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朝晩寒くなったけど、みんな元気にしてる?
あなた達がそれぞれの生活を初めて、もう3年になるんだね。早いね。
おかんがあなた達くらいの歳の頃は、今みたいに携帯なんてなかったし、たまに母親から掛かってくる電話も少し億劫だったりして、自分から連絡するようなことなかったから、みんなから連絡がなくても、きっと元気にしてるんだと思ってます。
20代半ばまでは自分のことでいっぱいで、親がどんな生活をしてて、何を思ってるかなんて、考えたこともなかった。一緒に暮らしてた時と同じように暮らしてるんだろうと思い込んでて、たまに来る電話で心配されてることに気付いても、また自分の生活の中に戻ると忘れてしまって。
それでいいのよ。それでいいの。
そんなことを咎めたくて、手紙を書いているのではないのです。
ただ、遺しておきたくて。
いつか、いつだかわからないいつか、順番通りならおかんの方が先に死んでいきます。
離れて暮らしてたいた時間、おかんは何を思い、どんな風に過ごしていたのかと、ふと思うことがあったなら、知って欲しくて。
おかんが、幸せだったことを。
これと言って趣味らしい趣味もなく、いつも生活に追われて仕事している私の姿ばかり、見ていたように思うから。
どちらかと言えばケラケラコロコロと笑うお母さんではないし、黙々と家事をこなし、口を開けば小言ばかりで、あまり幸せそうに見えなかったかもしれないけど。
おかん、あなた達が生まれてきてくれて
あなた達と一緒に暮らせて
本当に本当に、幸せだったから。
誰か1人笑いだすと、重なり合って止まらなくなる、あなた達の笑い声。
その声を聞いてるだけで、心が綻んだ。
ひとりで働いて3人と暮らすのは大変だったけど、その笑い声のためなら頑張れた。大きくなっていくあなた達を見ているのが、そばに居られるのが、おかんの作ったご飯を食べてくれるのが、幸せだった。
なりたい職業もやりたい夢もなかったおかんの、たった1つの願いは、あなた達が人並みに、自分の力で生きていける大人になってくれることだった。
だから、今、あなた達がそれぞれに一人立ちして、この世界のどこかで、泣いたり笑ったりしながら自分の人生を生きてくれてるいることが、おかんにとって何よりの報い。願いが叶った瞬間。
お兄ちゃんが成人式の日、送っていく車の中で言ってくれた言葉は、おかんの宝物。
「20年、育ててくれてありがとう」
お兄ちゃんがパパになった時、そっぽ向いて小さな声で呟いた言葉、聞こえてたよ。
「孫、抱かせてやれたな」
久しぶりにうちでひと晩過ごした翌朝、おかんの卵焼き食べてから仕事行く途中、なんか泣きそうになったと言った娘。
あなた達と暮らした団地を出て、今の家に引っ越して来て、あなた達と過ごした思い出のないこの家に「ただいま」と帰ってきてくれた、お姉ちゃん。
みんな、優しい人に育ってくれた。
真面目に働く大人になってくれた。
こんな、幸せなこと、ほかにある?
まだあなた達が小さかった頃、私を見ていた人が言った言葉は、嬉しかったな。
「お子さん達と居る時が一番きれいですね。笑顔が全然違いますよ。」
あなた達はおかんの生きる意味だったし、生きる力だった。おかんを人として成長させてくれた、かけがえのない宝物なの。
おかんが再婚したのは、あなた達に自分の人生を生きて欲しかったから。優しいあなた達が、おかんを心配して離れて行かなかったら、こんなに申し訳ないことはない。
あなた達の人生は、あなた達のもの。
大きくなったんだから、もうおかんのことなんて忘れていい。
おかんは、神様から宿題をもらったあなた達の弟を、あなた達のようにひとり立ちするまで、もうひと頑張りしています。
とてもとてもやり甲斐のある、素晴らしい経験をさせてもらってるよ。
おかんの人生の最後、たぶんあなた達のお世話になることになると思うから、先に謝っておくね。色々と面倒をかけてしまうことになると思うから、ごめんね。
なるべくボケないで、最後の最後まで自分のことは自分でできたらいいなと思ってる。
でもボケちゃったらごめん。みんなのこと、忘れちゃったらホントごめん。優しくしてくれてるのに怒っちゃったり、困らせちゃったらごめんね。
その時に、お母さんあんなになっちゃって、お母さんの人生ってホントに幸せだったのかな?って思うことがあるかもしれないから、だから遺しておきたかった。
おかん、幸せなんだよ。
それだけは、どんなことがあっても、この先どんな人生を送ることになったとしても、変わらないの。
疑わないで欲しい。
そして、最後にお願いです。
おかんより先に死なないで。
1秒でもいいから、おかんより後に来て。
いつも、いつまでも、あなた達の幸せを願っています。
大切で、大好きな、子供達へ。
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