評論家の小林秀雄氏と数学者の岡潔氏という同年代の巨人どおしの対談集です。
お二人の会話を追いかけてみて、「なるほど」とサクッと腹に落ちるくだりもありましたが、知識の絶対量はもとより話題の転換や論旨・論理という点でも、全くついていけないところの方が圧倒的でしたね。当然ではありますが・・・。
とはいえ、その中でも、特に私の関心を惹いたところをいくつかご紹介します。
こういうやりとりは鳥肌が立ちますね。メタファ的な表現と本質をザックリと掴み出す指摘は達人技です。
対話は、「批評」という小林氏の土俵を訪れたあと、今度は森氏のフランチャイズである「数学」を話題にします。
数学は「抽象的な観念」だと認めつつもそこには「個性」がある、研究者一人ひとりの「世界」があるというのです。
そして、さらに、その「個性」について話は進みます。
ここにも「本質」という言葉が登場します。一流の研究者が一途に探求するのは、まさに“物事の本質”なのです。
次にご紹介するのは、「時」に関してのお二人のやりとり。
私の理解力を遥かに超える会話なので、ここでお二人が共鳴している内容は分かりませんが、とても魅力的なやりとりだと感じました。
そして、もう一度「詩と数学」についての話題。
岡氏が、「数学は、まだ形に現れていないものを形にする」と話し、それに対して小林氏が「そうすると詩に似ている」と応えます。
本書で紹介された対談、お二人にとっては気儘な雑談なのかもしれません。それがこういったやりとりなのですから、なんとまあ凄いことです。