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ハイジの屋根裏部屋

40代未満の人には、
なかなか分かってもらえないかもしれないが、
私の子供時代は、
世界名作劇場とかのアニメ番組が、
外国という外の世界を知る始まりだったように思う。
アルプスの少女ハイジ、フランダースの犬、
母を訪ねて三千里、南の島のフローネ、
小公女セーラ、トムソーヤ、赤毛のアン、
若草物語とかそのあたり。
子供時代に繰り返し見たこの辺のアニメのおかげで、外国についたイメージや憧れが強くて、
中でもハイジは特別に強い。

木の丸っこい皿や丸いパン。
あの美味しそうなチーズ。
私はつい旅先で野ヤギにあうと
「ユキちゃーん!」と勝手に命名するし、
ヤギ遣いの少年を見れば、
インド人であろうと、どこの国の少年であろうと
ペーターと心の中で名付けている。

思い出すというか、
幼少期に見たアニメは私の体に血として流れていると言っていいくらい当たり前のようにハイジを感じる。

ハイジがおんじと食べるとろーっとしたチーズを見た時の、子供心に抱いた「美味しそうやなー」という憧れ。
チーズは好きだが、残念ながらあれに勝るくらいの感動を本物のチーズを食べて感じたことはない、今のところ。
ワラのベッドも、子供の時に「気持ち良さそう」と思って見ていたけど、おそらく寝心地は良くないし腰痛持ちは厳禁だろうなと、大人の私には分かってしまう。スレた大人になっちまった…と悲しくなる。

それでも
屋根裏部屋は別だ。
ハイジが眠り、時々鳥が起こしに来る
天窓のあるあの屋根裏部屋。

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昨年、旅先で屋根裏部屋に泊まることがあった。
嬉しくて、「やったー!」と言って、
一目散にベッドにゴロンしてしまうくらい
テンションが上がった。
そこには天窓があって、
そこから空と外の景色を見ながら眠ることができた。
ハイジみたい…。
そこはアルプスの山ではなく、
フランスの南部のナスビナルという小さな町だったけど、
「ラールラールラフッフー」と鼻歌を歌った。
隣のベッドで寝ることになったフランス人のイザベラに、
屋根裏部屋の何がそんなにはしゃぐことなのか聞かれたため、
アルプスの少女ハイジについて、晩ご飯の時に興奮気味に説明した。
YouTubeでフランス語版を見つけたイザベラは、今度ゆっくり見てみる、と笑っていた。大人になってから初めて見るのではうまく伝わらないような気もするけど、ハイジの世界観は分かってもらえると思う。

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夜ご飯には、フローレンスという女性と一緒に、チーズとじゃがいもとガーリックの混ざったフランス中南部のオーブラック地方の郷土料理「アリゴ」を食べた。

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ちょっとだけアルムのおんじが作ってくれるアルプスの山で食べるとろーりチーズの夜ごはんに似ていてワクワクする夕食だった。
木の皿だったら言うことなかったけど、ここはフランス、スキレットだ。
この地方のワインやビールと共に食後にフランスのスイーツを食べることにして、
それはまるで大人の私と子供の頃の私の饗宴だった。
あ、あと大人のクララ、仲良しのイザベラも合流して。

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アルプスの山々はもちろん見えないが、
フランスの可愛い小さな町ナスビナルの
古くて可愛い教会の屋根を天窓から見ながら、
私はハイジになった気分で、
クララより活発でおてんばなイザベラと共に、
実際は相当酔っ払った状態で
眠りについた。


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