めるのは、その時々の体験であり、それにまつわる思い出ではないのか、と。
 だとすれば、もっと「思い出」を得るためにお金を使うべきなのではないでしょうか。自分のやりたいことにお金を使う、人とのつながりのためにもっとお金を使う、そうしたことの方が、お金を増やすことよりもはるかに大切なことだと思います。

 人生の幕を下ろす瞬間に最もたくさん残っているものは “お金” ではなく “豊かな思い出” であるべきで、その “思い出” を積み上げていく「手段のひとつ」が “お金” だというのが、大江さんのメッセージです。

(この大江さんの指摘は大いに首肯できるものです。
 が、他方、我が国における高齢者の資産状況には大きなバラツキがあるので、日々の暮らしや不測の事態への備えを最優先に考えざるを得ないという現実もあるでしょう。
 大江さんの視界の外にはまた別の大きな課題がありますね。)



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?