マガジンのカバー画像

なんだろう

301
自分でも不思議に思う詩のような、エッセイなのか…内容もなんなのでしょうか?と思うような作品です
運営しているクリエイター

2024年1月の記事一覧

岸壁の向こう側

岸壁の向こう側

富岩運河のそば

母の生家は目と鼻の先に港がある

港にはよくロシア船が止まっている

長い休みなると祖父母のもとへ遊びにゆく私

母の実家は酒屋さん
時々配達の車の助手席に乗せてもらう
子どもにはちょっと楽しいドライブだった

小学校低学年のころ
祖父母の家のそば
友だちと遊んでいたところ
ロシア船籍の船の上から船員さんに
船と岸壁をつなぐスロープを登っておいでと誘われる

わたしたちはホイホイ

もっとみる
最後と最初

最後と最初

朝十時、相棒に乗って最期のドライブに出る

前日にキレイに洗車して
車内にあるものを全て出す

母の使っていたクッションも

車内を名残惜しげに見回して
母をいっぱい乗せてくれた相棒に感謝する

右折するウインカーは壊れてカチカチと早くなる

ちょっとみっともないけれど
これもわたしのせい

かなしいけれど
本当はもう少し乗っていたかった

ぶつけたわたしのせい

車屋さんに着くと
すでに新しい車

もっとみる
口と腹とは

口と腹とは

わかっている、わかっている

もう母の肉体はないことを
頭では

でもこころの中では
受け入れられない

生き返ることはない

それでも母を追い求め
探している
ずっと、ずっと

愛情が深いのか
おやさまはそう言われたが

母も愛の深い人

生きるとは自分の考え方を変えること

こだわりを捨ててゆくこと

頭ではわかっていても

こころはわかろうとはしてくれない

口と腹とは違うから

梅の花

梅の花

春を告げる

梅の花

ちいさな花を付けていた

寒い冬を走り抜け

湯河原の温かい地で

ほころんでいる

祈りの場の坂を上がる中腹に

大きな大きな梅の木があり

その花は咲いているかな

みんな、気になる様子で探している
「いち、に、さん」

三輪の小さな梅が開きかけ

「十日後には満開かね」

春を待つ、春を待つ

温かな日差しに包まれて

春を待つ

風が吹く

風が吹く

ビュービューと風が吹く
寒さ厳しきこの時期に

わたしの心にも吹きすさぶ

風が吹く、風が吹く

春になる

春になる

チュンチュンチュンと庭の紅葉から鳥の鳴き声が聞こえてくる

えぇ?なんの鳥

そっとカーテン越しに外を覗く

あぁ、うぐいす色、目の回りの白いメジロが来てる

これからが一番寒い時期なのに

春を告げる鳥のさえずり

チュンチュンとまた鳴いている

いつまでも、いつまでも冬は続かない

そう教えてくれているんだね

わたしには感じられないけれど

本当は春はそこまで来ていると

どの口が言う

どの口が言う

「本を書くなんて、出来ないわ」

そう思われる方は大半でしょう

わたしの回りには自費出版をしている人が何人もいます
皆さん、意欲的で頑張り屋さんです

何十年も詩を書いていて売り物のような書物を出された方もいます

「えぇ~、こんな素敵な本をもらっていいの」と…

「これで三冊目なのよ」

もう趣味の域を越えている

何年か前に文章サークルの講師だった先生もご自分のお母様が亡くなって、ご主人が表

もっとみる
がさつな女②

がさつな女②

夜遅くに雨戸を閉めようと窓を開ける

軽い物干し竿をちょっと触ってみる
グラグラグラ
バッタん

ひえぇ~物干し台が根元から倒れてくる

いやぁ~ん

どうしよう、やっぱり耐えてくれなかったのね

経年劣化

長男にラインをすると
「もう限界だったのね、仕方ないよ」
といってネットで安そうな物干し台を探してくれる
「Nかな?」
「えぇ~Nは高いよ…Kなら同じようなものが半額だよ」
「そうか…」

もっとみる
がさつな女

がさつな女

ガサツな女

はい、わたしです

ガチャガチャと食器を洗い
ガッチャンと食器棚を閉める
「うるさいなぁ」
母にも良く言われてた

またやってしまった

重い重い敷き布団を干したいと

腰が痛くなるまで持ち上げて
物干しに干す

しばらくすると物干し台が歪んでいる

えぇ~ヤバいだろう

経年劣化

慌てて布団を下ろすけど

遅かった

重い重い昔の物干し竿を元に戻すと歪んでしまう

軽い物干し竿は

もっとみる
免許の更新

免許の更新

思い立ったが吉日と

運転免許証の更新に行ってきた

もうすぐ誕生日

午前中は歯科でクリーニング、ちょっとくたびれているけれど…

最寄りの警察署でもやっているが

ある時「交通安全協会」に入ってくれと言わんばかりに、窓口で説明が始まる
押し売りみたい

そんなもん入るかぁ~と気分が悪くなる
偏屈な私である

それならば家からそんなに遠くない運転免許センターに行けばいい

電車で行けば最寄りの警

もっとみる
大きな存在

大きな存在

わたしにとって
母の存在は大きすぎ

だから去ってゆく
あなたは母の代わりにはなれないから

わたしの求めるものがあなたには見えたから
離れてゆく

そんなの分かっている
母の代わりにはなれないことは

そんなの重たすぎ 
そんなの求めてない
最初から

黙って話を聞いてくれるだけでいい
でもそれも無理なこと
母ではないから

母がいないとこんなにも凍てついて、つらく、かなしいものなのか

母がい

もっとみる
父と箱根駅伝

父と箱根駅伝

父は大学時代陸上部にいた
短距離選手だったけれど
父の大学も毎年箱根駅伝に出場している常連校だった

毎年お正月2日、3日になると朝も早くから箱根駅伝を見る

車でドライブをするときも必ずラジオをつけて、箱根駅伝を聞いていた

もう箱根駅伝マニアである

毎年毎年飽きもせず
自分の出身校が出ているからか、それとも駅伝が好きなのか

多分走るという行為が好きなのだろう
マラソンもよく観ていた

父は

もっとみる
ほんとはね

ほんとはね

いつも暗くてごめんなさい
明るいわたしでいたいのに

ほんとはね

こんなにも
うちひしがれるとは思っていなかった

ひとりぼっちはさみしいものと
母と一緒に過ごした月日は戻らない

喧嘩もいっぱいしたけれど
わがままばかりを言ってたけれど

息子が来ても帰る家はここではない
つがいでいる彼らとわたしは違うから
ちゃんとひとりで生きてゆく

相手が欲しいとは思わない
誰でもいいなんて思わない
ただ

もっとみる