📘️ Book Club：法整備による義務化が進んでいるアクセシビリティ。PART1-Webアクセシビリティが重要である理由とそれを達成する方法。

2022年2月26日 13:57

多くの場合、人々はアクセシビリティについて考えるとき、車椅子のスロープや障害者用トイレを思い浮かべますが、今日のデジタル・ライフスタイルでは、オンラインのアクセシビリティは見逃せない重要な側面です。

アクセシビリティはすべての人に利益をもたらすことをご存知でしょうか？ 障害のある人だけでなく、若い人や年配の人、そして多様な言語的および文化的背景を持つ人もいます。

アクセシブルなウェブサイトは、人々が社会的および文化的包摂の価値を支持することを意図的に思い出させるものです。ウェブサイト、デジタルツール、テクノロジー、製品は、あらゆるバックグラウンドの人々がそれらを使用できるように開発およびデザインする必要があります。

この記事はWebサイトの戦略の作成、管理、設定に携わる人みなさまに読んでいただきたいです。

Webサイトの力はその普遍性にあります。
障害に関係なく、すべての人がアクセスできることが重要な側面です。

ティム・バーナーズリー　W3Cディレクターおよびワールド・ワイド・ウェブの発明者

アクセシビリティ対応の義務化に関する法改正

2019年、ビヨンセの公式サイトがアクセシビリティへの対応が、不十分として全盲のファンによって訴えられたことはご存知の方も多いかと思いますが、日本でも民間事業者等のWebサイトのアクセシビリティ対応の義務化に関する法改正が、去年2021年5月に可決成立、6月に公布されました。これにより行政機関等に加えて事業者、つまり一般企業に対しても、改正法の施行後には合理的配慮の提供が義務付けられました。

合理的配慮とは？

合理的配慮とは、障害者が社会の中で出会う、困りごとや障壁を取り除くための調整や変更のことを指します。

例えば、あるWebサイトにおいて、障害者が他の人と同じように利用できなかったとします。その障害者から改善の申し出があった場合、過重な負担とならない範囲で、必要かつ合理的な調整・対応を提供することが、サイトを運営する組織が一般企業であっても、法的に義務化されることになります。

障害の社会モデル

障害は社会的構成要素です。障害のある人の要求が考慮されていない場合、私たちは社会的障壁を作ります。

障害は障害によって引き起こされるのではなく、むしろ障壁のために社会に平等に参加するためのアクセスと機会からの排除によって引き起こされます。

障害は、身体的傷害、加齢に伴う問題、健康状態、状況的障壁などに起因するさまざまな形で発生します。

障害を持つ人々は慈善の対象ではありません。彼らは権利を持った人々であり、自由でインフォームド・コンセントに基づいて生活の仕方を決定し、社会の積極的な貢献メンバーとなることができます。

💡インフォームド・コンセントとは医師が病気や容態、つまり患者さんの体の中でどのようなことが起こっているかということや、検査、治療の内容、処方される薬について十分な説明をし、患者さんは内容をよく理解し、納得した上で同意して治療を受けるということです。

問題は個人ではありません。この問題は、すべての人がアクセシビリティに向けた解決策を見つけることに関係しています。

障害は、障害につながる病状です。障害は、相互作用、物理的コミュニケーション、社会的環境の結果です。

障害を持つ方々はどのようにWebにアクセスしているの？

障害を持つ人々は、ウェブにアクセスするための多くの障壁に直面しています。

厚生労働省は９日、体や心などに障害がある人の数が約９３６万６千人との推計を公表しました。日本の場合では高齢者が増加傾向にあり、６５歳以上の割合は身体障害者の７４％、知的障害者が１６％、精神障害者が３８％と言われています。

各個人には、Webとの相互作用に影響を与える独自の方法、ツール、および好みがあります。ほとんどの人は当然のことながらウェブへのアクセスを利用していますが、現在障害を持つ人を排除している障壁を理解することで、包括的なオンライン環境を構築する機会が生まれます。

アクセシブルなWebサイトを持つことの利点

多くのユーザーはユーザーフレンドリーなサイトを好みます。簡単で便利なサイトは私たちの生活のあらゆる側面で使用されています。

機会均等のために不可欠な要素

障害を持つ人々へのアクセスを提供することにより、私たちは社会的交流と地域活動への積極的な参加の機会を大幅に増やします。

組織にとって有益

世界の人口の15％（なんと10億人！）が何らかの障害を抱えて生活しており、世界最大のマイノリティグループとなっています。ウェブサイトにアクセスできるようにすることで、未開拓の市場に参入し、その過程でより多くのビジネスチャンスを開くことができます。

