竹中平蔵がNHKラジオで「スーパーシティ構想」の推進を主張。

 2021年5月7日6時40から6時55分、NHKラジオ第1の番組「三宅民夫のマイあさ!」の「マイ!Biz」に竹中平蔵が電話出演し、「スーパーシティ実現のために」というテーマで「スーパーシティ構想」の推進を主張しました。

 下記に、文字起こしを記載します。
 ファクトチェック、ツッコミ、素材等にご活用頂ければ幸甚です。

■ 竹中平蔵の発言(NHKラジオ第1 / 2021年5月7日6時40から6時55分)

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 最先端のデジタル技術を使ってのまちづくりを目指す、「スーパー・シティ構想」。
 去年5月に、改正国家戦略特区法が成立し、全国の自治体への公募が行われました。
 この、動き出したスーパー・シティ構想について、慶應義塾大学 名誉教授の竹中平蔵さんにお訊きします。
 竹中さんは、スーパー・シティ構想の実現に向けた有識者懇談会の座長を務めています。
 竹中さん、おはようございます。

[ 竹中平蔵 ]
 おはようございます。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 竹中さんが提言されてきた、「スーパー・シティ構想」。
 これ、動き始めていますけれども、改めて、どの様なものなのか、ご説明頂けますか?

[ 竹中平蔵 ]
 えー、今は、コロナの問題で、日本のデジタル化が非常に遅れているということが明らかになった訳ですけれども、いわゆる、第4次産業革命といわれるような、ビッグデータや人工知能、そして IoTつまり、デジタルな技術を集約したような、都市そのものをデジタルに運営するようなところが世界で今、競って生まれ始めています。
 え、そのなかで日本も国家戦略特区の枠組みを更に強化して、そして、スーパー・シティという様な枠組みで近未来都市をいくつか作ろうではないかと、そういう提案が、今、実現する方向に向かっているということです。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 これまでも、その、スマート・シティという言葉がありましたけれども、これとはどう違うんですか?

[ 竹中平蔵 ]
 あのー、ま、デジタルな技術っていうのは重要ですよね。
え、例えば、デジタルな技術と人工知能を使って、自動運転をするとか、えー、ドローンの様な新しいテクノロジーを使って色んな配送をするとか、それぞれのテーマについてですね、実験的に色んなことをやってみようという試み、これが、まぁ、スマート・シティだという風に考えて頂いたらいいと思います。
 例えば、自動運転だけでも数十の場所で、今、もう、このスマートシティがありますし、ドローンだけでも、やっぱり数十のところが同じ様な実験をやっています。
 そして、それぞれの役所が、ま、若干の補助金を出してですね、実験を行うと。
 もう、補助金が続かなくなると、また終わってしまって、「実験やりました」っていうだけで終わってしまう訳ですね。
 スーパー・シティーは、これは実験ではなくて、実装だと。
 試しにやってみるんじゃなくて、実際にやってみると、そして、それを人々が、その中で生活すると。
 この実装というのが1つ大きなポイントになります。
 そして、もう1つのポイントは、例えば自動運転だけ、ドローンだけとかっていう、単発ではなくてですね、えー、複合的に、まち全体がですね、その、近未来都市の様な形になっている。
 そういう、その、おー、実装と複合っていう、ま、そこが、スマート・シティとは大きく違う、まぁ、スーパー・シティの、おー、特徴です。
 敢えていえばですね、「スーパー・スマート・シティ」と考えて頂いたらいいと思います。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 ま、去年5月に、法律が成立したということで、現在、今、あの、どの様な状況ですか?

[ 竹中平蔵 ]
 とにかく、5月の末に去年、法律が通りました。
 そして、それが、去年の秋にですね、え、施行されています。
 え、それから、実は、去年の、もう、12月から、それに基づいて、既に募集を受け付ける訳です。
 こういうことに関心があって、えー、やる気のあるところはですね、手を挙げて下さいと。
 募集が始まりました。
 今年の4月の16日、ま、先月ですね、締め切ったということです。
 まぁ、結果的に、ま、31の地方公共団体から提案がありました。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 これも全国から提案があったということでよろしいですか?

[ 竹中平蔵 ]
 はい、ま、北は北海道から、あ、南は沖縄の石垣までですね、全国から、それぞれの知恵を絞って、色んな提案が為されています。
 中身についてはですね、まだ、これから吟味ということになる訳です。
 大事なことをさっき1つ言い忘れたんですけれども、カナダのトロントでですね、GoogleがトロントをGoogle化すると。
 つまり、Googleが持っているテクノロジーが、もう、全部適用できる様なですね、そういう、まちをつくると、いう風に意気込んで、色んなことを始めたんですが、個人情報の問題が出てきます、ですよね?
 「自分の情報がどんな風に使われるのか?」ということで、まぁ、プライバシーの観点から、非常に、こう、警戒心が強くなりまして、頓挫してるんですね。
 で、日本の、このスーパー・シティはですね、住民の合意を取り付けて下さいと。
 住民の合意があって、はじめて、えー、このスーパー・シティが成り立ちますということで、えー、もう、プライバシーに非常に配慮した様な形で、これから進められると、いうことになる。
 その意味でこの31の、そのプロジェクトについては、まぁ、色んなものがありますけれども、首長さんのですね、え、住民に対する合意を取り付けるという リーダーシップが、ま、極めて重要になるということです。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 これ、今、あの、住民の合意を得るという風に仰いましたけれども、これは、まぁ、住民投票などイメージされているということですか?

