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前回は大学からヤンマーグループに入る前までの経歴を記載させていただきました。
今回はその続きということで、ヤンマーグループに入ってからの経歴を記事にさせていただこうと思います。

職歴

ヤンマーホールディングス - 企業買収の日々

前職ではアドバイザリーの立場で企業買収に携わらせていただいておりました。アドバイザリーでは選択肢を提示した上で、最終判断はクライアントであったり、方向は提示するものの、実行するのはクライアントになります。
やはり実行する場にいないことで、歯がゆい思いをする機会が度々発生し、プリンシパルとして仕事を行いたいと思うようになったので、事業会社に移ることを決意しました。
出身が大阪であるため、大阪の企業でM&Aの経験を求められている数社とお会いした中、ヤンマーにご縁をいただいて、入社させていただいた次第です。
当時のヤンマーは今と違ってとても昭和な雰囲気で、初日の印象は「うわ、入る会社間違えたかも」でした(笑)。ただ、グループの内部の方との面識が増えるにつれ、何事にも穏やかに真面目な人が多い会社だということが認識でき、良い会社に入ったと思いました。企業風土というのは、なかなか変えることが難しいもので、こういう質の人が集まる会社というのも珍しいと思った次第です。
さて、本業ですが、振り返ってみてみると、1年に1件ずつディールをクローズしていたことになります。私が入社させていただく前までは、M&Aをやっていなかった中からのスタートでしたので、よくそこまで買収案件ができたな、とも思います。ただ、これももちろん一人で行ったわけではなく、人の質が良い会社なので、やるとなった時には不慣れであっても、真面目に取り組んでくれる方々に支えられて、案件を実行できたように思います。
対象会社は、非公開のクロスボーダー案件が多く、売り急いでいない会社もありましたので、買収プロジェクトは1年以上かかるものもありました。クロスボーダーばかりやっていたので、終盤には私の海外出張の行き先を調べて、どの会社が買収対象なのかを考えるっていう奇妙な趣味を持つ人も出てきました。
結局、私がリードさせていただいた案件の総額は1,000億円以上になり、グループが最近、売上高1兆円を超えた一つの要因になりえたかな、と思います。

ヤンマーホールディングス - 戦略策定とプロジェクトマネージ

さて、ディールマネジャーとして参画させていただいたヤンマーですが、途中から経営企画部として、中期経営計画の策定にも携わらせていただくことになりました。その際に印象的だったのは、各事業部から若手の方に異動していただいて、そのチームで戦略策定を行ったことです。
ヤンマーは事業部が複数に分かれており、農業機械だけではなく、建設機械、エンジン、発電機、舟艇などの事業を展開しているため、事業部ごとの独立性が大きい計画立案プロセスになっていました。そのため、事業部間のシナジーは少なく、また、アロケーションも積み上げベースに近いものになる傾向がありました。
私が担当させていただいた中期計画では、プロセスを見直し、経営層によるディスカッションからグループの向かう方向性を整理し、事業部との会話を通じて、事業部の戦略に織り込み、再度、グループとして取りまとめるというアプローチに変更させていただきました。その結果として、新しい打ち手が織り込まれていき、単なる既存の延長線上だけではない成長に向けた取り組みが、計画に織り込まれていったと思います。
ただ、この進め方で特に注意したのは、あまりにもトップダウンにならないことです。やらされ感があると、誰もやる気になりません。そのため、現場に足を運ばせていただき、事業の考え方の理解を深めさせていただいて、ちょうど届かないくらいのストレッチを自分ごととして考えていただく、ということを意識していたように思います。
計画策定だけでは結果に結びつかないため、事業進捗の管理や、前に進めるためのプロジェクトの企画・実行、事業と本社のコミュニケーションの見直しなど、いろいろと手をつけさせていただきました。ただ、経営企画部長になってしまうと、結構、定例の会議や事前のお伺いが多く、やりたい仕事ができない環境になっていく状況に陥ります。

ファミリーオフィス - 知らなかった世界

少し休憩をとらせていただこうと思い、一旦、退職をさせていただいた時に、オーナーからお声がけをいただいたのが、ファミリーオフィスの経営層の役割でした。
ヤンマーはよく上場会社と間違えられるのですが、実は非公開企業でまだ、創業家が株式を保有している所有形態の会社です。ファミリーオフィスという言葉に馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますので、簡単に説明しますと、創業家等の大規模な資産の管理・運用や株主の各種活動の支援を行う組織のことを指します(また、ファミリーオフィスについては、後日、しっかり書きたいと思います)。
経営者と株主は目線が異なるところが出てきます。オーナーはその両方をお持ちなので、経営企画時代に経営会議でご一緒していても、理解ができないところがありました。ファミリーオフィスに移らせていただいてから、株主としての考え方を身近にお伺いする機会が増え、どのようなことを考えて発言されているかを理解できるようになりました。
ちなみに近年の資本市場のレポートでは、非公開会社や創業家の影響力が残っている企業の方がパフォーマンスが高いということがデータで示されています。これは四半期の短期的な株主要請に左右されることなく、長期的な目線で必要な投資を継続して行うことから、そのようなパフォーマンスが示されると結論づけられています。
ファミリーオフィスの中でも様々な役割がありますが、私はその法人の事業周りではなく、どちらかというと資産周りと戦略周りの役目をいただいており、大規模なM&Aの検討や長期的な目線でのグループの継続性に関する検討をさせていただいています。

ヤンマーベンチャーズ - 再び事業の立ち上げ

長期的な目線での議論をオーナーとさせていただく中、グループ経営として事業中心で考えると、どうしても長くても中期的(<5年)な目線にとどまってしまうことが論点となりました。より長期でグループを発展させるための打ち手を考えなければ、という議論をさせていただく中、スタートアップ投資を行うことを提案させていただき、ヤンマーベンチャーズの創業を行い、現在に至っています。
ヤンマーベンチャーズは設計に工夫を凝らしています。他のVC、CVCの事例を調べつつ、理想系に近づけるため、VC-CVCの中間的な色合いで設立しました。CVCは本社部門等に紐づいていることが多く、従来の意思決定方法に従属するため、意思決定が遅くなりがちです。そのため、ヤンマーベンチャーズはヤンマーホールディングスの傘下に設立せず、ファミリーオフィスの傘下に設立し、意思決定はホールディングスと独立して行う体制で立ち上げています。そのため、ホールディングスの一部門という扱いではなく、独立した企業体として、経営を行わせていただいてる状況です。一方、グループの兼務人材を配置することにより、事業部や研究所との連携をスムーズに行うという体制も兼ね備える設計になっています。
CVCを運営していると「御社が狙っているのは戦略リターンですか、財務リターンですか」という質問をよくいただきます。私としては、両者は矛盾しないと考えているのですが、敢えていうなら財務リターンとお答えしています。ただ、何よりも自分で意識していることは、このCVC自体が新規事業なのだ、ということであって、新規事業を成功させるためにどのようにすれば良いのか、と日々、経営者として精進しているところです。
すでに立ち上げて3年が経過しましたが、まだまだ業界的には知名度も低く、これからやりたいことは多くありますので、皆様のご支援をよろしくお願い申し上げます。

帰結

久しぶりに最初の会社の人に会って、今はVCをやっているんですっていう話をした時に、「入社した時にやりたいって言ってたもんな」と言われました。すっかり忘れていたのですが、どうも社会人になった時にはそのような志があったようです。
いろいろと回り道をしながらですが、技術で世の中を良くする、優秀な人たちが報われる世界を作りたいという思いが、ここに結実しているのだと思います。



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