日本のいちばん長い夏 (半藤 一利)
(注:本稿は、2022年に初投稿したものの再録です。)
この時期(8月)には、できるだけ「戦争」を扱った本を読んでみようと思っています。
少し前になりますが、半藤一利さんの「日本人の宿題: 歴史探偵、平和を謳う」を読んでいて、“太平洋戦争” をテーマにした大座談会の話が登場していました。
本書は、その座談会の様子を記した著作です。
8月15日を挟んだ終戦前後、様々な立場、様々な場所で同じ時を迎えた30人の人々の証言は、心に留め置くべき真実の吐露でした。
それは、読む人の心に改めて戦争の悲惨さや理不尽さを刻み直すものもあれば、戦争に至らしめた人の無責任さへの怒りや虚しさを思わせるものもありました。
たとえば、ポツダム宣言受諾をめぐる8月10日ごろの政権内の様子を振り返ってのやりとりです。
こういった当時の政権や軍部中枢にいた方たちの生々しい証言を耳にすると、何か他人事のような虚しさとともに強い憤りを抑えることができません。あなた方が “文学論争” をやっている最中にも、数多くの一般国民や前線の兵士たちがその尊い命を落としていったのだと。
また、極限状態の戦場で敵と対峙していた兵士たちの本音を語る声。
戦闘は誰の意思で行われていたのか、意思と肉体(生命)とは別々だったということです。理不尽な環境に置かれ、心にもないこと、理屈では理解できない行動をとらされ、その結果貴い命を亡くしていったのです。
そして、座談会の最後のあたりでのやり取り。
あまりにも大きな代償でした。「せめてもの」という真摯な気持ちの発露でしょう。
この座談会が設けられたのは昭和38年ですから、終戦から18年後になります。司会を務めた半藤さんも33歳、多くの戦争体験者がまだ健在で記憶も確かなころでした。
それから半世紀以上の歳月が過ぎ、こういった方々から直接体験談を聞く機会はほとんど無くなってしまいました。
それだけに、この座談会の記録はとても貴重です。そしてその場で交わされた証言は、決して忘れてはならない記憶と教訓に満ちています。
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