[ 竹中平蔵 ]
 そこは、まだ、これから詳細を、こう、決めていかなければいけないし、色んなやり方があるのだと思います。
 あの、住民投票というのが1つの好ましい形であるということは、間違い無いんですけれども、住民投票の制度っていうのは、そんなに簡単に、こう、動かせるものでもありませんから、詳細は、まだ、これから議論していくということになります。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 トロントの例で、頓挫しているという話がありましたけれども、問題になったのが個人情報の取り扱いだと思うんですけれども、それについては、どう取り組んでいこうとされていますか?

[ 竹中平蔵 ]
 えー、まず、それは、まさに、深く自治体が色々協力して、この問題の、このデータについては、名前を伏せて、しかし、その、ビッグデータとして活用して良いとかですね、そういうことの合意を各自治体で取り付けていくということになりますですよね?
 で、もちろん、これは、あの、スーパー・シティだけではなくて、個人情報を守りなから、ビッグデータをどう活用していくかというのは、今度できるデジタル庁の中でも最大のテーマになりますので、国全体の制度作りと、そして、このスーパー・シティとが、ある種、まぁ、一緒になりながら、え、そのことを実現していくということが、ま、実際のプロセスでは重要になると思います。うん。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 スーパー・シティ構想に、今、同意する人の中にも、やはり、その、プライバシーの問題、個人情報の取り扱いを心配するっていう声も恐らく、強いんじゃないかという風に思うんですよね。

[ 竹中平蔵 ]
 だからこそ、実は、これは、首長さんの非常に強いリーダーシップが要るということになります。
 とにかく、こんなメリットがあるんですと、えー、こういう情報が、あ、前もって共有されていることによって、こんなに、例えば、コロナ対策でも役立つんですとか、いかにメリットが大きいかということを辛抱強くですね、首長さんが、ないしは、中心になる方がですね、住民の方に説得していくと、そういいう意味でのリーダーシップが、大変重要になると思います。
 まぁ、そして、もう1つですね、これはやっぱり、全体で1つのデータを使える様な体型になっていなければいけませんので、今度のスーパー・シティは、全体をですね、統括する様な、まぁ、設計者、アーキテクトを置くということが、やはり、義務付けられています。
 これは、まぁ、市長さんとか、知事さんとか、そうした方々と非常に密接に関係を持ちながらですね、え、全体として、やっぱり、といった、あの、同じ、やはり、オペレーション・システムの下でデータを繋げていかないと、バラバ、今みたいにバラバラになっていった、あー、このデータの有効活用ができませんし、この全体をですね、チグハグが生じない様に見ていく、その担当の専門家、アーキテクトを置くと。
 え、それぞれ、大変、こう、工夫をしてですね、それぞれのまちで工夫して、大変、こう、立派な人々をアーキテクトとして示しているという風に認識をしています。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 あぁー。
 あと、もちろん、高齢者など取り残される人が出たり、格差が出てはいけないということですね?

[ 竹中平蔵 ]
 ええ、まぁ、そんなことが出ると、合意がとても取れませんので、デジタル・ギャップといいますか、デジタル格差を解消しながら、そういうことをやっていく。
 まぁ、この点でも実は、首長さんの非常に強いリーダーシップが要る訳ですよね。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 最後になりますけれども、この、スーパー・シティ構想の、これ、経済的な効果も含めて、これ、日本の将来にとって、どんな意味を持つものになるのか、その辺りの、まぁ、竹中さんの考えを、えー、訊かせて頂けますか?

[ 竹中平蔵 ]
 私は、この、スーパー・シティっていうのは、これからの日本のですね、世界に於ける競争の中での「橋頭堡」になるという風に思っています。
 橋頭堡というのは、これ、ちょっと、例はアレですけれども、戦争なんかで、自分達が不利な状況にある時に、その、最前線に基地を作って、で、そこで大逆転を図ると。
 というの橋頭堡という風にいいますけれども、今、この、コロナの下で日本のデジタル化が非常に遅れていると、コロナの後、これからですね、え、世界は、デジタル資本主義の、お、競争の中に入っていくと、いう風に考えられます。
 この、デジタル資本主義の中、日本は決して有利な立ち位置には立っていない訳ですけれども、このスーパー・シティの様なものを作ることによって、デジタル資本主義の競争の中での橋頭堡になってですね、えー、まさに、未来先取り都市を示すことによって、強いインパクトを、それぞれの分野で持っていくということを、私は期待しています。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 竹中さん、どうもありがとうございました。

