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【解剖学的解説】ベンチプレスで『大胸筋下部しか効かない問題』を覆す

こんにちは、トレーニングラボのノリです。
今回は、ベンチプレスが『大胸筋下部』にしか効かない問題について解説していきたいと思います。

『ベンチプレスは大胸筋全体を鍛えることができず、下部ばかりが発達する‼』

このような情報を、皆さんは目にしたことはありませんか?ベンチプレスはトレーニングを代表する種目の一つで、スポーツジムに通われているほとんどの方は、ベンチプレスをされた経験があると思います。

ベンチプレスは大胸筋だけでなく、三角筋や上腕三頭筋を強化する優秀なトレーニング種目です。さらには、「体幹部」や「下半身」を正しく使うことで、体全身で押すことのできるコンパウンド種目の一つです。

コンパウンド(複合)種目は、多関節運動とも言われ、複数の筋肉と関節を同時に動かす運動動作のことを言います。(例:スクワット、デッドリフト、懸垂、バーベルロウ)

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ですが、巷では『ベンチプレスは大胸筋下部しか発達しない!』といった情報が流れています。この誤った情報を『解剖学的に解説』することによって、正しい知識を皆さんにご理解いただければ幸いです。

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【この記事の信頼性】
現在までに「柔道整復師」として、整形外科やスポーツ現場で、多くの運動器障害(関節や筋肉の怪我や障害)に携わってきました。現在は「トレーニング指導者」として、バーベルトレーニングを中心とした『怪我をしない』ためのフォーム指導をしています。今までに学んだ知識と経験をYou Tubeチャンネル【トレーニングラボ】で発信しています。

大胸筋の付着部や作用の違い

大胸筋は胸に付着している筋肉で、腕を胸の方に近づけることで収縮する筋肉です。

大胸筋は大きく分けて3つの部位に分かれて、作用がほんの少し変わっていきます。

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このように、「大胸筋」は上部・中部・下部に分かれて作用は変わりますが、上記に従った動作だけが大胸筋の上部〜下部を収縮するわけではなく、あくまでも収縮しやすい傾向にあると捉えてもらえたらと思います。

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例えば、腕を胸に近づける内転させたときに、大胸筋下部以外にも胸の上部も収縮しているのがわかると思います。

大胸筋 作用

このように大胸筋の付着部は密接している環境にあるので、それぞれが独立した動作ではなく、共同して大胸筋は働きます。

ベンチプレスが大胸筋の下部しか発達しないと言われる理由

「ベンチプレスは、大胸筋の下部や上腕三頭筋の強化をするのに有効で、大胸筋全体を強化するのには効率が悪い」

このような情報をたまにお見かけします。この理由についてまずは解説していきます。

ベンチプレスは、ベンチ台に寝て胸のアーチを作ります。その姿勢でバーを胸に落として押し出していきます。

ベンチプレス大胸筋下部

上記のように押し出すことによって大胸筋下部に強い収縮を与えることが可能になります。

これは胸のアーチが作られることによって、バーを押し出すときに肩関節内転の作用が大きくなることが原因です。

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肩関節の内転方向への力が強くなることで、大胸筋下部への刺激が高くなります。

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このバーをまっすぐ押し出すようなフォームでベンチプレスを行うと、大胸筋下部や上腕三頭筋への刺激が高くなります。

もし上記のようなベンチプレスのフォームで、トレーニングをされているのであれば、「大胸筋の中部や上部」への刺激を高めることが出来ません。さらに、大胸筋全部が使えないため、扱う重量も軽くなってしまいます。

さらに『肩甲骨〜肩〜肘』の運動連鎖が乱れて、肘や肩を怪我する原因になります。それは、ボトムポジションでバーをまっすぐ押し出すと、トップポジションで肩とバーのラインがずれてしまい、腕で押すようなフォームになってしまうからです。

