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【CEOの頭の中 vol.4】観光を休もう!オーバーツーリズムに必要な考え方とは。

今回のテーマはズバリ「オーバーツーリズム」です!
まずは、下の画像をご覧ください。

みなさんは、この画像を見てどう感じましたか?
実は、オーバーツーリズムが取り上げられる際、あまり良くないイメージで報道されることが多いんです。(日本語では観光公害という意味ですし)

しかし私は「それだけその地域に魅力を感じるお客さんがいること。それが度を超し過ぎているよね。」とある面では、”いい意味”で捉えています。
多くの地域は、誘致!誘客!とどうやって人を呼び込もう?と考えている中、過剰すぎるくらいの観光客が来ていることはある意味、マーケティング的にはすごく成功してると思うんです。ここで、日本でのオーバーツーリズムの対象地を考えてみてください。京都、鎌倉、高山、白川郷などなど。

そうなんです、古都や歴史・文化が今も色濃く残っているところなんです。そもそも、これらの街はその時代の最適であって、現代に合わせて作られている訳ではないのですから。。。

弊社では、オーバーツーリズム(over-tourism)「観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる状態、いわゆる過剰な混雑」と定義しています。世界では2010年代中盤から、様々な側面から議論がされていますが、日本では2018年頃から注目され始めたトピックです。今後、訪日外国人客が増えるに従い、どの地域でも直面する問題だと考えられるので参考にしていただけると嬉しいです。

本稿は、2019年2月28日、Peatix × JTBの業務提携イベントのゲストスピーカーとしてお話したことを中心に記載しています。
​​(https://jtb-peatix190228.peatix.com )

完全予約制導入の背景

雪景色の中に浮かび上がる合掌造り。冬のライトアップとしてアジアでも有名になったこのイベントは、観光客の7,8割が外国人です。イベント時、現場はものすごい人だかりで、店舗内はおしくらまんじゅう状態。写真撮影スポットも同様に場所の取り合いでした。

インバウンド客への対応とオーバーツーリズム課題への対応策について白川郷観光協会からご相談をけ、提案した完全予約制と入場有償化の導入案が採用され、弊社で管理運用を担当することになりました。

白川郷には電車がないため、交通手段はバスかマイカーになります。ツアーバスは従来から予約制だったのですが、マイカー利用の駐車場も同時に事前予約制にし、さらに展望台へのアクセスも予約制にして、村内全て予約者しか入場できないという完全予約制イベントにしました。そしてその予約システムにPeatixを導入しました。

実際の効果とは?

効果:過剰な混雑を解消

以前は1〜2時間ぐらいの渋滞が常態化しており、ひどい時にはイベントが終わってしまったのに、駐車場にも辿り着けないということもあったのです。

完全予約制を導入したことで、駐車予約まで最大でも10分程度の待ち時間となりました。会場内の混雑についても、以前の8,000〜10,000人の来場者を半減させ4,000〜5,000人程度の来場としました。ただ、この4,000〜5,000人という規模でも、まだ少し多いなという感覚もあるので、適正な数字はこれから数年間運用してから弾き出していく予定です。

下記は、実際に駐車場でお客さんがPeatixアプリを見せてチェックインをしている様子です。Peatixの事前支払でキャッシュレス化になったこともあり、1台5〜10秒ぐらいで駐車場に入れるようになりました。
これまでは金銭のやり取りが行われており、お釣りなどもあったため、1-2分掛かっていました。
浮いた時間でお客さんとの会話を楽しめました!

効果:必要人員の削減

地域にありがちな問題ですが、臨時運営スタッフを雇うものの、現地の地理に詳しくない方々が多いと、お客様も混乱してしまいます。
更に地域住民も案内人などとして駆り出されてしまい、必要な箇所に必要な人材が足りなくなります。

そういった事象も、参加人数をおさえた事によって最低限の人数での対応で事足り、人件費を抑えることにも繋がりました。

効果:来場者数半分で収益が1.5倍に

これは結構驚かれるのですが、来場者数を半減させたにも関わらずイベント収益が1.5倍になったことです。お金を支払ってでも来たいというお客様を受入側が選定することで、来場者の量ではなく、質を重視しました。結果、お客様の満足度も高かったのです。
レスポンシブル・ツーリズム、マーケティングで言うと、「誰に嫌われるかを明確に炙り出せ」です。

オーバーツーリズム対策としては、課題の8〜9割ぐらいを解決できたと思っています。大きな要因としては、Peatixアプリで事前に取得できる来場者データの分析と活用、またチャット機能による事前のコンシェルジュ対応などがとても役に立ちました。様々な機能を活用し、当日はスムーズに運営することができました。

実際、導入までの懸念は?

事前予約者しか村に入れないということで、村としては大幅な方針変更だったため、観光協会や住民の方から懸念などがあったことは事実です。

「知らずに来る方がいるのでは?」
「Peatixを本当に使ってもらえるのか?」

など反対や戸惑いの声も多々ありました。
予約制は、実は2019年導入約2年半前から出始めていました。様々な議論がありましたが、結局オーバーツーリズムというのは、地域住民の幸福度も、観光客の満足度も下げてしまう。ましてやここ数年、観光客・住民ともにイベント中の安全面において危険なシーンがいくつもあったため、完全予約制を導入せざるを得ないという結論に至りました。

我々は2017年に通訳案内ボランティアとして参加したのですが、お客様のストレスが高いフラストレーションの溜まるイベント、ということがよく分かったので、それらを伝えることで、我々の提案を受け入れて頂いたという感じです。地域住民との対話を繰り返しながら、外からの目線を取り入れ、残すべきところは残し、変えるべきところは時代に合わせて変えていくという感じで進めました。

実際イベントを終えてみると、先述の不安は杞憂でした。予約なしで来た車が毎日200〜300台あったのですが、この方たちはライトアップイベントが目的ではなく、ただ日中の村内観光に来られた方でした。予約制になったことを知らずにライトアップを見に来た方は来場者全体の0.4%程度でした。

先述したように、このライトアップイベントは、観光客の7〜8割が訪日外国人なので、皆さんかなり入念かつ事前に情報収集している事もあり、周知という部分では成功しました。逆に日中の村内観光を目指して来られる方との選別をどのようにしていくのか?、が今後の課題として浮き彫りになりました。

最後に…

今回の記事は「オーバーツーリズムで悩んでいるけれど、実際どう行動に移せばいいの?」という方へ向けた記事です。少しでも解決のヒントになれば嬉しいです。

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執筆:CEO (Chief Entertainment Officer)こと、藤田雄也


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