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データ分析の力 因果関係に迫る思考法 (伊藤 公一朗)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 Twitterの投稿でお薦め本として紹介されていたので手に取ってみました。

 ちょっと前に出版された本ですが、その時には「データ分析の入門書」としてかなり評判が良かったようです。

 まずは、この手の入門書としては定番の「因果関係と相関関係とは違う」という点の解説から始まります。

(p38より引用) 2つのデータの動きに関係性があることを、統計学では「相関関係がある」と呼びます。・・・
 問題は、XとYに相関関係があることがわかっても、その結果を用いて因果関係があるとは言えないことです。・・・「XとYに相関関係がある場合に起こり得る3つの可能性」を示してみました。
 ① XがYに影響を与えている可能性
 ② YがXに影響を与えている可能性
 ③ VがXとYの両方に影響を与えている可能性

 データ分析者にとって非常に厄介なのは、この3つの可能性の全てが・・・データの動きと整合的であることです。

 このイントロダクションの後に、「因果関係の存在の有無」を確認するための分析手法の解説が続きます。
 具体的には、ランダム化比較試験(RCT)、RDデザイン、集積分析、パネル・データ分析といった方法ですが、それらを用いた分析は、企業や行政機関でも「科学的エビデンス」として活用されています。

(p234より引用) RCTなどの科学的な方法で因果関係を示すことの実務的な利点は、イデオロギーなどを超えた、データ分析の結果に基づく政策議論ができることだと考えられます。

 つまり「定量的な根拠」をベースとした政策効果の議論を可能にするのです。ともかく、こういったニュートラルな根拠(因果関係分析)に基づいた意思決定は当然のプロセスですし、もっとなされるべきですね。

 ただ、その場合にも熟慮すべき課題があります。
 ある調査の分析結果を活用する場合は、その分析自体の妥当性(方法・結果)に加え、その結果を一般化して適用できるか(他の環境下においても同様の結果となるか)という検証が必須になるという点です。

(p260より引用) データ分析の結果が分析で対象とされた主体以外へも適用可能なのか、という「外的妥当性」の問題は非常に重要であり、外的妥当性と内的妥当性の両方を加味した場合、どの分析手法が優れているかは状況によって異なってくる

 合理的な根拠にもとづく意思決定を進展させることは間違いなく望ましいことです。そのためにも、私たち一人ひとりが意思決定の適否を判断するうえで、示された数字に騙されない「統計リテラシー」をしっかりと高める必要があります。

 数字は、正しい事実を示す証左であり、望ましい結論に導く標のはずですが、敵もさるもの、逆に尤もらしく見せて “判断をミスリードさせる手段” としても使われますから。



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