見出し画像

高校生にわかりやすく会計を説明したい|24冊目『「専門家」以外の人のための 決算書&ファイナンスの教科書』

西山 茂(2019 , 東洋経済新報社)

会計知識のない高校生に会計を説明するエレベーターピッチ

私は勤務先の学校が設置する高校の「起業・国際」のゼミにプロボノとして参加させてもらっています。

※聖学院高校グローバルイノベーションクラスはProjectという科目名でゼミ活動を行なっています。「宗教・文化」「海洋」「起業・国際」「音食体・生活」「哲学・メディア・芸術」の5つのゼミがあり、生徒たちはいずれかに所属をして研究活動を行います。

詳しくはこちら→https://www.seigakuin.ed.jp/global/senior/

このゼミで生徒たちはソーシャルビジネスのビジネスプランを考えて、そして実際に起業をしてビジネスを行います。
必要経費は基本的に学校が負担をしますが、ビジネスなので生徒たちも収支について意識をしなくてはいけませんし、ビジネスコンテスト応募の際には、根拠のある収支計画書を添付する必要がある場合があります。

ある日の授業前に主担当の先生から、生徒たちは数字を把握する必要もあるので、会計についての考え方を簡単に5分くらいで説明してくれませんか?と頼まれました。
まったく準備はしてきていなかったのですが、ビジネスで必要な財務三表、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書について説明しました。
簡単に説明したつもりでしたが、財務三表それぞれによって何がわかり、なんのために必要なのかということを自分自身で整理できていなかったので、うまく伝えられなかったと反省しています。

おそらくまた同じような機会があると思いますが、次は、会計について何も知らない高校生に短時間でわかりやすく説明できるように経理の趣旨を整理しておこうと思い、『決算書&ファイナンスの教科書』を読み返しました。

※以下、記事は私が自分の知識で説明しているような書き方になっていますが、基本的に、本に書かれている内容を紹介させていただいています。


アカウンティングとファイナンス

経営に関する数字を把握することの意味にはアカウンティングファイナンスの2つがあります。

アカウンティングは企業の立場から数字を扱っていきます。
アカウンティングという言葉を調べると、そのまま「会計」や「経理」と説明されています。
また、「記録」や「会計報告」とも書いてあります。

アカウンティングは具体的には2つの分野に別れています。
一つは、企業の業績を企業外部に報告する資料である貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CS)などを作成する財務会計です。

もう一つは企業内部で経営管理のために数字を活用する管理会計で、例えば、どの部門や製品が儲かっているのかを把握して戦略の策定に役立てたり、数字を使ってシミュレーションを行い、意思決定の参考にするといったことがあります。

一方のファイナンスは、企業の外部にいる投資家などの資金提供者の目線で企業の数字を扱うものです。
株式を公開している企業は株主や、銀行、社債の保有者から資金を預かって事業を行なっています。
そのため、投資家の考え方を理解して、評価を高める経営を行い、企業価値を上げ、時価総額、株価を高めることを行います。
そうした数字の活用がファイナンスとなります。


貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書

あなごさんは経理部ではなくて営業部だと思いますが。

財務会計は外部報告のために必要です。
「起業・国際」ゼミの生徒は個人事業主登録をしますので(聖学院みつばちプロジェクトは合同会社にしています)確定申告が必要になります。
また、たとえ外部報告が必要なかったとしても、経営者が自分のビジネスが果たしてうまくいっているのかどうかを判断するためには、数字の根拠、すなわち業務成績の把握は必須です。
つまりビジネスの状況を判断するためにも会計は必要で、業績を把握するために必要なのが貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書となります。

貸借対照表は決算日の数字の記念写真

貸借対照表
簡単にいえば、貸借対照表とは企業の決算日における数字を使った記念写真のようなものです。

貸借対照表は右と左に別れていて、左右それぞれの合計金額は同額になります。
右側は負債純資産の金額が書かれています。
これは企業がどのように資金を集めているかを示しています。
負債は、例えば銀行からの借入金など、株主以外から預かったお金などで、純資産は株主から預かったお金などです。

