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詩日記

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日記的詩
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#ポエム

自分って

自分って

自分のことより他人のことに目が向くようになったのはいつからだろう、自分が何をしたいかよりも他人は何をしているのかが気になったのはいつからだろう、自分の意思より他人の意思に従うようになったのはいつからだろう、自分の好きなことより他人の好きなことを好きと言うようになったのはいつからだろう、自分のために生きる人生が他人のために生きるようになったのはいつからだろう、自分と他人の境目がわからなくなったのはい

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ジーパンの丈は少し長い

ジーパンの丈は少し長い

銭湯のお湯は少し熱いし、水風呂は少し冷たい。平日の一日は少し長いし、休日の一日は少し短い。牛丼の並盛は少し少ないし、牛丼の大盛は少し多い。初夏の屋外は少し暑いし、コンビニの店内は少し寒い。東京は人が少し多いし、東京以外は人が少し少ない。上司は少し厳しく、部下は少し緩い。ネットは少し淋しいし、現実は少し辛い。自分のことは少し悲観的で、他人のことは少し楽観的だ。やりたいことはできないのに、やらないとい

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隣の席のお客さん

隣の席のお客さん

ここはラーメン屋のカウンター

入り口で食券を買い店員さんに渡す

案内された席に座る

出された水を飲む

入ってきた時から付けたままのイヤホンで

YouTubeを見ながら

出されたラーメンを食す

口を拭いてスッと立ち上がって店を出る

そんな隣の席のお客さんを見ながら

わざと

いただきますとごちそうさまを

口に出す

最近出来たラーメン屋

最近出来たラーメン屋

珍しく夜にラーメンを食べよう。

というより近くに寄れるお店がそこしかないから。

まあ入ってみる。

食券を買う。

(おいしいラーメン屋っぽい)

女性店員さんに食券を渡す。

席に案内される。

水はセルフなのかと思い席を立つ。

すると「お水、、、」と。

女性店員さんが持ってきてくれたみたいだった。

(店員さんもきっとコミュ障なんだな)

席に戻る。

女性店員さんが食券をカウンターに

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枕

寝れればなんでもいいと思ってた

床に就くといつもと首の高さが違う

左肩の痛みといっしょに起きる

自分にあったものを使おう

またひとつ自分を知る

この痛みも寝れば治るのだけど

レールの上を走れ

レールの上を走れ

大学へ行け。脱毛しろ。痩せろ。就職しろ。結婚しろ。子どもを産め。保険に入れ。親を介護しろ。個性、多様性、自分らしさ、なんてことは幻想で、電車内に隙間無く貼り付けられた広告たちはお節介で躾がましく口うるさく言う。はみ出るな。普通であれ。皆と同じであれ。電車と同じようにレールの上を走れ。電車は今日も決められた時間に決められたレールの上のみを走っていく。

間違いだらけ

間違いだらけ

人は誰でも一度は間違える

間違えない人はいない

誰でも間違いながら生きていく

ぼくもきみも間違える

親も先生も上司も友達も間違える

間違いの大小と間違えた原因は様々あるけど間違える

知っている知っているはずなのに

自分以外の誰かが間違えた途端

間違えたことがないかのように振る舞う

自論を展開し

意見を主張し

善悪を議論し

そして

人格を否定する

間違っている

いつのま

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東京タワーの下でなんとなく

東京タワーの下でなんとなく

なんとなくそろそろ働こうかと重い腰を上げて、それなりに興味があることをやっていてなんとなく受かりそうなお店に応募してみたら、なんとなくやんわりお断りされた。行ってみたかった文学フリマも途中でなんとなく行くのがめんどくさくなり、乗り換える浜松町駅でなんとなく東京タワーを見上げに行った。東京タワーもなんとなく見上げてから、なんとなく増上寺入り口前の公園のベンチに座った。なんとなく水を買って飲んで、なん

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生きる音

生きる音

オフィスの執務室の扉を勢いよく閉めたときの音。靴底と地面が擦りつくように歩いたときの音。バーベルを落とすように置いたときの音。改行するたびに壊れるくらいに強くEnterキーを押したときの音。車間距離を詰めるだけに必要以上にアクセルを踏んだときの音。ごはんを食べることより写真を撮ることを目的としたランチに向けてシャッターを切ったときの音。自分と身近な他者を見ず大袈裟に見栄高く自分都合で生きたときの音

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5月下旬の土曜日の朝

5月下旬の土曜日の朝

目を覚ますと

小学生たちの元気いっぱいな話し声が聞こえる

たしか今日は土曜日だったはず

昨日Mステを観たから平日ではない確信はある

朝ごはんを食べて洗濯物を干しにベランダに出る

流行りのJ-POPが聞こえてくる

曲が終わると同時に

「只今の競技は紅組の勝ちです」

と放送部の小学生が淡々とアナウンスする

次はスターターピストルがパンっと鳴る

それから違う流行りのJ-POPが聞こえ

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犯人探し

犯人探し

テレビから流れるニュースを横耳に聞く

メディアは今日もまた

責任の所在を明らかにする風に

犯人探しに勤しんでいる

事実ではなく解釈を上手に伝え

同情と批判を生み

視聴率を稼ぐ

犯人が見つかれば

言葉を選ばず

モラルを無視して

圧倒的な失望を与え

怖いくらいに叩く

犯人が見つからなければ

誰かを犯人に仕立て上げ

事実を捻じ曲げ

都合良く解釈し

怖いくらいに叩く

お腹

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待つこと

待つこと

長蛇の列に悪気なく割り込むひと

人が考えているのを遮って喋り続けるひと

赤信号から青信号になる5秒前に歩き始めるひと

電車から人が降りる前に乗って我先にと座席に座るひと

入社して間も無い人を短期的な結果だけで評価するひと

待てないひとたちは挙って

コスパ 効率 生産性

という言葉を多用して賢そうに振る舞う

時間が有限であることは間違いがない

一秒でも長く大切なことに時間を使いたい

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眠れない

眠れない

寝付くまでに時間がかかる

あんなに寝付きがよかったのに

寝付くまでに時間がかかる

目を閉じれば間もなく寝付きに辿り着いていたのに

寝付くまでに時間がかかる

寝れない夜を知らなかったのに

仕事もせず疲れていないからだろうか

それなら嫌というほど疲れたい

仕事をしない代わりに睡眠を奪われたのだろうか

それなら間もなく仕事を始めるので返してほしい

寝ることよりもやりたいことがあるから

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初夏の昼

初夏の昼

半袖長ズボン姿で階段を昇る

クーラーが緩く効いた店内

アイスとホットの悩ましい選択

店内ではマダムたちの仲睦まじい井戸端会議

店外では行き交う人達の間をすり抜けていく選挙演説

ページを捲る手は止まり

栞を挟んでは取ってを繰り返す

ひとくち分コーヒーを口に含む

「洗濯物が喜ぶ天気」

店主が何気なく発した会話の断片

ほんの少し気持ちが落ち着く

窓の外に目を向ける

それからまたひ

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