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侠客鬼瓦興業61話「激突!女衒の栄二vs閻魔の娘」

「もうヨッチーちゃんったら、なんてチャーミングなんでしょう」
メキメキ、メキメキ
女衒の栄二は僕の全身をまるでアナコングのように締め付けながら、その巨大なえらをぐりぐり押し付けて来た。
「く、くるちい・・・、くるちい・・・、たしゅけてぇ」
遠いお花畑へ旅立とうとしている僕の意識の中に、聞き覚えのある声が飛び込んできた。
 
「栄ちゃん!!吉宗君から離れなさーい!!」 
「あら?」
「!?」
そこには、腕組みをして栄二さんを睨んでいるめぐみちゃんの姿があった。

「栄ちゃん!吉宗君は私の大切な人なんですからねー!!」
めぐみちゃんはそう叫びながら、僕と栄二さんの間に割って入ってきた。 
(め、めぐみしゃーん)
僕はもうろうとする意識の中、彼女の後ろに逃げ込んだ。 
「何よあなた、私とヨッチーちゃんのラブな時間を邪魔して!いったいどなた?」
栄二さんはむっとした顔でめぐみちゃんを見たあと、ハッと小さな目を見開いた。
「めぐっぺ・・・?・・・きゃーやだ~、めぐっぺじゃない!」 
「久しぶり~栄ちゃ~ん!」
めぐみちゃんは、いつの間にか笑顔になって、栄二さんとふたり手をとりあいぴょんぴょん跳ねながら喜んでいた。 
「めぐっぺ、まー!しばらく見ない間に、あなた極上になっちゃったじゃないのー」
「ご、極上だなんて、やだー栄ちゃんったら」
「極上よ、極上~、めぐっぺー、会えてうれしいわ~!」
「私もまさか栄ちゃんに会えるなんて、うれしい~!」
そう言うと二人は再び飛び跳ねながらはしゃいでいた。
 
(ど、どうしてめぐみちゃんが女衒の栄二さんのことを?) 
僕はきょとんとした顔で
「あ、あの、めぐみちゃんもご存知だったの?」
そう言いながら栄二さんを指差した。
「あっ、うん・・・、ちょっとね」
めぐみちゃんは少し口ごもらせながら微笑んだ。

栄二さんはそんな僕とめぐみちゃんを見ながらあることに気がついた。 
「そう言えばめぐっぺ、さっきヨッチーちゃんのこと、私の大切な人って言わなかった?」
「え?う、うん」 
「えー!、や~だー信じらんないー!!ヨッチーちゃんとめぐっぺ出来てたの~!?」
「えへへ」
めぐみちゃんは照れくさそうにうなずきながら、僕の腕をそっとつかんだ。

「まーいやだわ!信じらんないの連発だわー!でも、さすがはヨッチーちゃん、めぐっぺを物にするなんて、私が一目惚れしただけのことあるわー!!」
栄二さんは、熱いまなざしを僕に向けながら不意に
「で?あんた達どこまでやったの?」
ど直球の質問をぶつけてきた。

「え?やったって・・・?」
めぐみちゃんは顔を真っ赤にした。
「だから、どこまでやったのって聞いてるのよ」
栄二さんはイラついた顔でポーチをふり回しながら、めぐみちゃんに詰め寄った。
「ど、どこまでやったって・・・ !?」
「もう、ガンガンやっちゃったの?」
「えー!?が、ガンガンって!」
めぐみちゃんと僕は、真っ赤にして首を横に振った。 
「え!?まだガンガンやってないの?」
栄二さんは小さな目を見開きながら驚きの顔を見せると 
「それじゃめぐっぺ、ヨッチーちゃんにあんたのお乳触らせてあげたの・・・?もうペロペロさせてあげたの・・・?」 
「ぺ、ペロペロ!?」 
めぐみちゃんは更に顔を真っ赤にしながら、あわてて首を横に振った。

「えー!!あんたまだヨッチーちゃんにペロペロもさせてないのー!?」
栄二さんは境内全域に響くぐらいの大声でさけんだ。
「ちょ、ちょっと栄ちゃんったら!」
めぐみちゃんは慌てて、栄二さんの腕をつかんだ。栄二さんは呆れ顔で眉間にしわをよせると 
「それじゃー、あんた達、まだチューだけなの?」

「あ、いや、あのそれもまだ・・・」 
めぐみちゃんと僕が困った顔でうつむくと 
「えええええええええええええええええええええええ!?」
更に大声で大絶叫した。

「あんた達まだチューもしてなかったのー!」
栄二さんはそういうと同時に突如うれしそうに
「ホー、ホホホホホホホホホホホホホホホホホーー!」
奇声のような声で笑い始めた。

「な、何よ、何がおかしいのよ栄ちゃん・・・」
「ホホホホ、だって可笑しいじゃない、あんた達まだ何にもしてないんでしょ、なのに私の大切な人!だなんて笑っちゃうわよ、ホホホホホホホ!」
「変な声で笑わないでよ!私と吉宗君は心と心で結ばれているんです!」
めぐみちゃんはそう言いながら僕の腕をつかんだ。
「心と心?ホホホ・・・、あいかわらずお笑いね、めぐっぺ、心だけじゃ男と女は結ばれたとは言えないのよ」

「・・・え!?」 
「男と女はね、熟れた肉体と肉体が、あんな風に、こんな風に・・・、あーんもうめちゃめちゃにからまりあって、こねくりあって・・・、それで結ばれたっていうのよ!」
栄二さんはいやらしい顔でにやけながら、体をくねくねと動かした。