左側を構成するのは、資産で、すなわち企業が事業を行うために保有しているお金や、土地、機械、権利などです。
一般的に資産の具体的な項目はキャッシュになりやすい順に並んでいます。
最初にキャッシュやキャッシュになりやすいものが含まれる流動資産が記載され、次にキャッシュになりにくい土地や機会など有形固定資産、権利や買収金額などを表す無形資産といった固定資産が記載されます。

右側の負債も1年以内に支払う必要がある流動負債とゆっくり支払う固定負債とに分けられます。

左側の資産の構成内容に着目すると、企業の事業構造が理解できます。
たとえば小売業であれば流動資産の比率が高くなりますし、製造業であれば設備や機械が必要になり固定資産の比率が高くなります。
不動産業であれば有形固定資産が多くなりますし、製薬業など権利ビジネスになると無形固定資産の比率が高くなります。

右側の負債、純資産の比率に着目すると、企業の安全性の参考になります。
負債の金額が小さく、純資産の金額が大きいと安全性は高くなります。

損益計算書は一定期間における利益ベースの活動報告書

損益計算書
企業の一定期間における利益をベースにした活動報告書です。

売上高をスタートに、コストをいくつかの段階に分けて計算し、5段階の利益(日本の場合)を集計しています。

1段階目は売上から売上原価を引いた売上総利益です。
よくビジネスの現場で「粗利」といわれているのがこれです。

2段階目は売上総利益から販売費及び一般管理費(略して販管費といわれます)を引いた利益の営業利益です。

3段階目は営業利益から配当金や利息など財務関係中心に本業以外の収益を計算した経常利益です。

4段階目で、事業の売却、整理、自然災害などの臨時、異常な利益や損失を加えて、税金等調整前当期純利益を計算します。

5段階目、法人税等を差し引いて当期純利益を計算します。

業界や業種で利益構造、コスト構造が違いますが、そうしたことがどの段階の利益率が高い(あるいは低い)のかで見えてきます。

売上総利益から売上高総利益率がわかります。
多くの業界の売上高総利益率は20〜30%程度ですが、新薬企業、ソフトウエア開発企業などは研究開発費にコストが掛かるので製造コストを押さえて高値で販売するため、売上高総利益率は60〜80%となっています。
化粧品企業は販売促進にコストを掛けるため売上高総利益率は70〜80%
と高くなっています。

さらに2段階目の営業利益率の高い企業は、本業の収益力が強いことを示していますし、3段階目の経常利益率が高い企業は財務が強い企業であるということが理解できます。

キャッシュフロー計算書はキャッシュの動きベース

キャッシュフロー計算書
損益計算書が利益ベースの一定期間の活動報告書であったのに対して、キャッシュフロー計算書はキャッシュの動きをベースにした企業の一定期間の活動報告書です。

なぜ、キャッシュフロー計算書が必要なのかといえば、企業が事業を継続できるかどうかはキャッシュのあるなしで決まるからです。
利益上で黒字であっても、キャッシュがなければ破綻してしまいますし、逆のケースもあります。
キャッシュが適切に生み出せているか、回っているかは、企業が事業を継続する上で重要なポイントとなります。

キャッシュフローは以下の3つに分けて集計します。

営業活動からのキャッシュフロー
本業の儲けに関連するキャッシュフローで通常はプラスとなります。

投資活動からのキャッシュフロー
事業投資や財務投資に関連するキャッシュフローで通常はマイナスとなります。

財務活動からのキャッシュフロー
資金提供者(株主や債権者)とのやり取りに関連するキャッシュフロー。

この3つのそれぞれのキャッシュフローがプラスかマイナスかを見ることで、企業の状況を理解することもできます。

安定ステージ
営業活動(大+)投資活動(−)財務活動(−)
一般に事業で順調に稼いでいるので営業活動からのキャッシュフローは大きなプラス。
大きな投資は必要ないので投資活動からのキャッシュフローはそこそこのマイナス。
結果としてキャッシュが余ってくるので、借入金の返済や配当により財務活動からのキャッシュフローはマイナス。

