見出し画像

侠客鬼瓦興業65話「めぐみちゃん危機!イケメン三波の誘惑」

お大師さんの境内は休日とあって賑わいをまし、僕と銀二さんはたこ焼き作りに追われていた。
「吉宗、お前なかなか返しうまくなってきたじゃねーか」
「そうですか」
「おまえ、ワリと感がいいんだな」
「はは・・・」
僕は照れ笑いを浮かべながら、たこ焼きを返していた。

隣では、めぐみちゃんの金魚すくいテキヤ用語で赤丹も、お客さんでにぎわっていた。
「ありがとうございますー」
「はーい、僕、残念やぶれちゃったね、好きな子一匹選んでね」
めぐみちゃんは、いつもの明るい笑顔ででお客さんと接していた。

(やっぱり僕の勘違いだよな・・・、めぐみちゃんがスケバンだなんて、ありえないよ)
僕はやさしく子供たちとふれあっているめぐみちゃんを横目に見た。
「わー、君、とっても上手だねー、おねえさんビックリ」
子供たちと暖かくふれあっているめぐみちゃん、彼女も僕を思ってくれている。そう思うたび僕は幸せ気分で微笑んでいた。

 しかしそんな僕の幸せをぶち壊すように、奴が・・・

「ありがとうございました・・・、・・・?」
めぐみちゃんは金魚の入った袋を、男の子に手渡しながら目を見開いた。
「あっ!?」
そこには数名の園児を連れた、イケメン三波が立っていたのだ。

「いやあ、こんにちわー!」
「こ、こんにちわ・・・」
「また、会えましたね」
「あ、はい」
イケメン三波は、さわやかな笑顔でめぐみちゃんをじーっと見ると
「うん、やっぱり美しいですね」
「え!?」
「きれいな方はたとえどんな場所にいても、美しいんですね」
「え!そ、そんなこと・・・」
めぐみちゃんは三波の歯の浮くようなセリフに、思わず頬をそめてうつむいた。
(あ、あいつ!)
僕は突然の三波の出現に動揺しながら、たこ焼きを返していた。

「三波先生、早く~、金魚すくい、金魚すくいー!」
子供たちが、水槽を指差してさわいでいた。
「はいはい、約束だったよな」
三波は財布から千円札をとりだしながら
「昨日、春菜先生と一緒に来た子供たちから聞いたらしくてね、昼からうるさくて、ははは」
「あの、夜もお仕事なんですか?」
「うちの保育園、夜間保育もやってるんですよ、この辺って夜の仕事のお母さんも多いから」
「そうなんですか」
「先生、早く、早くー」
「わかったわかった、すいません、これで5人分お願いします」
三波は笑いながら千円札を差し出した。
めぐみちゃんはその千円札をあわててつかんだ、しかし三波はにぎっていた札をわざと放そうとせず
「綺麗な指ですね・・・」
キラキラ光る白い歯でささやいた。
めぐみちゃんは思わぬ言葉に、三波の持つ千円札をつかんだまま固まってしまった。

(うおー!あ、あいつ、またしてもあんなことを・・・)
僕は鼻息を荒げながら二人をみていた。  
「あ、すいません。本当に綺麗な指だったんで、つい」
三波は、恥ずかしそうに笑いながら、握っていた札からそっと手を放した。「あ、あの千円だと、一回おまけで六回できます」
めぐみちゃんは三波から受け取った千円札をしまうと、真っ赤な顔でポイとお椀を用意しはじめた。
「一回おまけですか、それじゃ僕も昔にもどって頑張ろうかな」
「あ、はい先生も、ど、どうぞ」
明らかに動揺を隠しきれないめぐみちゃんの様子を、イケメン三波は再び獲物を観察するような目で見つめていた。
三波の熱い視線に気がついためぐみちゃんは、持っていたポイを差し出しながら慌ててうつむいてしまった。

(あの男ー、またあんな目でめぐみちゃんを・・・ぐおー!)
僕は怒りの炎をめらめらさせながら、真っ赤な顔でたこ焼きを返していた。
「あーママ、このたこ焼きのおじちゃんも、タコさんになってるー!!」
「え!?」
「ほら吉宗、お客さんだよ」
銀二さんの声で前を見ると、お金をもった小さな子供が目をまん丸にしながら、僕を指差し立っていた。
「あ、すいません、一つですね」
あわてて焼きあがったたこ焼きをパックにつめながら、僕は横目で隣を見て愕然とした。
(ぐあー!?)
何とそこには、ポイをもっためぐみちゃんの手をそっと握っている、イケメン三波の姿が・・・
「あ、あの・・・」
めぐみちゃんは慌ててポイを三波の手に残して自分の手をひっこめた。
「あっ、すいません・・・、君があまりにも美しい手だったから」
三波は恥ずかしそうに頭をかきながら、水槽の前に腰をおろした。

