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子ども食堂に関わる支援者に求められることはなにか

 七星純子「なぜ、子ども食堂は社会的インパクトを与えたのかー「子ども」イメージの崩壊と「食」を通じた居場所づくりの可能性ー」を読んだ。

 ここのところ、子ども食堂の支援に関する仕事に触れることが続いた。それで気になったので、子ども食堂の近年の歴史を概観しようと思って探したらこの論文が出てきた。


子ども食堂の歴史〜発見、拡張、普及

 一般に「子ども食堂」と呼ばれる営みが初めて行われたのは2012年に「気まぐれやおやだんだん」の例であると言われている。ここが「子ども食堂」というワーディングを使ったらしい。これがオリジンとなり、各地に子ども食堂フォロワーが増えていく。

 2013年に「子供の貧困対策の推進に関する法律」が成立し、6人に1人の子供が相対的貧困状態にあるという事実が社会の注目を集めるようになる。

 この間、着々と増えてきた首都圏のこども食堂が、2015年に「こども食堂ネットワーク」を結成する。これが子ども食堂のトレンドを後押しする運動となった。

 この運動は、2016年に「広がれ、こども食堂の輪!全国ツアー」と称して全国に広まっていく。子ども食堂実践者のみならず、中間支援組織や福祉団体、民間事業者も参加し、やがて「広がれ、こども食堂の輪!推進委員会」が設置されたらしい。この組織運動の影響もあり、以後一気に全国に子ども食堂の波が広がっていった。

 ちなみに、この2016年に「広がれ、こども食堂の輪!全国ツアー」の影響を受けて生まれた子ども食堂フォロワーを「第二世代」というそうだ。それ以前のものを「第一世代」と本論では呼んでいる。

 このように子ども食堂の波が広がっていく中で、子ども食堂と名乗る営みの内実も多様化していく。当初語られていたような貧困対策という性質だけでなく、安心安全、孤立防止、多世代交流などのニュアンスが付与されていくようになる。NPO法人豊島子供WAKUWAKUネットワークなどが子ども食堂を、「居場所」と説明し出しはじめたことは象徴的であった。

 そして2017年にはガイドブック「広がれ、こども食堂の輪!活動ガイドブック」が発行され、概念やハウトゥーが明文化される。

 余談だけど、私の恩師はあんまり論文をたくさん書くタイプではないのだけど、その理由を「まちづくりに関する考え方は文章化すると変質してしまうから」といっていた。口頭で語り聞かせるならまだしも、文章にすると違う受け取られ方をして広まることを防げない。その意味で、ここでガイドブックとして明文化されたことは、子ども食堂の広まり方を変えていく契機となっただろう。つまりは「第三世代」の出現だ。

子ども食堂の多義性〜「高齢者ばっかりきて子ども食堂になってないじゃないか」「本当に貧困な子供に届いていないじゃないか」問題はなぜ起こる?

 ちなみに「広がれ、こども食堂の輪!活動ガイドブック」で書かれていたのは次のようなことだ。

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