colour

昔々、世界は真っ暗闇でした。

混沌とした黒だけの世界には、近くも遠くも、上も下も、私もあなたも、なかったのです。

ある時、神様は「白」を作りました。

なんの混じり気もない「白」は、黒だけの世界に穴を開け、ゆっくり広がって行きました。

そして、その境目は混ざり合って、「灰色」が生まれました。

神様にとって、それは目が覚めるような発見でした。

そこで神様は、「赤」と「青」と「緑」も作りました。

「赤」は太陽になり、「青」は水になり、「緑」は草木になりました。

世界が輝き出しました。

赤と青が混じり合い、青と緑が混じり合い、緑と赤が混じり合って、そこに黒と白も加わって、世界はどんどん賑やかになりました。

淡い緑と濃い緑、その間にある様々な緑を集めると、豊かな森になりました。

その森の中に、真っ赤な花、黄色味を帯びた赤、赤味を帯びた黄色、そこに少しだけ白を混ぜたオレンジ、強い黄色、白に近い黄色、赤と白を混ぜ合わせてピンク、何も混ぜない白、少し黒っぽい青、赤と青を混ぜ合わせた紫と、思いつく限りの花々を散らせた時、神様はもう夢中でした。

昇ってくる太陽に染まる海の色、沈んでいく太陽に合わせて刻々と変わる夕闇の空を色付けた時のときめきは、神様のため息までも、見たこともないような色に染めてしまいました。

神様は思いました。

世界は色に溢れるほど、美しいと。

混ざり合った色は、やがて命を育みました。色だけの世界が動き出したのです。

神様が作り出した、ひとつひとつの色は、混ざり合うたびに、新しい何かに変わっていくのでした。

水や草木から生まれた命は進化し、魚になり、陸に上がり、呼吸をするようになり、やがて、色は、目に見えないところに隠れるようになりました。

優しさの色。

烈しさの色。

冷たさの色。

温もりの色。

目に見えない色をしたヒトとゆう生き物が生まれました。

ヒトは争いを起こしました。

燃え上がる諍いの炎を、神様は胸の張り裂ける思いで見ていました。

でも、その炎のあとには、ヒトとヒトが手を取り合い、支え合い、互いの悲しみを自分のものにして、立ち上がるしなやかな色が広がるのでした。

それは、光にも似た色でした。

神様は愛しています。

みんな違う、どれとして同じ色はない世界。

赤だけの世界でも、青だけの世界でも、緑だけの世界でもない、カラフルな世界。


あなたは何色ですか?

私は何色に見えるだろう?

何色でも良いのです。

ダメな色なんてありません。

世界は、ふたつとない色が混ざり合って出来上がっていて、どれひとつ、なくなっても困ります。

色んな色があるから、世界は素晴らしい。

自分だけの色を輝かせてこそ、この地球は美しい。



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