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アリエリー教授の人生相談室 ─ 行動経済学で解決する100の不合理 (ダン・アリエリー)

(注:本稿は、2016年に初投稿したものの再録です)

 ダン・アリエリー氏の著作は、「予想どおりに不合理」「ずる」等を読んだことがあります。
 本書は、ウォールストリート・ジャーナルに連載されたコラムの書籍化とのことなので、さらに読みやすくなっています。

 ただ、内容は、本当に雑談のような「コラム」の集積でしかありません。この本を読んで「行動経済学」に関する知見が深まるかといえばそれは無理でしょう。とても貧弱です。
 たとえば、行動経済学における代表的な成果であるプロスペクト理論「損失回避バイアス」についても、こういった触れ方に止まっています。

(p175より引用) 損失回避は、社会科学の原理のなかでもとくに本質的で理解が進んでいる考え方で、ざっくりいうと、同じ価値のものであれば、得るより失う方が感情的なインパクトが大きいことをいう。

 また、「意思決定」行動についてはこんな記述があります。

(p186より引用) より重要なこととして、時間をかけてもどの選択肢がベストなのかを決められないのは、迷っている選択肢がどれも全体的に見て大差ないからだ。・・・
 さて似たりよったりの選択肢のなかで決めなくてはいけないことがわかったら、次に考えなくてはいけないのは、時間の機会費用だ。決めあぐねてさらに多くの時間を無駄にしないように、どうにかして決断しなくてはならない。コイントス方式の意義はここにある。

 これでは、理論の解説ではなくHow toとかTipsの類の紹介ですね。

 ということで、本書を読んで最もためになったのは、行動経済学で読み解かれる実社会での人々の行動例や、今後の行動経済学の探求テーマとなりうる人々の特異な行動パターンとかの紹介などではなく、「前の車が横入りを許すとムカつく」というタイトルのコラムに記されていた一節でした。

 延々と続く渋滞の中で、自分より前にいる車のドライバーが何台もの車をいれてあげる、入れてもらった車のドライバーは喜び、かれらに感謝する。でも、自分は・・・。

(p195より引用) 本当の思いやりとは、他人に直接的、間接的によいことが起こるのを喜べることなんだ

 この考え方は改めてそうだと思いますね。
 正直なところ、私も大いに反省すべきところがあります。



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