「か、からまりあうって!?」
めぐみちゃんは思わずそう口にし真っ赤になってうつむいた。同時に僕の頭にもリアルな映像が・・・
(ああ~、め、めぐみちゃんと僕が、すっぽんぽんで、からまりあって・・・、こねくりあって・・・、あ~、ああああああ!)
たら~!!
僕の両方の鼻から、真っ赤な液体が流れ落ちた。 
「えー!?よ、吉宗君!」
「あー、し、しまった!!」
僕は慌てて鼻をつまんだ。

栄二さんはそんな僕を見ながら嬉しそうに笑うと
「ほら、ごらんなさいめぐっぺ、ヨッチーちゃんの身体は心だけじゃ物足りないぞーって、そう訴えているじゃないの、ホホホホホホホホ!!」
「そ、そんなこと・・・、そんなこと・・・」
めぐみちゃんは真剣な顔で僕を見た。
「え?いや・・・」
僕はあわてて首をぶるぶると横にふった。

「ヨッチーちゃん、もっと自分に正直になりなさい。そして現実をしっかり見つめるのよ」
「げ、現実?」
「そうよ、そんなエッチもさせない、もったいぶり女なんてダメよ、ダメダメ!!そんな女よりも私よ、私を選ぶのよ~、そうすればあんなことも、こんなことも・・・、好きなようにあーんもう私がさせてあげるからーん!!」
栄二さんは、もだえるように身体をゆさぶりながら、すさまじい顔で絶叫しはじめた。
「男の子なら当然よー、さあここよー、ああーんヨッチーちゃん、私を攻めまくってちょうだーい!もっとみだらにー、みーだーらーにいーーーー!」

「いい加減にしろー!!」
ガキーン!!
めぐみちゃんの大きな声と、すさまじい金属音が境内に響き渡った。 
(あ、あああ~!!)
栄二さんの股間にめぐみちゃんの蹴り上げた足が、見事にめり込んでいた。
「ぐおあー!痛ーー!まっ、まだ・・・、ついてるのにーー!!」
栄二さんは大声で叫びながら、股間を押さえピョンピョン飛び回った。

(・・・めぐみちゃんが、金蹴り、金蹴り~!?)
僕はそのすさまじい痛みを想像しながら、青ざめた顔でめぐみちゃんの様子を伺った。

「あー!ご、ごめんなさい!つい・・・」
めぐみちゃんは慌てて両手をあわせながら栄二さんに謝った。
「つ、ついじゃないわよー、私まだついてるのよ!痛たたた!!」
「だって、栄ちゃんが吉宗君に変なこと言うんだもん!!」 
「もう、冗談じゃないの、冗談~」
「冗談でも行きすぎなの!」
めぐみちゃんはムッとした顔で栄二さんを睨んだ。
「あいかわらず気が強いわねー、めぐっぺは」
栄二さんは玉を押さえながらめぐみちゃんを見ると、その直後に思いがけない言葉をつぶやいた。
 
「参ったはもう!スケ番めぐ、いまだ健在なのね、いたたたた」  
(・・・え!?) 
栄二さんの言葉に、僕の耳はダンボのように大きく反応した。
(スケ番めぐ!?)
僕の頭にチャラ男達に対して見せた、あの恐いめぐみちゃんの姿がよみがえり、再び彼女のことをじーっと見つめた。
僕の視線を感じたのか、めぐみちゃんもハッとした顔で振り返った。 
「あっ?よ、吉宗君!」 
「え!?は、ははは・・・、ははははは」
僕は引きつった顔で笑っていた。めぐみちゃんは、そんな僕に近づくと真剣な顔で見つめてきた。 
「吉宗くん・・・」 
「え?」
「吉宗君、私達ちゃんと心でつながってるんだよね?」 
「あ!う、うん・・・、うん」
めぐみちゃんの突然の言葉に僕は真っ赤になってうなずいていた。 
「うれしい・・・」
めぐみちゃんは幸せそうに微笑むと、そっと僕の腕に手を回し栄二さんの方を振りかえった。
「栄ちゃん、これでわかったでしょ!たとえ・・・何も無くったって吉宗君は私の大切な人なんです!!」
栄二さんはめぐみちゃんの迫力に一瞬押されたあと、ふっと唇をかみしめながら 
「まあ良いわ・・・、今日のところはそう言うことにしておいてあげるわ」
「今日のところ?」
「そう、今日のところはね・・・、ホホホホホ」
そう言って僕たちの前から立ち去ろうと歩き出したが、数歩行ったところで立ち止まると、再び股間を押さえてピョンピョン飛び跳ねた。
そして、痛々しい顔で振り返ると
「ヨッチーちゃんは必ず私のナイスボーイにして見せるわ、ホホホホホホ」
境内中に響くような奇声を発しながら去っていったのだった。

僕はめぐみちゃんのすさまじい金蹴りによって、女衒の栄二からはひとまず救い出された。しかし同時に僕の頭の中は
(スケ番 めぐ・・・)
その言葉でいっぱいになっていたのだった。

僕はとなりで僕の腕に手をまわしているめぐみちゃんに恐る恐る声をかけた。 
「あ、あの、めぐみちゃん・・・、さっき栄二さんが言った事なんだけど」
「え?何、吉宗君」
彼女は、いつものやさしい声と笑顔で僕をじっと見た。
「あ、いや、なんでもない・・・、ははは」
「へんな吉宗くん、ふふ」
「あ、はははは」

「おーいそこの二人ー、いつまでも遊んでねーで仕事しろよ仕事ー」
「あ、すいません銀二さん!!」
「ごめんなさーい!」
僕とめぐみちゃんは銀二さんの言葉に、慌てて持ち場に戻ったのだった。

つづく

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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※このお話はフィクションです。なかに登場する団体人物など、すべて架空のものです^^

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