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牧瀬先生に聞く!地方創生・まちづくり・政策づくりのヒント【第3回】

教えてくれた人:関東学院大学大法学部教授 牧瀬稔先生
聴いた人:自治体総合ニュース 担当:柴田

関東学院大学法学部教授 牧瀬稔先生に、地方創生やまちづくり、政策づくりに関するヒントを教えていただく第3回目!
今回はまちづくりの進め方について、注意点として「特にコレ!」というワンポイントを挙げるなら!という無理難題にご回答いただきました!

まちづくりで注意すべきこと!一つ上げるなら!

~できていますか?目標の具体化と共有化~

 前回までは「まちづくりは地方自治体だけではなく、多様な主体と連携・協力して実践する重要性」を指摘しました。
今回は多様な主体と連携・協力して、まちづくりを進める際に注意すべきことを言及します。

 実は、注意すべき視点はたくさんあります。その中で、特に気を付けることを指摘します。それを端的に言うと「目標の具体化と共有化」です。まちづくりを進める関係者間で最低限「目標の具体化と共有化」をしておく必要があります。

 ところが、関係者間では目標が抽象的であり、かつ共有化もされていないために、まちづくりが失敗する事例を私は多く見てきました。
 例え話をします。地方自治体が「山を登ろう」と関係者に号令をかけます。そして自治体は富士山に挑み始めます。ところが地元事業者は筑波山を目指し、地元住民は高尾山を登る…という状態が往々にしてあります。「山」が抽象的であり、「富士山」が共有化されていないのです。

「山を登ろう」だと、設定した目標が抽象的であるため、関係者がそれぞれ異なる山を登っていきます。いつまで経っても関係者同士出会うことはありません。山頂にたどり着いても仲間は現れません。その結果、まちづくりへの熱い思いが瓦解していきます。繰り返しますが、このケースは「山を登る」という目標の共有化はできていましたが、登る山の目標設定が曖昧であったために、起こる悲劇です。まちづくりが失敗する要因です。

 「山」と言うのではなく、地方自治体が「山とは『富士山』です」と、山の定義を明確にした上で、「富士山を登りましょう!」と伝えれば、地元事業者も地元住民も富士山を目指すでしょう。あるいは、最初から「富士山を登りましょう」と言えばよいのです。
 具体的に富士山が決まり、目指す山(目標)共有化できれば、まちづくりは成功に向かいます。目標さえ共有化できていれば、山頂までのルート(手段)はどうでもよいと考えます。
 地方自治体は山梨県側から登り、地元事業者は静岡県側から挑むかもしれません。地元住民はヘリコプターで一気に行くかもしれません。それぞれが別のルートを進んでいるため、見える景色が異なります。その結果、ケンカ(議論)することもあるでしょう。しかし目標が「富士山」であるため、いつかは出会えるはずです(成果がでてきます)。

まちづくりはチームビルディング!?

 ちなみに、目標設定は地方自治体が一方的に決めるのではなく、まちづくりの関係者と共議して、決定することが望ましいでしょう(「共議」とは「共に同じ方向性を目指して、議論を重ねていく」というニュアンスで使っています)。
 今回、話した内容は、実はチームビルディング(Team building)の要諦です。チームビルディングとは「チームの目標達成に向けて、一体感を創出したり、コミュニケーションを円滑にしたり、メンバーの役割分担を明確化したりする活動」と定義できます。まちづくりは関係者間をチーム化していくことが大事です。
 最後に「グループ」と「チーム」の違いを言及します。辞書で調べると、グループとは「1.仲間。集団。2.共通の性質で分類した人や物の一団」とあります。一方でチームとは「ある目的のために協力して行動するグループ」と定義されています。
すなわちグループは「単なる集団」であり、チームは「目的(目標)を共有化した集団」です。チームを意識することがまちづくりを成功につなげていくのでしょう。

―――ありがとうございました。
まちづくりは単に政策や条例といった戦略だけでなく、いかにチームとして実行していくかといったチームビルディングがとても大切なのですね!
次回「まちづくりと条例」として、政策づくりのヒントについてお聞きいたします。