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トップポジションで肩とバーのラインがずれてしまうことで、バーの重量を背中や体で支えることが困難になり、腕に頼ってしまいます。腕の力でバーを支えるので、そのままボトムポジションにバーを下ろそうとしたときに、震えてしまったり、うまく力が発揮されない原因になります。

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上記のようなフォームでベンチプレスを繰り返すと、肩甲骨も安定せず、肩や肘へストレスが高くなり、痛める原因になります。

大胸筋下部や上腕三頭筋だけをどうしても強化したい方には、このフォームで問題ありませんが、もしあなたが大胸筋全体を強化したい、さらには、怪我をせずに気持ちよくベンチプレスをされたい方にはオススメできないフォームになります。

大胸筋全体を使い運動連鎖を正しく使ったベンチプレスのフォーム

大胸筋の作用で、肩関節の「屈曲」「内旋」「水平内転」「内転」とお話をしていきましたが、先程の『真っ直ぐ押す大胸筋下部がよく働くフォーム』では、肩関節の水平内転と内転しか使えませんでした。

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さらには、バーと肩のラインが崩れていたので、バーを動かすときには肩甲骨も無理やり固定せざるを得ない状態になります。

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ベンチプレスをするときには、肩甲骨は安定していてバーを上下に動かすときには、ほんの少しだけ肩甲骨も同時に動きます。

スタートポジションでバーがボトムポジションに近づく程、肩甲骨が下方回旋され、フォームが安定します。

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この肩甲骨を安定させることで、その運動連鎖上にある肩や肘の動きがより自然に働きます。

スタートポジションで脇を閉じて、肩甲骨が下方回旋されていると自然と肩関節は外旋の方向に誘導されます。

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その状態でバーを押しだすことで自然と肩関節内旋に力が働きます。大胸筋中部の作用を高めることが可能になります。

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更に、脇を閉じた状態から押し出すことで、『肩関節の屈曲の力』が働きます。大胸筋上部の作用を高めることが可能になります。

これらの大胸筋の作用である、肩関節の内旋と屈曲を正しく使う為にも、ボトムポジションでバーを押し出すときにはスタートポジションに戻るように斜め上に押し出しましょう。

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弧を描くように動作を繰り返すことで、トップポジションで肩とバーのラインがずれることなくできるので、運動連鎖は乱れず肩甲骨も安定したフォームになります。

真っ直ぐ押し出すのではなく、ボトムポジションからスタートポジションへと同じ位置に戻ることで、大胸筋の下部線維だけでなく、中部・上部線維へと刺激を高めることが可能になり、さらにフォームが安定します。

現在までに、ベンチプレスで真っ直ぐ押し出すようなフォームをされている方は、一度試してみてください。

弧を描くようにバーを押し出せない原因と改善方法

ベンチプレスで弧を描くように押し出せないのは、肩甲骨を寄せすぎていることが原因の一つです。

肩甲骨寄せる

胸のアーチを作るときに、肩甲骨を下制、下方回旋をすることで、広背筋が自然と収縮され、肩甲骨が安定します。

その状態でバーを胸に近づけると、肩甲骨がより下方回旋され、広背筋がさらに収縮します。

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ですが、肩甲骨を寄せすぎてしまうと広背筋が収縮されずに、肩甲骨が無理やり固定されます。その姿勢で押し出そうとしても、バーを斜め上に押し出そうとしても肩甲骨が開いてしまい、上手く押し出せません。

肩甲骨の正しい使い方に関しては前回の記事で解説をしているので、またそちらを御覧ください。

まとめ

ベンチプレスは『真っ直ぐ押し出すフォーム』もありますが、
▪重たい重量が扱えない
▪腕で押すようなフォーム
▪肩や肘を痛める
原因になるので、あまりおすすめしません。

ベンチプレスでボトムポジションからバーを押し出すときには、真っ直ぐ押し出すのではなく、弧を描くようにスタートポジションにバーを戻すことで、大胸筋全体を使い、さらには運動連鎖を正しく働かせることができるようになります。

ベンチプレスで腕ばかりがしんどい、真っ直ぐ押している方は一度試してみてください。

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