教養としての大学受験国語 (石原 千秋)
タイトルが気になったので手にとってみました。
まさに、実際の入試問題を読み、回答を考えるというプロセスを辿る変わった形式の新書です。
現代国語の入試攻略本のようでもありますが、内容は、人文・思想関係の文章を解釈しその主張を理解することを目的にしているので、現代思想の入門書のようでもあります。したがって、想定されている読者は受験生に止まりません。大学生や社会人もターゲットです。
まず、著者は、本書の目的をこう語っています。
ここでの座標軸の立て方の基本はいたってシンプルです。「二項対立」を表した座標上に論者の主張をプロットするのです。
対象となる文章の著者の考えを二項対立の座標軸上にマークすれば、それを挟む両サイドからその思想を眺めることができます。そういった多面的な視点を意識して取り入れることにより、自分自身の考え方を組み上げていくことができるのです。
別の言い方をすれば、多くの評論はこの「二項対立」の図式を基本形として立論を進めているということにもなります。
たとえば、以下のような論旨の表明がそれにあたります。
以上のような「二項対立を利用した思考方法」の説明以外にも、本書では、さまざまな現代批評文が紹介されています。
その中から興味深いものとして、「ポストモダン思想の特徴」についてのフレーズを書き留めておきます。
バブリーといえば、確かに一時期、糸井重里氏や川崎徹氏といったコピーライターが脚光を浴びた「広告ブーム」の時代がありましたね。「商品そのものの質や価値」ではなく「広告がアピールする商品イメージ」が消費を先導(扇動)していった世情です。
さて、本書、(冒頭のコメントの繰り返しになりますが、)「現代国語」の大学入試問題を材料にした現代思想の概説書と捉える人もいれば、現代思想の基礎知識を活用した「現代国語」の入試対策本と考える人もいるでしょう。
企画としては面白い趣向の本ですが、入試対策本としてはちょっと難解だと思います。本書を読解できる受験生であれば、現代国語はかなり得意な生徒でしょう。
逆に、現代思想の入門書だとすると断片的で体系的整理に欠けると言わざるをえません。
残念ながら私には、「二兎を追うもの・・・」という印象が残りました。
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