ソロキャンプ、悪くないだろう。 【山ごもりの夏休み⑦】
ソロキャンプもなかなか馴染んできた。
何かハプニングが起きても何とかやり過ごせるようになり、独り言で「悪くないだろう」とぺこぱ松陰寺風に言うのも板についてきた。
ビーフシチューにホットドッグ用のパンを突っ込んで食べては
「悪くないだろう」
雨漏りしてきたところに養生テープを貼ってみては
「悪くないだろう」
もう紫のスーツを着てくねくねしたいくらいだ。
そんな訳で、ソロキャンプ初心者が、キャンプのノウハウをそれほど知らないまま山にやってきてしまい、不測の事態やトラブルにどうにかうまく対処できて、ついつい「悪くないだろう」とぺこぱしたくなった出来事を挙げておきます。
1.ハンマーを忘れたけど石がある
テントのペグを打つのに必要なハンマーを、いつもの大きいテントのセットの中に入れていてもってくるのを忘れてしまった。地面が固くてなかなかペグを打ち込めなかった。でも、石がゴロゴロしていたので拾った石で打ち付けるという原始的スタイルで成功。途中から面倒くさくなって、大きめの石にロープを結びつけてテントを飛ばないようにできた。悪くないだろう。
2.雪を保冷剤代わりにできた
これを最初から知っていれば、もっと堂々と卵サラダを食べられたのに。川でスイカを冷やした昔の思い出を川を見ながら思い出していて、雪が目に入り思いついた。こういうのはキャンパーなら知ってて当然なんでしょうが、なんせ素人キャンパーなので2日目に思いついた。雪を掴んできてビールをキンキンに冷やせた。悪くないだろう。しかし、7月の立山の夜は寒すぎてそんなに冷やさなくてもいい説もある…。
3.アウトドアにナイフがあればいい
ハサミを持ってくるのを忘れてしまい、色んなところを開けたり切ったりするのにハサミが欲しい場面が多かった。だけど、私にはフランスのルピュイの道の途中で買ったオピネルのいかしたナイフがある。カッコ良すぎやしませんか。こういう時に使わんといつ使うねんみたいな模様。置いてるだけで浮かれる。しかしおろしたてで指を軽く切ってしまった。気をつけて使えば悪くないだろう。
4.グランドシート代わりに防水のタイベックを
アウトドアの本気の敷物って結構高い。しかしケチるとテント内に浸水してきて悲惨になる。思いついたのが耐水性の高いタイベック。これは安いし軽いし、濡れても拭けばすぐ座れちゃうので、前室に敷いているところも、土砂降りで水たまりができたら拭いていた。悪くないだろう。写真写りはダサいが。
5.山小屋は心の避難場所
「春を背負って」の映画でトヨエツがそう言っていた。ふらっと寄った山小屋に私も救われた。
暖かいココア。
そしてコンセント。モバイルバッテリーを充電させてもらえた。
それからポットのお湯も分けてもらえた。
毎日、私は片道1時間歩いて湧き水をくみに行っていた。キャンプ場には水道もあるが沸かさないと飲めないのと、わざわざ往復2時間歩いて湧き水をくみにいくというミッションが気に入っていたせいもあるけど。
だけど、徒歩20分の場所にある山小屋で温泉に浸かって充電して寝る前の湯たんぽ用のお湯ももらえるなんて。
悪くないだろう、どころか良すぎるだろう!
お湯を入れて帰る時、いつもキャンプ場に大雨の中一人で帰る私を心配してくれたお姉さん、お兄さん、ありがとう。
今度はこの山小屋に泊まりに来る、と決めている。
6.緊急事態にはエマージェンシーシート
とにかく寒い標高2450m。ましてや暴風雨。ナンガの寝袋は0度までいけるはず、と信じたが、初日の夜は、ホットのペットボトルに熱湯を入れて寝袋の中に放り込み、それでも鼻が冷たくなって目が覚めた。真冬の起き方だ。
次の日、ナルゲンボトルにも熱湯を入れ湯たんぽ2つ態勢で臨む。やはりまだ寒い。必ず4時台に寒くて目が覚める。
その次の日、貼るカイロを背中に貼り、レインジャケットを寝袋の上にかぶせた。またナンガの寝袋が首元をキュッと締めれるようになっていることを思い出し、キュッと締めて口だけ出した状態で眠った。6時の寒さで起きたが、なかなかイケた。
4晩目。運命の夜。
雷が鳴って風でテントが揺さぶられている。雨音がうるさすぎてレッチリのBGMが全く聞こえない。フジロックの台風の時並みだ。天井から地味にポタポタ雨漏りもし出した。風向きのせいか枕元側に雨が打ち付けていて内側も湿ってきている。これは緊急事態。
という訳で、初めてエマージェンシー・シートを使う日がやってきた。旅ではいつでも持ち歩いているお守りがわりの、スマホより小さなサイズの銀色のシート。幸運にも持って旅をしてから使ったことがないまま10年以上だ。数日前に見た山の映画で遭難した人がこれにくるまって命拾いしていた。これを寝袋の上から被せることにした。ペラペラの薄いアルミホイルみたいなやつで本当に暖を取れるのか?半信半疑でお布団のように被せてみる。
銀の世界が広がる。頭から被ったが窒息しないか心配だ。
ちょっと動くだけでワシャワシャ言ってうるさいが、外の雨音と雷がやかましいお陰で気にならない。心なしかあったかい気がする。嵐の中、耳栓をして、エマージェンシーを信じて眠ってみることにした19時半。
なんと。翌朝7時までぐっすり眠れた。
おお!悪くないだろう!!
エマージェンシーシートの上は結構濡れていた。雨漏りから私を守ってくれて熱を逃さずにいてくれた。こいつはすごい。そして雨も止んでいる。最高の朝だ。ワシャワシャ言わせながら寝袋を抜け出した。
という訳で、初心者ソロキャンパーが山に抱かれ雨に打たれて過ごす生活で何とか難を逃れた出来事を書いた。
これからソロキャンプをしようとする私のような、ど素人の方の参考になればいいなと願う。そもそもど素人キャンパーは雷注意報が出ている時は、キャンプはやめておきましょう、自戒も込めて。
しかし、結果的にサバイバル能力が恐ろしいほどアップした気がしている。どこに向かってるの?とまた言われてしまうことだろう。いいの。私は私の道を歩いているだけ。
それがたまたま悪天候なことが多いだけ。
ソロキャンプ、かなり、悪くないだろう。
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