(あの男~おおおおおお!!)
僕の怒りは頂点に達していた。
「うわー、ママ、このおじちゃん恐いーー!!」
「バカー吉宗ー!」
「え!あー!?」
気がつくと僕は、真っ赤になった大魔神のような形相で、子供にたこ焼きを差し出していた。
「うわーん、うわーん!」
「何ですかあなたは、小さな子供をにらんだりして!」
「すいませーん!あの、これたこ焼き」
「よそで買うからもう結構です!!」
慌てて謝る僕をにらみながら、お客さんは帰って行ってしまった。

「バカかお前、客の子供にガンくれるやつがあるか」
「す、すいません銀二さん」
「すいませんじゃねーだろ、もっと集中して仕事しろよ・・・、こっちは生活がかかってんだからな」
「はい、すいません」
僕は謝りながらも、隣のめぐみちゃんが気になって仕方なかった。

「わー先生、破れちゃったー」
「僕も、一匹もとれなかった」
隣の金魚すくいでは、子ども達が敗れたポイを残念そうにながめていた。
「ははは、君達にはまだまだ難しいからね・・・、よし、先生のこと見てるんだぞ」
イケメン三波は白い歯を輝かせて子ども達に微笑むと、チラッとめぐみちゃんを見て軽くウィンクをした。
「!?」
めぐみちゃんは、思わず頬をそめた。

(あー、めぐみちゃんが!めぐみちゃんが、赤くなってしまったー!)

イケメン三波は颯爽と腕まくりをすると、大きな金魚めがけてポイを走らせた。
バシャー!!
ズボー
「あれれ?」
イケメン三波の破れたポイの間から金魚が悠然と泳ぎさっていった。

(なんだよ、口ばっかりで全然へたくそじゃないか)
僕は悔し紛れにほくそ笑んだ。 
三波は破れたポイをめぐみちゃんと自分の顔の前に持ち上げると
「ハハハハ、僕もまったくダメだった見たいですね」
白い歯を輝かせて、めぐみちゃんに微笑んだ。そんな三波の笑顔につられて
「ふふふ、三波先生って面白い方なんですね」
めぐみちゃんも思わず微笑んでいた。

(あー!!め、めぐみちゃーーん!?)
「銀二さん、すいませーん」
「あー、何だ吉宗、急に・・・」
気がつくと僕は半べそ状態で持ち場から離れていた。

「あの、好きな金魚選んでください」
めぐみちゃんは三波を見ながら、そっと水槽のなかを指差した。
「あ、残念賞ですね」
「はい」
「それじゃ、どの子が良いかな」
三波はポイをめぐみちゃんに手渡すと、からだを乗り出して水槽を覗きこんだ。
「おねえさん、見て見て、この子可愛くないですか?」
「え?どの子ですか?」
「ほら、こっちのこの子ですよ」
「えーわからない」
めぐみちゃんは片手に網をもったまま水槽の上にからだを乗り出した。
三波は一瞬ニヤリと笑うと、急に自分の顔をめぐみちゃんに近づけ 
「ほら、この子!」
間近でめぐみちゃんを見つめながら、そっと右手の人差し指を彼女に向けて微笑み
「きれいだ、近くで見ると、いっそう美しいですね」「え!?」
「好きになってもいいですか?」
「ちょ、ちょっと!み、三波先生・・・」
思わぬ告白に動揺をかくせず、めぐみちゃんはじっと三波のイケメンフェイスを見つめていたのだった。

つづく

最後まで読んでいただきありがとうございます。
続きはこちらです↓

※このお話はフィクションです。なかに登場する団体人物など、すべて架空のものです^^

前のお話はこちら↓

侠客鬼瓦興業を第一話から読んじゃうぞーというやさしい方はこちら↓

侠客鬼瓦興業を途中から読まれる方は、ここからお話を選んでください↓

あとりえのぶのWEBサイト、可愛いイラストやラインスタンプほか
紹介しています。↓


この記事が参加している募集

恋愛小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?