成長ステージ
営業活動(+)投資活動(大−)財務活動(+)
事業からの儲けにより営業活動でプラス。
成長、拡大のために投資をするので投資活動で大きなマイナス。
投資活動のマイナスをカバーするために借入や増資を行い財務活動からプラス。

事業再構築
営業活動(+)投資活動(0または+)財務活動(大−)
事業の再構築のために一部の事業や設備を売却。
投資活動も一時的に抑えるため投資活動からのキャッシュフローはゼロ、もしくはプラス。
借入金や社債の返済を行うために財務活動からのキャッシュフローは大きなマイナス。


収益性と効率性 ROE、ROA

企業の状況を判断するにあたり、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を分析する他に、収益性効率性成長性安全性にも着目する必要があります。

収益性や効率性を評価する指標としてROEやROAがあります。
ROEとは株主が出した資金に対する儲けの率で以下の式で表せます。
具体的なROEの目標水準は8〜15%程度です。
ROE=自己資本利益率=(親会社株主に帰属する)当期純利益÷自己資本

ROAとは保有している資産に対しての投資効率を評価する指標で式は以下となります。
ROA=総資産利益率=利益÷総資産(資産の合計)

米国のデュポン社のデュポンシステムではROEを3つの比率に分解します。
ROE=(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)=売上高当期純利益率×純資産回転率×財務レバレッジ
このうち収益性を示すのが売上高当期純利益率で効率性を示すのが純資産回転率です。

ROAにデュポンシステムの考え方を当てはめると次のようになります。
ROA=(利益÷売上高)×(売上高÷総資産)=売上高利益率×純資産回転率

利益率と回転率に分解することによって事業の特徴を把握でき、課題の手がかりを見つけることができます。

たとえば、同じ飲食業界から高級フレンチ・イタリアンレストラン展開のひらまつと、低価格のイタリアンレストラン展開のサイゼリアのROAを比較してみます。
ひらまつは高めの売上高総利益率、低めの総資産回転率。
対するサイゼリアは低めの利益率と高めの回転率ということがわかり、ビジネスモデルの違いが理解できます。

まだまだ勉強すべきことはたくさんあるのだ

安全性と成長性を示す指標としては、純資産比率やデット・エクイティ・レシオ、流動比率、インタレスト・カバレッジ・レシオ、格付け、売上高成長率、純資産増加率などがあります。

さらには株価の評価の指標として、EBITDAマルチプル、PER、PBRなどがあります。

これから会社を経営していくということを考えれば、こうした知識も必要となってきますし、さらにファイナンスの章で説明されている、割引率、現在価値、資本コストやWACC、NPV、IRRなども理解していく必要があるでしょう。

とはいえ、今回の趣旨は高校生にわかりやすく会計を説明するなので、この辺にしておきたいと思います。

というか、日常的に縁の遠い仕事をしているので、自分自身しっかり理解できていないということが本当のところではあります。

以前は私も民間企業の営業管理職だったので、毎日数字を見ていましたが、いまは学校法人という非営利組織の広報職員なので数字にはすっかり疎くなってしまっています。

これを機会に自分自身また学ばなくちゃと思っています。

【参考というかおウチの本棚にあった書籍たち】
天野 敦之, 2012『会計のことが面白いほどわかる本』 中経出版
金児 昭, 2007『これでわかった!バランス・シート』 PHPビジネス新書
竹内 謙礼、青木 寿幸, 2009『会計天国』 PHP研究所
西山 茂, 2019 『「専門家」以外の人のための決算書&ファイナンスの教科書』東洋経済新報社

最後までおつきあいいただきありがとうございました。
スキ♡の応援よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?