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【レポート】テレビノーク#9 「声を聞きにいく」

月に一度、カロクリサイクルのおしゃべりの時間としてお届けしている「テレビノーク」。
新年度を迎えての#9は4月24日(月)に生配信をお届けしました。
アーカイブはこちらからご覧いただけます👇

2ヶ月遅れですが、レポートをお届けしていきたいと思います。

声を聞きにいく

4月のテーマは「声を聞きにいく」。
ゲストには写真家の小原一真さんと、愛楽園交流会館で学芸員をしている鈴木陽子さん、辻央さんのお三方がご出演くださいました。
小原さんは、名護市にある沖縄愛楽園交流会館との共同による企画展「記憶と忘却、想起と想像 ロマ-ウクライナ戦争の見えざる犠牲者」を、ちょうどテレビノーク配信前日の4/23まで開催されていました。

展示最終日に開かれた対談『記憶と記録の継承』に瀬尾さんがゲスト参加し、今回は沖縄からテレビノークを繋いでいただきました。嬉しいご縁をありがとうございます!
配信の様子はいつもとちがいますが、話が尽きないのは恒例。前半は小原さんの今回の展覧会やこれまでの活動について、後半は鈴木さんと辻さんを囲んで愛楽園交流会館にまつわるエピソードについて、3時間たっぷりおしゃべりしました。

愛楽園交流会館から。鈴木陽子さん(左上)、辻央さん(右上)、小原一真さん(左下)

今起こっていることを扱うとき、どこで、誰とひらく?

写真家・ジャーナリストの小原さん。東日本大震災直後に津波・福島第一原発の取材をはじめられ、その後もチェルノブイリ発電所事故の記録や、災禍の中で見えなくなっていく「個」に焦点を当てた作品制作に精力的に取り組まれています。

愛楽園交流会館での企画展では、ウクライナ戦争によって一層過酷な立場に置かれた少数民族ロマの人びとにフォーカスしていましたが、交流会館との直接的なきっかけは、コロナ禍の最前線で働く看護師・介護士による看取りの記録「空白を埋める」から。

記録をする延長線上で、コロナ禍だけでなくこれまでにも見えない死が続いてきたこと、それを悼み、思いを寄せる行為ができてなかったという気づきが自分の中にとしてあり、ハンセン病の看取りの経験をしていた伊波弘幸さんとの出会いから、愛楽園との関わりへ広がっていったとのこと。
地上戦を経験している土地で、マイノリティーの立場での戦争との関係性で、過去から続いていても終わった出来事では決してない。「時代と状況はちがっても、沖縄にいた当時のハンセン病の患者さんとロマの人たちの構造が似ている部分がある。同じ場に並べてつながって見えてくる部分もあるし、これまでとはちがう角度からより想像的に考えることができるのでは?」と、小原さん。

「今起こっていること」に応答し、場所に赴いて人に出会って理解を深め、同時代性を持ってそれらを開く。とはいえ大きな出来事に対していきなり向かっていくのではなく、個人たちと出会う中ではじまり、個に向き合えるような形の伝え方を模索するスタンスは震災直後から一貫していることが言葉の随所に感じられます。

◆小原さんとのトピック
・人との繋がりや友情関係の先にある表現 /出会っていない人たちも近い存在かもしれない
・高校生のときに起きた9.11と、その後イラク戦争に対する感情
・震災直後の動き /暮らしている場所での、見えている景色のちがい
・同じ気持ちには到底なれないからこそ、自分の立場から少しでも近づける手がかりを見つけ、想像していく
・写真を撮る身体 →そこにいく必要がある
 見方を変えるためのひとつの入り口、言葉を獲得していく上でのひとつのプロセスとしての写真のあり方
・スタイルを定着化しない /都度ちがう伝え方を考え、その問題や人に向き合う

◆今回話題にあげた写真集

Reset. Beyond Fukushima 福島の彼方に

silent history

EXPOSURE



愛楽園交流会館の鈴木さん&辻さん、ご登場!

