ののか

いたって平凡なASDの息子がいます。母親も未診断ですがASDだと思います。 濃淡様々な…

ののか

いたって平凡なASDの息子がいます。母親も未診断ですがASDだと思います。 濃淡様々な緑が織りなす新緑、終わりゆく烈陽に消えていく茅蜩、和紙を梳いたような雲と高い空、裸木のシルエットが夕焼け空に描く影絵。幸せの在り棲を探して辿り着いた風景と、その道すがらの風景を書いていきます。

最近の記事

ミスドで出会ったお母さんのこと

まだ息子が2歳くらい、幼稚園に入る前のことだった。 かれこれ10年前のことで、それも、たまに行くミスドでの、ほんとにちょっとした出来事だったのに、あの時感じた胸の温かさとか、本当に美しいものに出会えた感動は、少しも色褪せることなく今も思い出すし、なんならどんどん輝きを増して、私の中で醸されている。 私は、息子が夢中でドーナツを食べるのを見守りながら、口の周りについたチョコやクリームを拭ったりしていた。幼い子供が夢中で食べてる姿って可愛い。 「おいし?」って聞くと、こくんと頷

    • 自閉症の診断を受けるきっかけになった日のこと

      「はい。ですから、前の小学校から来ている書類には高機能自閉症と書いてあります。」 忘れもしない、仕事帰りにドラックストアの駐車場に車を停めて、息子の担任の先生と電話で話していた。 その時、先生は間違いなくそう言った。 小学校3年生の3学期、息子は転校をした。 もうすぐ3学期も終わろうというある日、担任の先生から携帯に電話が掛って来た。仕事帰りだった私は、近くにあったドラックストアの駐車場に車を停めて折り返したのだ。 「この2カ月見てきましたが、今のままでは息子さんが気の毒

      • 「あぁぁぁぁ・・学校行きたくない」

        4月11日。今日から本格的に授業が始まる。 息子は、目覚めの開口一番、聞き慣れたネガティブを吐き出した。 この春、息子は中学生になった。 制服の試着の日、ズボンの生地がチクチクして嫌だと怒り出した。 入学式の朝、ワイシャツの一番上のボタンが留めにくいと怒り、なんでネクタイなんかしなきゃいけないんだ!と憤り、ベルトを締めると靴下履きにくいと泣いた(笑) 入学式に向かう道すがらも、お決まりのネガティブを吐き出す。 「学校なんてなくなればいいのに。中学校には怖い先生がい

        • 諦めないでみようと思った話

          テレビを付けたら各党の党首が並んでて、それぞれが掲げたフリップに「国民ひとり○万円」と文字が並んでた。 出たよ、選挙の票集め、お金ばら撒き作戦。そんなこと、ついこの前までお首にも出さなかったくせに。 菅さんが党首選挙に出馬しないと表明して、自民党がなんだか賑やかだったけど、ちっとも興味が湧かなかった。次期総裁を狙って立候補する人たちの話も興味湧かない。誰がやったって大して変わらないもん。一国のリーダー、そのステイタス欲しさ、権力欲しさの人間の欲望合戦。お好きになさいませよ

        ミスドで出会ったお母さんのこと

          ロフトと元カレ

          一生忘れないな、と確信する瞬間がある。 その日私は、当時付き合っていた彼氏と、人生初のロフトへ行った。自慢じゃないがド田舎生まれ、ド田舎育ち。おまけに、誕生日にケーキ食べれるなんてお金持ちじゃん!ってゆう金銭感覚なお家だったもんで、軽く10年は時代を遡る感じで育ったから、元カレに「ロフトで買いたい物があるんだよね、一緒に行こ」って言われた時も、ピンともパンともこなかった。どんなとこなのか想像もつかないまま、金魚のフンみたいに元カレに付いて行ったあの日の私は、ちょっと気分がブ

          ロフトと元カレ

          will

          朝晩寒くなったけど、みんな元気にしてる? あなた達がそれぞれの生活を初めて、もう3年になるんだね。早いね。 おかんがあなた達くらいの歳の頃は、今みたいに携帯なんてなかったし、たまに母親から掛かってくる電話も少し億劫だったりして、自分から連絡するようなことなかったから、みんなから連絡がなくても、きっと元気にしてるんだと思ってます。 20代半ばまでは自分のことでいっぱいで、親がどんな生活をしてて、何を思ってるかなんて、考えたこともなかった。一緒に暮らしてた時と同じように暮ら

          colour

          昔々、世界は真っ暗闇でした。 混沌とした黒だけの世界には、近くも遠くも、上も下も、私もあなたも、なかったのです。 ある時、神様は「白」を作りました。 なんの混じり気もない「白」は、黒だけの世界に穴を開け、ゆっくり広がって行きました。 そして、その境目は混ざり合って、「灰色」が生まれました。 神様にとって、それは目が覚めるような発見でした。 そこで神様は、「赤」と「青」と「緑」も作りました。 「赤」は太陽になり、「青」は水になり、「緑」は草木になりました。 世界

          ぜんちゃん丼

          ぜんちゃんは、車椅子の背中にオシッコのバックをぶら下げて、運ばれてきた丼を、黙々とスプーンで口に運んだ。 いつも野菜を残すので、たいていは肉や魚のおかずがドカンと載っている。少し白髪が混ざっているが、まだ若いんだからお腹が空いたらかわいそうだと、丼はずっしりと重い。職員が忙しなく行き来する食堂の一角で、提供された丼を5分ほどでかき込むと、食べこぼしのためにかけられたエプロンを取り、車椅子のブレーキを外して、自分で洗面台へ移動する。テプラのシールで自分の名前がデカデカと貼って

          ぜんちゃん丼