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多様性〜人と森のサスティナブルな関係

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2021年出版『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』に関する記事や書評を集めています。
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2021年9月の記事一覧

脱イデオロギーの、尊厳を基盤にした市場経済

脱イデオロギーの、尊厳を基盤にした市場経済

市場のプレイヤーが「競争」というモーターで、利益を最大化することによって、社会が国が豊かになる、という寓話を信じる(信じたい)「資本主義」が、環境破壊や社会格差を起こしていることは明らかで、その構造は、マルクスの研究者である斎藤幸平氏の『人新世の資本論』にも明確に描写されている。

ただ、マルクスは「資本論」にて、市場経済の主要な生産ファクターとしての「資本」について論じているが、資本「主義」とは

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「人新世の資本論」を読んで、ヘッセとマルクスが繋がった

「人新世の資本論」を読んで、ヘッセとマルクスが繋がった

昨年から話題になっている斎藤幸平氏の「人新世の資本論」。序文にて「SDGsは大衆のアヘンである」と、市民の身近な環境行動を非生産的なものとして批判している、ということを、知人のブログで半年くらい前に読んだ。個々人の身近な行動が、意識の広がりを生み、最終的に社会を動かす力にもなっていくポテンシャルもある、という考えを私は持っているので、反発があった。また、多くの読者がこの本を手に取る前に思ったであろ

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宮脇メソッドの「密植」と天然更新の「密生」の背後にある原理と、人の手の必要性の考察

宮脇メソッドの「密植」と天然更新の「密生」の背後にある原理と、人の手の必要性の考察

世界で急速に広がっている、荒地やちょっとした空き地に「ミニ森林」を造成する宮脇メソッドに私が好感を持っているのは、近自然的森林業における天然更新と類似点があるからだ。それは、どちらも「密」で「多様」だということ。前者は、土を施して多様な樹種の「密植」をする。後者は、不均質な間伐で多様な光環境を土壌に与え、多様な樹種の更新を促す。狩猟でシカの食害を抑え、控えめな間伐で光の量を調整して草の繁殖を抑える

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