マガジンのカバー画像

侠客鬼瓦興業

110
一条吉宗くん、18歳、ごく普通に育った彼の就職先はなんと関東でもなのあるテキ屋、鬼瓦興業だった…。ちょっとこわいけど楽しい人たちと吉宗くんとの笑いあり、感動あり、涙あり、ちょっと…
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事

侠客鬼瓦興業 1話「侠客吉宗くん誕正」

侠客鬼瓦興業「あらすじ」超がつくほど真面目で真っ直ぐで、いまどきめずらしい天然記念物のような青年の一条吉宗くん、彼が求人広告で就職した先は関東でも有名なテキ屋一家の鬼瓦興業だった。その業界の怖いけど楽しい人たちと謎の美少女めぐみちゃん、そして彼女の恐怖の父親、数々の苦難をその天然キャラで乗り越え成長していく吉宗くんと、おもろい面々の笑いあり、恋愛あり、感動あり、それにちょっとエッチもありの物語。 侠客鬼瓦興業第一話「侠客吉宗くん誕生!」侠客、強気をくじき弱気を助ける義侠の

侠客鬼瓦興業100話最終話「侠客☆吉宗くん」

就職した先は、なんと関東でも名のあるテキヤの一家だった。 超天然素材の僕、一条吉宗は、それまで喧嘩もしたことのない、ごく普通の超平和的な若者だった。 しかし、そんな僕がこれまでは近づくことなど想像もできない、その筋の怖ーい方々とともに生活することになってしまった。 おまけに入社そうそう、おでんのようなチンピラとの喧嘩に巻き込まれたり、鉄という奇妙な弟分まで誕生しちゃったり、さらには何も知らずにソープランドという所にに連れて行かれてしまったり・・・。 その後も僕は、数々の怖い事

侠客鬼瓦興業 99話「素敵な恋」

西条さんとの死闘、それに火事場の大騒動、まるで嵐のようなあの一日から1ヶ月がたった。 テキヤの仕事にも少しなれてきた僕は、毎日の日課である事務所の掃除をすませ、与太郎こと親父さんの愛犬ヨーゼフと共に多摩川のほとりを歩いていた。そんな僕のもとに 「吉宗くーん!待ってー!」 めぐみちゃんが僕を追って笑顔で走って来た。 「あれ?めぐみちゃんどうして?大学は?」 「今日は三限目からだからまだ時間があるんだ。それより吉宗君、頭大丈夫?」 「えっ!ああ、ほらすっかりたんこぶも無くなった

侠客鬼瓦興業98話「吉宗くんはたいした男・・・」

「おっ、おい、どうしてだ・・・、なんで吉宗のやつが?」 追島さんはススだらけの顔で、お慶さんに尋ねていた。 「ユキのことを助けようと、夢中で中へ」 「ユキを助けるって、ユキはもうここにいるだろうが!」 お慶さんは小さくうなずくと、青ざめた顔で燃え上がる建物に目を向けた。 「あの子、まだ何も知らずに、中でユキのことを探してるんじゃ」 「あっ、あの煙の中でか?」 「そうよ、きっと必死にユキのことを」 「だっ、だとしたら途中であきらめて引き返してくれてればいいんだが」 追島さんの言

侠客鬼瓦興業 97話「めぐみちゃんの悲しい叫び」

燃え上がる建物の周りでは、いつしか消防隊員による消化活動が始まっていた。そんな中、西条さんは・・・ 「えーい放せコラ!!ワイも助けに行くんやー!!」 大声で怒鳴りながら中へ飛び込もうとしていたが、数名の消防隊員に押さえられ必死にもがいていた。 「危険ですから離れて!」 「放せコラー、放さんかーい!!」 「救出作業は私達にまかせて、とにかくこれ以上近づかないで!」 「せやったら早う助けださんかい!」 西条さんはイライラしながらその場から離れると、何を思ったか一人建物の入り口近く

侠客鬼瓦興業 96話「追島さんと吉宗くんなら・・・」

「やっ、やめろ馬鹿ー!!」 ガツッ! 銀二さんの叫びも届かず、振り下ろされた刃は西条さんの肩口に鈍い音を立ててめり込んだ。 「うぐおー!!」 西条さんは血走った目で振り返ると切りかかった男を力任せに払いのけた。そして肩口の短刀に目を移し 「ふぅーっ」 一つ大きなため息をついた。 「危ない危ない、今のがもし、さっきの吉宗の打ち込みやったら今頃ワイは肩から真っ二つにされとったわ」 そう呟くと無造作に短刀に手をかけ、ぐっと険しい顔で引き抜いた。  「だっ、大丈夫っすか西条さん」 慌

侠客鬼瓦興業 95話「ひばり保育園の惨事・・・」

バスの駐車場から保育園へ、僕とめぐみちゃんは目をキラキラ輝かせながら歩をすすめていた… 「追島さん、きっと喜ぶだろうな」 「うん、お慶さんとの誤解も晴れて、また家族が一緒になれるんだもんね」 「追島さん家族が、また一緒に」 僕はそう呟きながら、追島さんの哀愁ただよう姿を思い出していた。 鬼瓦興業の倉庫の中、一人涙していた追島さん…、保育園脇の茂みから悲しげに、ユキちゃんの事を見ていた追島さん…、お大師さんの境内でユキちゃんと涙の抱擁をしていた追島さん…、喫茶慶の開店祝いに、