小原さんが今回関わりを深めた沖縄愛楽園交流会館。
国立療養所沖縄愛楽園は、私立も含めると全国に14ヶ所ある、ハンセン病療養所のうちのひとつ。療養所内に2015年から本格的にオープンした交流会館は、自治会の組織の手で作り上げられた資料館で、これまでの歴史や、患者さんの聞き取りが展示されています。
常設の展示室だけでなく企画展も備えていることから、今回小原さんとのコラボが実現したように、文化や異なるトピックの展示も取り入れられているのも大きな特色です。
配信後半は学芸員の鈴木さんと辻さんもトークに加わっていただき、鈴木さんと辻さんがこの愛楽園にくるまでの経緯や、交流会館という場が持つ機能についておしゃべりしました。

沖縄愛楽園交流会館Twitter


辻さんには高校時代の研修ツアーで岡山の療養所を訪ねたときの出会いがまずベースにあり、後に沖縄ではじまった記録づくりの動きに加わって聞き取り調査や証言集の発刊に携わり、資料館構想にも入って現在の交流会館の学芸員へ……と、長く愛楽園と歩んで関係性をつくり続けています。
鈴木さんは、らい予防法の改正運動を若い頃に知り、多磨全生園へ足を運んでひたすら資料を読み漁って理解を深めたり沖縄通いを繰り返したりと、時間をかけて「うろうろ」するのが基本だったとのこと。その後、えいやと沖縄に移り住んでお手伝いや交流会館オープンに合流なさったとお話しされていました。
お二方ともにそれぞれの経緯がありながら、あるとき出会った人の語りや目にした運動の一片が窓になっていて、その後もずっと大事になさっているのと伺っていて感じました。

「沖縄の証言集いつできますか!」と心待ちにしていたと話す鈴木さん

(↓お二人の話題で出ていた、自治会長・金城雅春さんにまつわる記事もリンクうを貼らせていただきます)


◆鈴木さんと辻さんを交えてのトピック

・交流会館が2015年にオープンしてから約8年目ほど。どんな変化がありますか?
・展示する内容や語り方は、どうやって決めていますか?
・資料館と交流会館とのちがいって?
 →余地があることの大きさ。「ハンセン病に閉じ込めない」
 つながる場、他のトピックを招き入れる場。
 平和や人権だけではなく、悲しみや痛み、記憶、普遍的につながっていける
・これから先に必要だと思ってることは?
・アートやアーティストが交流会館と関わることについて
・交流会館の展示を小学校に巡回してみて
・他の療養所が持つ交流会館同士で巡回展を開催することはありますか?

展示や伝え方の方向性の話題では「個別の体験をたくさん入れていくことを意識した。提供された写真を用いながら、隔離の中で生きてた人たちの姿と言葉を伝えていきたいとみんなで思っていた」と辻さんからのコメントもあり、小原さんと話していた個人として出会う姿勢とも重なるように聞いていました。
配信冒頭に瀬尾さんや大地くんが話していた「触れていいのかな」と内心引っかかった出来事や場所の先でいざ出会う人たちには、さまざまな出来事へまなざしを向けて見出してくれる人がいるし、自分たちの場もそうでありたいなと思う時間でした。
というわけで、ぜひぜひアーカイブをお聴きいただけたらなと思います。

今後のテレビノーク

5月29日放送の#10は既に配信を終えまして、あたらしい拠点や動きをあれこれおしゃべりしています。
#10のアーカイブはこちらから👇

直近の放送は6月28(水)20時から、#11をライブ配信予定です!
今回は仙台からお届け。「記録すること、伝えること」をテーマに、佐藤正実さんをゲストにお迎えします。
#11のライブ配信リンクはこちらから👇

次回もどうぞご覧ください〜!

レポート:佐竹真紀子(美術作家)
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