費用対効果が高い

Web開発の初期段階で誰もがアクセスできるデザインを組み込むことで、大幅なコストを節約できます。後でウェブサイトの改善に労力とエネルギーを費やすよりも、最初からシンプルでナビゲートしやすいウェブサイトを構築する方が良いでしょう。

基本的に、アクセシビリティは良いビジネスです。アクセシブルなWebサイトは、より良い検索結果をもたらし、オーディエンスのリーチを拡大し、企業の社会的責任を証明することができます。

障害について学ぼう

感覚障害

視覚障害のある人や目の不自由なユーザーのための障壁

目の不自由な人や視覚障害のある人は、視覚的に情報にアクセスすることに依存することはできず、特定のニーズに使用できる形式で表示されるWebコンテンツに依存する必要があります。

→明確な見出しと構造がないWebコンテンツは、簡単に読み取ることができません。

目の不自由な人や視覚障害のある人のためのアクセシブルなツール

テキストコンテンツを話すスクリーンリーダー
サイズ変更可能なテキストと画像
マルチメディアでビデオの音声ガイドを聞く
コンテンツのテキスト読み上げを聞く
点字ディスプレイを使用してテキストを読む
はっきりと判読できるフォント、色、間隔
JAWS（Job Access With Speech）スクリーンリーダーは、コンピューターで最も人気のあるコンピューターアプリケーションに音声と点字の出力を提供します。

聴覚障害者および難聴者のための障壁

聴覚障害のある人は、音声で情報にアクセスすることはできません。トランスクリプトと手話が提供されない限り、音声とビデオの形式で情報を提供するWebサイトは、音声障害のある人々と聴覚障害者のコミュニティにほとんどまたはまったく価値を提供しません。

聴覚障害者や難聴者のためのアクセシブルなツール

音声トランスクリプト
オープンキャプションとクローズドキャプション
聴覚障害者のための手話の解釈

学習障害

学習障害を持つ人々のための障壁

複雑なWebデザイン、ユーザーインターフェイス、および適応できないコンテンツは、Webサイトのエクスペリエンスに対するユーザーの制御を低下させます。

個人の特定の要件に応じて、学習障害のある人はさまざまな戦略を使用してWebを閲覧します。たとえば、テキスト読み上げソフトウェアを使用して、情報を視覚的に読むと同時に情報を聞く人もいます。テキストと間隔のサイズを変更するツールを使用する人もいれば、フォントと色（たとえば、白黒や高コントラスト）をカスタマイズして読みやすくする人もいれば、文法とスペルのツールを使用する人もいます。

学習障害を持つ人々は多くの障壁に直面しています。

注意欠陥多動性障害（ADHD）には、特定の時間枠で単一のタスクに焦点を合わせることが困難なことが含まれます。
自閉症スペクトラム障害（ASD）は、社会的コミュニケーションおよび相互作用能力の障害を引き起こし、時には習慣や興味を制限します。
てんかんは、まばたきやまばたきによる発作を引き起こす可能性があります。
失読症は、読み、書き、つづりに問題を引き起こします。

学習障害を持つ人々のためのアクセシブルなツール

テキストを読み上げるときに画面上のテキストを強調表示するテキスト読み上げソフトウェア
タイプミスやスペルミスのある単語を提案する単語予測

身体障害

身体障害者のための障壁

複雑なデザインと複雑なナビゲーションメカニズムを備えたWebサイトは、身体に障害のある人にとっては使いにくい場合があります。

大きなクリック領域と、情報のクリック、入力、入力に無制限の時間を提供することは、デザインの重要な側面と見なす必要があります。

身体に障害のある人の中には、Webページで提供される特定の機能をアクティブ化するためのサポートを専用のハードウェアとソフトウェアに依存している人もいます。キーボードをクリックして入力し、ショートカットキーを使用してコマンドをアクティブ化するには、余分な時間が必要です。