侠客鬼瓦興業 94話「西条竜一という男」

「春菜先生こっち・・・」 ひばり保育園に隣接する雑木林から野太い声が響いてきた。春菜先生が振り帰るとそこには鬼瓦興業の鬼軍曹追島さんが木陰にひっそりたたずんでいた。 「あっ、追島さん」 春菜先生がそっと近づくと、追島さんは手に持った携帯を指差し 「今、うちの若いもんから連絡があってね、見つかりましたよ園バス」 「えっ!本当ですか?」 「はい、今こっちに向かってます。うちの連中も一緒にね」 「うちの連中?」 「ええ、どういったいきさつか知りませんけど、吉宗にめぐみちゃん、それに

侠客鬼瓦興業 93話「吉宗くん日本最強!」

「ぐはぁ、ぐはぁ…」 木刀を握り締めた西条竜一は、苦しそうな息づかいでこっちを見ていた。 僕はそんな西条から、必死に目をそらさず (桃さん…桃さん…) 心の中で、桃太郎侍さんを呼び続けた。しかし桃さんはすでに僕の体から離れ、消えてしまっていたのだった。 (そっ、そうだ…、桃さんはもういなかったんだ) 「小僧~!」 西条は一言つぶやくと、一歩足を近づけてきた。    「めぐみちゃん!こっち」 無意識に彼女を後ろに隠すと、僕は緊張で震えながらも必死に西条を睨み続けた。 ところが

侠客鬼瓦興業 92話「めぐみちゃんの唇・・・」

「めぐみちゃん!!」 彼女の姿を見た瞬間、僕の両目から涙が、どぶぁーっとあふれ出した。 「めぐみちゃん!めぐみちゃん!」 僕は必死に彼女の元へ近寄ろうとした。しかし今までの激闘の影響から足がもつれてその場にコロッと転がってしまった。 「めぐみちゃん・・・」 それでも必死に体を起こした僕にめぐみちゃんが 「吉宗君!!」 叫びながら飛びついて来た。僕は生きて再び彼女に会えたうれしさから満面の笑みを浮かべながら  「勝った・・・、僕、勝ったよ、めぐみちゃん勝ったよ」 「うん、すごい

侠客鬼瓦興業 91話「吉宗くん曇り無き剣」

「よくもめぐみちゃんを・・・、許さん、貴様は絶対に許さん」 僕は怒りにパンチパーマを逆立てながら、角材を上段に構えぐっと西条を睨みすえた。 「ほう上段とはのう、我も棒振りの経験があるようやの」 西条は不気味に笑いながら、手にしていた木刀の先を再び僕に向けた。 「許さない・・・、絶対に許さない!!」 「きえぇーーーっ!」 叫ぶと同時に僕は、力いっぱい西条めがけて打ちかかった。 しかし西条は僕の気合の打ち込みにまったく動じる様子を見せず 「フン!!」 鼻で笑いながら、手にしてい

侠客鬼瓦興業 90話「桃さん登場!!」

「きっちり地獄へ送ってやるよ!」 イケメン三波はそう言うと、手にしていた角材を僕の脳天めがけて振り下ろした。 (うぁー、せっかく戻って来れたのにー!) 僕がこの世の最後を覚悟した、その時だった。 ピュ~ゥ~!ポンポンポンポン!ピュ~ゥ~~!ポンポンポンポンポンポン! 何処からか、美しい笛の音と太鼓の音が僕の耳に響き始めた。 (なっ?なんだ?・・・ん!?) 「あっ、あれー!?」 何と、奇妙な笛の音と同時に振り下ろされたはずの角材が、僕の頭の真上でピタッと止まっていたのだ。 お

侠客鬼瓦興業 89話「吉宗くん三途の川への旅立ち」

「めぐみちゃんは僕が守る!」 「守るってお前、もう虫の息やないか?」 「ぼっ、僕は負けない・・・、僕は、死んでもめぐみちゃんを守るんだ・・・」 僕は体を震わせながら立ち上がろうと頑張った。 「死んでも守るやと?」 西条はその言葉に突然目を血走らせ 「ほんなら死んで守ってみんかい!このボケがー!」 僕の背中をおもいっきり蹴り飛ばした。 「ぐあー!」 「生意気ぬかしおって、我に何が守れるんや、おー!?」 西条は大声で叫ぶと、僕の髪の毛を鷲づかみにしてすさまじい形相で睨んできた。

侠客鬼瓦興業 88話「鬼神対悪鬼!彼女は僕が守る!!」

「ぐっ、ぐぉー!だっ、騙したのか!」 「俺の大切な顔にこんな事しておいて、黙って返すわけねえだろ・・・くっくく」 イケメン三波はボロボロの顔に不敵な笑みを浮かべると、僕の首へ回した腕にさらに力をこめてきた。 「く、苦しい…は…な…せ…」 「クックック、だんだん虫の息になって来てるぞ、おい、さっきの威勢はどうしたんんだ」 「…あぐ、あぐぁ…」 そんな僕の危機に気付かず、めぐみちゃんは少し離れた場所で、あたりをきょろきょろ見渡していた。 「吉宗くん大丈夫よ、あの人いないみたいだか