ずる ― 嘘とごまかしの行動経済学 (ダン・アリエリー)
(注:本稿は、2013年に初投稿したものの再録です)
ダン・アリエリー氏の本は、以前「予想どおりに不合理」を読んでいます。最近はやりの行動経済学の入門書としてはなかなか面白かったですね。
本書は、不正と意思決定をテーマにした同じ流れのものです。
まず、著者は、本書での立論における基本的仮説を設定します。
この二つの動機は相容れないものですが、私たちのもつ「認知的柔軟性」という能力はこの両者のバランスをとり、「ほんのちょっとだけのごまかし」を行う自分を正当化するのです。
次に、著者は、「どういう場合に人間は不正(ごまかし)をするのか」を数々の実験によって明らかにしていきます。
「自分以外に見ている人がいないとき」「相応の金銭が与えられるとき」・・・、「疲れているとき」もそうです。
こういうほんのちょっとだけの不正(ごまかし)は、それ以降の行為にも悪影響を与えることが、著者の「(偽)ブランド品」を使った実験で明らかにされています。
著者は、この状態を「どうにでもなれ」効果と名付けています。
さて、本書を読み通してみて、最も興味を引いた点をひとつ、最後に書き留めておきます。
それは、著者が紹介している数々の「不正」促す要因の中に「創造性」を挙げている点です。
「創造性」は、美徳として、また社会の進歩を促進する重要な原動力として賞賛されるのが常ですが、この著者の指摘は意外であり、同時に的確でもあります。
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