Sawa Kido

駆け出しのおひたし。お手柔らかに。よろしくお願いします。

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マガジン

  • エッセイ集

    Sawaこと、焼茄子 不味子(やきなすび まずこ)がお送りする、頭空っぽの日常エッセイ。

  • 絵本の世界

    童心にかえると、大人の醜さと儚さが身に染みる。

最近の記事

【短編】薔薇が好きな老人

序章薔薇は春と秋が見頃だが、秋に咲く薔薇は香りが薄い。 だから、春に咲く薔薇が、私は好きである。 しかし品種にも、育て方にも、特に詳しいわけではなかった。 高校生、それははるか彼方で、未熟だった時期である。 その高校生のとき、友人に誘われ園芸部に入部したきり、 私は植物に特に関心を抱かなくなった。 むしろろ青々とした樹木をうっとうしく感じる20代、30代を過ごした。 妻と出会い、子を育て、孫が産まれ、そして60代で皺だらけとなった妻が 笑いながら「お先に」と逝

    • 【短編】日記の最後

      1序章「残念ながら…」というメールを読み、私はうなだれた。 最初は不採用通知を数えていたが、数える余力すら無くなった。 じっと見つめるその日本語で構成された文字、単語、文章が、私を刺した。 何が悪いのか分からなかった。 正解を探すのは疲れた。 それでも探した。 夕焼けの光が憎かった。 コンビニの袋が擦れる音、吹き抜ける風の冷たさ、 住宅地から漂うほのかなカレーの匂い。 五感をくすぐる私以外の何かが、私に問いかける。 私は何が悪かったのか。 帰路につきなが

      • 【創作】カップラーメンの作り方

        もしSawaがカップラーメンを作る文章を考えたら… 【題名】カップラーメンの罪悪感  カップラーメンがしゃべったら、こういうだろう。 「きみ、腹が減ってるのか知らないが、俺を選んだからにはそれ相当の食いっぷりであろうな?」  ふざけんな。時計を見て、腹をさすり、家の壁の向こうを想像して、財布をひっつかみサンダルを履いて飛び出した。  一番安くてハズレのないカップラーメンをとった。やかんは黙って水を熱しているんだ。食いっぷりなんか、知らない。おまえには関係ない。  「そ

        • 【エッセイ】奇跡of奇跡の悲しみ

          はじめにみなさん、こんにちはSawaです。 お元気でしょうか? 例年より遅い桜の開花と連続の雨…今年度も始まりました… 季節の境目の体調管理に気をつけて、頑張りましょう。 今回はエッセイ、ということでSawaの中学生時代のエピソードを一つ紹介します。 なまえ みなさんは、名前に興味を持つことあります?わたし?…ある! 特に学生時代、春のクラス発表の初日は緊張とワクワクでいっぱいでした。最初に目に飛び込んでくるのは、人の見た目ではなく、「名前」です。どんな子なんだろう?

        【短編】薔薇が好きな老人

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        • エッセイ集
          3本
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        記事

          【絵本のススメ】バーバ・ヤガー

          はじめに弟が幼いとき怯えていたもの、それが「バーバ・ヤガー」。 日本の鬼より、アメリカのピエロよりも恐れていたもの。 名前とストーリの濃さは、天下一品。 第二回の絵本のススメは、版画の世界へ。 『バーバ・ヤガー』とは? ぶん(文)アーネスト・スモール え(絵)フレア・レント やく(訳)こだま ともこ 童話館出版 まずは、表紙に注目を。 家になんか、生えとる…しかも…おおきくね? 客観的な視点を養った大人でよかった、とSawaは吐露している。 これが、幼稚園児

          【絵本のススメ】バーバ・ヤガー

          【エッセイ】社会人一日目の悲劇

          はじめての仕事 こんにちは。  第一印象マイナスポイントを全身から生成する女、Sawaです。  新社会人(主に新卒)にとって初々しい季節、そしてその眩しさ・若さに、ラピュタ家の悪者の最期のように、「目がーーーーー!!!」とか叫びながら、隠れてコソコソしてる先輩方が、そこかしこに現れる、そんな季節。  春。  何もかもが、新規一点のシーズンになります。しかし、ここで、花粉症とは別症状により、頭がズンと沈み、涙で目がかすみ、サンタクロースかドラゴンボールに「4月(できれば

          【エッセイ】社会人一日目の悲劇

          【絵本のススメ】ねえ、どれが いい?

          1. 今日の一冊  子供の頃の「絵本の読み聞かせ」は、大人になってもおぼろげに残っているものである。  現代では、さまざまな玩具やゲーム機、ユーチューブなどのコンテンツが豊富に揃っている。夜、寝る前にすることの選択肢が増えているいまこそ、「絵本」の世界をのぞいてみることを薦める。  大人がうーんと、えーっと、と作り出した物語は、リアルな日常より、ポップで皮肉の効いたものが多い。  「絵本」は特にその傾向がある。  その可愛らしい絵本の世界に、現実的な側面を忍ばせてい

          【絵本のススメ】ねえ、どれが いい?

          はじめまして【自己紹介】

          はじめまして Sawaです。よろしくお願いします。 今回は自己紹介です。 名前 Sawa Kido  名前考えるの、難しいですね。かといって、誰かに名付けられるのも恥ずかしい。  たとえば、知り合いから 「あなた、今日から 焼茄子 不味子(ヤキナスビ マズコ)よ 頑張って」とか命名されたら、焼きなすをまずく作らなきゃという使命を、無理に背負いそう。   そんな私は、他人の影響を結構受けやすいバカなので、自分で考えた次第です。 趣味、好きなこと  読書 以上。  

          はじめまして【自己紹介】

          【短編】『燃えないワカサギ釣り』

           お店を訪ねると、座ったまま眠りこける兄ちゃんがいた。  自分は綺麗な寝顔の前で一つ咳払いをした。  彼はお尻から目覚めたような開眼から、焦点の合わない黒目を自分に向けた。  「捨てたいゴミはなんですか?」と彼は言った。  自分は、「一枚の紙」を彼の前に置いた。  「これは、燃えないゴミです。」  「本当ですか。」  「ええ」と彼は、ポケットからライターを取り出した。  銀色のライターはいかにも特注品。  自分のわかる片側の面に「万物ゴミ分別株式会社 デスポ

          【短編】『燃えないワカサギ釣り』