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ミニ物語「銅像」

銅像

とある町の、とある広場に、その銅像は立っていた。
ある日の朝、その銅像の頭に一匹の小鳥が降りた。
「ちゅんちゅん。あなたはなぜこんなところでじーっと立っているのですか?」
その銅像は答えた。
「やい。わしはこの地を開拓しこの町を作ったお偉いさんなんだぞ。そなたのような乱暴者がわしの頭の上に乗るな!」
小鳥は、その銅像から飛び去っていった。

またある雨の日。一匹のカエルが銅像の手の上にのった。
「げこげこ。あんたはなんでこの雨の中、こんな所でじーっと立っているんだ?」
その銅像は答えた。
「やい。わしはこの町を見守るためにここに立っておるのだ。そなたのような無礼者が私の手の上に乗るな!」
カエルは、その銅像から跳び去っていった。

雨が上がった次の日。1匹のミミズが銅像の足の上にのった。
「へいへい。神さまは背後が神々しく光っていると耳にしていたのですが、なんと、実際は本体が光っておられる。あれあれ、ところでなんでこんなところに神さまがいらっしゃるのだ。そうだ、無礼にも一つお願い事があるのだが、聞いていただけるか。どうか、私にお水をかけてくれやしませんか。今にも干からびそうな次第で」
その銅像は答えた。
「やい。そうだ。わしはこの町の神である。そなたのような生意気者が私の足に乗るな!」
ミミズは、最後の力を振り絞って銅像の足を叩いた。





ある日の夜。1つのUFOが銅像の目の前に降り立った。扉が開き、一匹の宇宙人が姿を現した。
「ワレワレハ、ウチュウジンデアル。コノマチヲ、シンリャクシニキタ。オマエガ、コノマチノ、ヌシカ?」

「そうだ。」
その銅像は続けて答えた。
「毎朝、そう、毎朝だ。わしの頭に乗っては、わしの頭をはげ散らかしに来よる乱暴者がおる。そいつのおかげでわしの頭はつるぴかじゃ。もともとわしの頭はつるぴかなんじゃが。なんと乱暴なことか。

雨が降れば、そいつの代わりに、無礼者がやってくる。そいつは、かなり歌が下手でのう。わしの手の上で大声で歌い出すんじゃ。うるさいと言っても歌うのをやめんのじゃ。つられてわしも一緒に歌ってやるのだが。なんと無礼なことか。

雨が上がると、次は、生意気者が足にやってくる。さあ水をくれ水をくれと。さらにはわしの足をぶってくる。しかし、そいつは私のことを「光っている」と言ってくれる。こんな、錆びてぼろぼろになった体をだ。だから、わしの手に溜めていた水を少し落としてやる。なんと生意気なことか。

そしてそいつらは、必ずこう言いおる。「なぜわしはここにいるのか」とな。
そのおかげで、わしは思い出す。


いいか。わしはこの地を開拓しこの町を作ったお偉いさんである!わしはこの町を見守るためにここに立っておるのだ!!そうだ、わしはこの町の神なんだ!!!

お前のような無法者が、この町に来るな!!!!
出ていけっっ!!!!!」


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