見出し画像

美人


最近、改めて聴いてあぁ、何度聴いても苦しくなるほど好きだな、と思った曲がある。

ちゃんみなの美人という曲は私にとって凄く大きな衝撃を与えた。高校生ラップ選手権という大会でキツい目をした当時のちゃんみなが会場を湧かせた日からずっと好きで良く彼女の曲を聴いている。

若い世代から絶大な支持を得ているのはもちろんの事、今ではYouTubeのコメント欄が外国語で溢れ世界的な人気を誇るほど凄い人だ。彼女の人に媚びないキツいメイクや眉毛の剃りこみ、長いブロンドヘアーに濃いリップの色、好きな服を着て好きなものを真っ直ぐに主張している姿を見ていると自分もそんな風に生きていきたい、もっと精神的な自立をして強く強く、人からの言葉に折れない人で在りたいと思わせてくれる。

美人という曲は誰しもが抱える外見に対する悩み、葛藤、苦しみが全て詰め込まれた一曲だと思っている。ちゃんみな本人が十代の頃に浴びせられた罵詈雑言に耐え抜き何年もの間、その苦しみを抱え長い年月をかけて温め、ついに世の中に解き放たれた。

私はこの曲を聴いた時ひどく悲しく、MVを見た時は冗談ではなく涙を流した。苦しくて悲しかった。学生の頃にひどく容姿のコンプレックスに苛まれた自分を思い出したり、曲が発売された当時、トレーナーとして活動していく中で出会う多くの人の綺麗になりたい、美しくなりたい、その為なら空回っても、辛くても、食べる楽しみを捨てても構わないという想いに触れて心がしんどくなってしまった時だった。会社の一日の業務報告を上げる時に私はこの曲の歌詞について考えさせられたことを記入して上司に上げたことを今も忘れない。

世の中の間違ったダイエット法も美容法も誰かに好かれたい一心で取り組む全ての人の純粋な心がどんどん狂っていってしまったり、高校生はおろか、小学生もが痩せたい綺麗になりたいとTwitterでダイエットの記録を付けている現状を目の当たりして衝撃が大きかった。トレーナーとして活動していく中で自分の目指す健康や綺麗と、とにかく今すぐ結果が欲しい、痩せたい、見た目を変えたいという世の中の美に関する認識のズレに私なんかに何が出来るのだろうと毎日考えた。

美人という曲は一言一言がナイフで抉られるように痛い。私は自分で自分を罵ったり自分を卑下しそうになる時、必ずこの曲の歌詞を思い出す。



前例がないのは怖いかい
ならお手本になりなさい

怖がったままでどうすんだい?
あの彼女を助けなさい

一番好きな歌詞だ。私はこの一ヶ月半で五キロ減量した。仕事の忙しさもあったが毎日少しでもトレーニングとランニングをして雨の日は自宅でスピンバイクを漕いだ。出来るだけ自分を好きでいる為に好きな服を着て毎日髪を巻いて、化粧を研究し、お気に入りの香水をつけた。玄関では家を出る前に並んだ靴の中からその日、好きだと思ったものを選び履いていく。毎日出来るだけ自分を受け入れ、そんな自分を大切にしようとする心構えを認め、人から褒められたら素直に受け取り、相手の素敵だと思うところも口に出し続けた。

なぜ、綺麗な見た目でいたいのか。なぜ働きに行くだけなのにそこまでするのか、出てくる答えはやはり、少しでも自分を好きになりたいからしかなかった。学生の頃に突きつけられた人は見た目が九割という事実は確かで、中身が大切なのも確かだ。自分を好きになるということほど難しいことは無い。向き合いたくなくて目を背けたくなる部分ばかりで毎日どれだけ身なりを整えてもそれでもコンプレックスは溢れてくる。

小さい口、左右の目の大きさの違い、丸顔、ニキビ跡、言い出せばキリがない。でも少しでも毎日自分を好きになれるように、早起きして好きなものを身にまとった自分でいれば、そんなコンプレックスもちょっと好きになれたりする。自分を助けてあげられるのは自分だけで、まさに彼女を助けなさいという歌詞は塞ぎ込んだ自分、自らに手を差し伸べそこからすくい上げるという意味だと感じている。学生の頃に突きつけられたコンプレックスや背負わなくても良かった悲しみを大人になってまで抱えさせるのはあまりにも酷で、そんな自分から解放させてあげたいと、美人を聴く度にそんな想いが溢れて止まらない。

この記事が参加している募集

ぜひサポートしてください!後悔はさせません!頂いたサポートはいつか必ず自分の書いた文を本にする夢に大切に使わせていただきます☺︎