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マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書 (大嶋 祥誉)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 よくありがちな初心者向けビジネスHow To系のタイトルです。むしろ、その「いかにも」というタイトルに惹かれて読んでみました。

 紹介されている「基本的思考スタイル」や「具体的フレームワーク」等については、過去に読んだ幾多の類似本の域を出ません。ただ、復習も兼ねて、いくつかの著者のアドバイスを書きとめておきます。

 まずは、そもそも「問題解決とは何か?」というスタートラインの基本認識について。
 それは、問題に対する単なる条件反射的な「対処」とは全く異質なものです。

(p55より引用) 本来の「問題解決」とは、起こった事象に対処することではなく、「なぜ、その事象が起こったのか?本当は、どうであればその事象が起きないのか?」という問題の本質まで掘り下げて解決することです。

 したがって、結果としての「具体的解決策」は、問題を提起した人間にとっては思ってもみなかった内容でありうるのです。
 これは「問い」の立て方の見直しに起因します。「問い(=問題)の核心」に迫るという思考プロセスを経由させるのです。

 「問題」はしばしば「願望」という形をとります。この「願望」に対する解決策を検討するにあたっても、たとえば、「欲しいから買う」といった短絡的な思考をしてはならないのです。まず、「願望」を正しい「問い」のスタイルに変換させなくてはなりません。「問いから始める」というわけです。

(p138より引用) 「タブレット型PCが欲しい」→「タブレット型PCを買うべきか?」という問いを働かせ、その問いから思考や検証を始めることで正しい判断に近づくことができます。
 これはイシュー・ドリブン(Issue Driven)とも呼ばれます・・・

 「問い」という形になると、その思考はワンステップ前からスタートすることになります。これにより、“そもそも論”に戻りNoの選択肢も含めたより俯瞰的・客観的な判断が可能になるのです。

 本書では、当然、「ロジックツリー」「3C」や「7S」といった問題解決のための基本的なフレームワークも紹介されています。しかしながら、著者も短絡的な「フレームワーク絶対論者」ではありません。

(p110より引用) マッキンゼーの仕事というと、問題解決のためのフレームワークを使いこなして行うイメージがあるみたいですが、フレームワークだけではバリューは出せません。フレームワークもたしかにツールとして使うのですが、そこから出てきた情報や知見をどのように扱うか、あるいは、フレームワークの切り口そのものをどう「創造」するかというのは個人のセンス。

 ただ、こう説かれると「おいおい」という印象を受けてしまいますね。
 本書はマッキンゼー式思考法の入門書だからという割り切りなのかもしれませんが、最終的なKFSが「個人のセンス」だと断言されると、ちょっと期待はずれ。
 確かに章立てでは、「第4講義 マッキンゼー流 問題解決力を高める思考術」「第5講義 マッキンゼー流 自分力の高め方」等と続くのですが、そこでのアドバイスは、それこそ「具体的一般論」といった感じのものに止まっています。

(p149より引用) 物事はビッグピクチャー(大きな絵)で見ろ、視点を高くしてブロードビュー(広い視野)を持て

と言われても、私も含め多くの人は、「そんなことは頭では分かっている、にもかかわらず、そういった思考・行動ができないんだ」というレベルに止まっているのです。

 そういった人に対して「見ろ、持て」と諭しても、それこそ “根本的な解決” にはなりませんね。



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