身体障害を持つ人々のためのアクセシブルなツール

画面上のサイズ変更可能なテキストおよび画面拡大ソフトウェア
手首への負担を軽減するためにキーボードを分割する
腕の動きを最小限に抑えるキーボードコントロール
手の震えを持つ人々のための非スクロール機能を備えたマウス

障害を持って生活する可能性は年齢とともに増加します。 65歳以上の障害者の5人に2人だと言われています。

WCAGはどのように機能するのでしょうか？

3 World Wide Webコンソーシアム（W3C）は、Web標準の統治機関です。これは、Webサイトのアクセシビリティに関する国際基準を設定します。 Webコンテンツアクセシビリティガイドライン（WCAG）には、特定のWebサイトまたはページのアクセシビリティの範囲を分類する3つのレベルがあります。

ガイドラインは複雑さの範囲であり、AからAAAまでの名前が付けられています。ほとんどのWebサイトは、レベルAの基準を満たすことが期待されています。政府が所有および資金提供しているWebサイトは、コミュニティのすべてのメンバーがアクセスできるように、WCAGレベルAA基準に到達する必要があります。アクセシビリティ規制に準拠しないと、組織が法的な問題に直面する可能性があるため、必要な基準と要件を知ることが重要です。

WCAGレーティングは、アクセス可能なWebサイトの5つの特性に関連して、Webサイトの全体的な成功を定義するように設計されています。

Webサイトは、A、AA、またはAAAのいずれかの評価レベルを満たす必要があります。
Webサイトの適合性には、単一のWebページだけでなく、Webサイトのすべての部分が含まれている必要があります。
Webサイトにアクセスするには、関連ページの評価が同等以上である必要があります。
WCAGによって信頼できると見なされるサポートされているテクノロジーが使用されている場合にのみ、Webサイトにアクセスできると見なされます。
5.完全にアクセスできないテクノロジーを使用する場合、コンテンツは他の手段（たとえば、字幕と音声ガイド付きのビデオ）によってアクセス可能な使用に開放されている必要があります。

4つの主要な原則POUR

アクセシビリティを始める秘訣は、ウェブコンテンツのアクセシビリティに関する業界標準を導く4つの主要な原則であるPOURを理解することです。

Perceivable 知覚可能
Operable 操作可能
Understandable 理解できる
Robust ロバストとは、堅牢な、頑強な、などの意味を持つ英単語。

Perceivable 知覚可能

基本的なレベルでは、Webベースのコンテンツは簡単に理解できる方法で提示する必要があります。これは、聞くことができない人々のためのテキスト、見ることができない人々のための音声、および支援技術を使用する人々によって消費されるコンテンツを提供することを意味します。

Operable 操作可能

Webサイトまたはデジタルアプリケーションにアクセスできるようにするには、ツールの人に関係なく操作可能である必要があります。それを表示するために使用します。アニメーションとリッチメディアは構成可能である必要があり、特定のオンラインタスクの時間制限は寛大である必要があります。私たち全員が間違いを犯すので、ウェブサイトとアプリケーションは寛容で、忍耐強く、私たちのデジタル機能の延長として機能する必要があります。

Understandable 理解できる

ウェブサイトは、認知的、身体的、文化的、言語的な違いがある人々を含め、簡単に理解できるようにデザインする必要があります。すべてのユーザーに明確なガイダンスを提供します。これを使用して、特定のオンラインプロセス（イベント登録、オンライン購入など）をナビゲートできます。

Robust ロバスト

制限の範囲内で、Webサイトがさまざまなプラットフォームで機能することが重要です。ユーザーは、Webサイトが古いWebブラウザーで動作することを期待することはできませんが、Web、モバイル、および支援技術全体で動作する必要があります。デジタル互換性を確保するための最良の方法は、W3Cによって規制されている国際的に認められた標準と制限に従うことです。

ユニバーサルデザインの原則は、基本的なデザインはすべてのユーザーのために作成されると述べています。これには、家族、友人、従業員、同僚、あらゆる分野の人々が含まれます。

アクセシブルなウェブサイトを構築する方法はたくさんあります。次回はウェブサイトに実装するためのいくつかの実用的なステップをご紹介したいと思います。

私も色々勉強中なので、皆さまのご意見・ご感想をお聞かせください。
お読み頂きまして、ありがとうございました。

メルボルンを拠点にプロダクトデザイナーとして働いています。主にデジタル・プロダクトの制作に携わっています。

［参考資料］

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