ものの言いかた西東 (小林 隆/澤村 美幸)
(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)
何かの書評を読んで気になったので手に取ってみました。
従来からよく語られる「方言」の地域差とかではなく、もっとベーシックなレベルである「ものの言い方」を切り口に、多くの事例を紹介しながら地域文化論を展開しています。
そして、その地域差には、関西圏・関東圏・東北圏・九州圏等の区分において一定の傾向があったとのことです。この指摘はとても興味深いですね。
たとえば、京都の典型的な挨拶のやりとりとして、「あら、お出かけどすか」「へえ。ちょっとそこまで」というのがあります。京都では、道で出会ったとき最低限の言葉のふれあいはあるにしても、他人事に極力かまわないという姿勢が顕著です。しかしながら、東北地方では全く異なった会話のやり取りになるのです。
さらに、東北人の会話は短い言葉のキャッチボールになります。これは、慣れていない人から見ると、唐突でぶっきらぼうな言い様と映るのです。
こういったものの言い方に関する志向や好みを著者は「言語的発想法」と名づけ、7つに類型化しています。
こういった類型は、多くの場合、関西地方と東北地方(ときに九州南部も含む)で両極端な差異が発現されるのです。
著者は、その差異が発生した原因についても、多角的な観点から考察を進めています。ただ、この社会的・文化的背景の考察は、著者自身に認めているように、まだ緒に着いたばかりのようです。
「ものの言い方」の変遷に一定の方向性があるのか、たとえば、関西圏を基点に変化の広がりが同心円状に進んだのか、あるいは、可逆的が動きもあるのか・・・、このあたりまだまだ興味は尽きないですね。
さらなる深堀りした論考の登場が楽しみです。
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