[ 竹中平蔵 ]
 ありがとうございました。

[ 田中孝宜(キャスター) ]
 今朝のマイ!Bizは、スーパー・シティ構想について、慶應義塾大学 名誉教授の竹中平蔵さんにお聞きしました。

[文字起こし だいたい完了]
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< 参考資料 >

■ 『三宅民夫のマイあさ! 6時台後半 マイ!Biz「成長戦略としての競争政策」』(NHKラジオ第1 / 2021年5月7日6時40分から6時55分)
https://www.nhk.or.jp/radio/player/ondemand.html?p=5642_05_3360056

■ 「スーパーシティ構想」(内閣府 地方創生推進事務局)
https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc/supercity/openlabo/supercitycontents.html

■ 『カナダは「グーグルの実験マウスではない」  トロント再開発めぐり人権団体が反発』(BBC / 2019年4月17日)
https://www.bbc.com/japanese/47957788

■ 『【論文】「スーパーシティ」構想と国家戦略特区』(内田聖子 / 2019年9月19日)
https://www.jichiken.jp/article/0130/

■ 『グーグルがトロントで夢見た「未来都市」の挫折が意味すること』(WIRED / 2020年5月9日)
https://note.com/gifu_water/n/n6cbed968fd3d

■ 「スーパーシティ構想の先進モデル カナダ・トロントの事業からグーグルが撤退」(長周新聞 / 2020年5月19日)
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/17263

■ 『成立した「スーパーシティ法」とは? 討論で見る論点「個人情報」「規制緩和」「監視社会」』(THE PAGE / 2020年5月28日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e62e44d1dd9d3f17b9ead31502a6bbf2ec7afaa


■ 『侵入口はコーヒーマシン! ハッカーが語る「スマートホームとIoTの脆弱さ」』(TrendMicro / 2017年10月4日)
https://go.trendmicro.com/jp/forHome/solution/iot-security-topics/archive/info/20171004/smarthome-and-iot.html

■ 「スマホで操作するコーヒーメーカーがハッキングされる!?」(ASCII / 2020年3月13日)
https://ascii.jp/elem/000/004/005/4005479/

■ 『Wi-Fi接続対応のコーヒーメーカーは「ランサムウェアに感染して身代金を要求される」可能性がある』(Gigazine / 2020年9月29日)
https://gigazine.net/news/20200929-coffee-makers-demanding-ransom/

■ 「IT専門家がコーヒーマシンをハッキング 仮想通貨をマイニングさせる実験に成功」(sputnik / 2020年9月29日)
https://jp.sputniknews.com/science/202009297810308/

■ 「コーヒーメーカーが身代金を要求。スマート家電のハッキング実験」(カラパイア / 2020年10月7日)
http://karapaia.com/archives/52295322.html


■ 「浄水システムに不正侵入、苛性ソーダ濃度100倍に設定 米フロリダ州」(CNN / 2021年2月9日)
https://www.cnn.co.jp/usa/35166249.html

■ 「米フロリダ州の水道システムにハッカー侵入、有害物質を大量に加えようと」(BBC / 2021年2月9日)
https://www.bbc.com/japanese/55991571

■ 「米上水道管理システムにハッカー侵入、NaOH濃度 一時100倍超に」(AFP / 2021年2月9日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3330793

■ 「水道局の水処理システムにハッカーが侵入し、飲料水の汚染試み フロリダ州で」(ITmedia / 2021年2月9日)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2102/09/news137.html


■ 「中国共産党関係者を書類送検へ JAXAなどサイバー攻撃に関与か」(産経新聞 / 2021年4月20日)
https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/210420/cpd2104201137001-n1.htm


■ 「米石油パイプライン大手Colonialにサイバー攻撃 全米への石油移送を一時停止」(ITmedia / 2021年5月9日)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2105/09/news018.html

■ 『米石油パイプライン大手へのサイバー攻撃、犯人はロシアを拠点とする集団「DarkSide」とFBIが発表』(ITmedia / 2021年5月11日)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2105/11/news053.html

■ 『ロシア拠点のハッカー集団「DarkSide」が米石油パイプライン攻撃に関与の可能性--狙いは』(ZDNet Japan / 2021年5月11日)
https://japan.zdnet.com/article/35170508/

■ 『米石油パイプラインにサイバー攻撃、燃料不足の懸念 データ「人質」の犯罪集団』(BBC / 2021年5月10日)
https://www.bbc.com/japanese/57052827

■ 「米石油会社サイバー攻撃、背後にロシア拠点集団 バイデン氏発表」(AFP / 2021年5月11日)
https://www.afpbb.com/articles/-/3346038

■ 『パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ」と謝罪』(Newsweek / 2021年5月12日)
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/05/post-96266.php

■ 「ハッカー集団関与、FBI断定 米送油管サイバー攻撃、民間インフラ標的に」(朝日新聞 / 2021年5月12日)
https://www.asahi.com/articles/DA3S14900186.html

■ 『米南部「石油ショック」 油送管サイバー攻撃』(中日新聞 / 2021年5月13日)
https://www.chunichi.co.jp/article/252586

■ 『米コロニアル、5億円超の「身代金」ハッカーに支払った-関係者』(Bloomberg / 2021年5月14日)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-05-13/QT1UBZDWLU6G01


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