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侠客鬼瓦興業 第43話「ナイスレディー・マライアさん」

「お客様、こちらでお待ちくださいませ・・・」

黒服さんの丁寧すぎる応対で、僕は銀二さんが待つ奥の控室に案内された。そこには豪華なソファーとテーブルが上品に並べられており、その奥のソファーに銀二さんが腰掛けて何やら数枚の写真を眺めながら、マネージャーと話をしていた。

「それでは伊集院様は、クリスティーヌですね・・・、かしこまりました」

「おう、頼んだよマネージャー」
銀二さんは嬉しそうにそう告げると、控室の入り口できょろきょろしている僕と鉄に声をかけた。

「おい吉宗、鉄、なにそんなとこで突っ立ってんだよ」
「あ、はい!」
僕はあわてて銀二さんの隣に腰をおろした。

「失礼いたします。お飲み物は何になさいますか?」
僕がソファーにつくと同時に、銀二さんの前にいたマネージャーが、さっとお絞りを差し出してきた。

「え?」

「そこにメニューがあるだろ、ビールでもブランデーでも、好きなの頼めよ、ただだから」

銀二さんに言われ、ぼくは慌ててメニューからオレンジジュースを注文した。

「それではお客様、本日出勤している、当店のナイスレディー達です」
マネージャーは片方の眉毛をぴくっと吊り上げながら、いやらしい顔で、数枚の写真を僕と鉄の前に差し出した。

「え・・・!ナ、ナイスレディーって、いったい?」
僕は訳がわからず銀二さんの顔を見た。

「ナイスレディーは、ナイスレディーだろ、そん中から好きな子選べよ」
「選ぶ?」
僕は目の前に差し出された女性の写真に目をうつして、思わず息をのんだ、
そこにはまるで芸能人に負けないくらい、綺麗な女の人たちが写っていたのだった。

「やっぱ高級店っすねー兄貴ー、みんな、ハンパねえ美人すよー、ゲヘへ」
「う、うん・・・、本当だ」
よだれをたらして写真を眺めている鉄につられて、僕も真剣に写真の女性達を見ていた。

(この女の人たちと滑るのか、世の中にはこんな不思議なスケート場があったんだ・・・)

銀二さんは真剣な顔で写真を見ている僕に声をかけた。
「どうだ、すげえまぶい女の子ばっかだろ・・・、なんっつてもサービス料4万円だからな」
「え!サービス料4万って?」
「中でこの子たち払うお金だよ、入場料2万、サービス料4万あわせて6万円、めったにこんなところこれねーんだから、高倉の若頭に感謝しよ」
「ろ、6万円ーー!?」
僕は驚きのあまりソファーから転げ落ちてしまった。

「た、たかがスケートに6万円って!」

「スケート!?」
銀二さんは驚いて目をまん丸にしたあと、顔を真っ赤にして笑いだした。

「お、おまえ、ここまで来て、まだここがスケート場だと思ってたのか?ぎゃはははは」
「え、それじゃ、違うんですか?」
「ただものじゃねーとは思ってたが、国宝級だなー、お前の天然は・・・、はははは」
「そ、それじゃここは???」 
「ん?お前、ここは、ソー・・・」 
銀二さんは何か言いかけて、急に口をつぐんだ。
そして急にいイタズラな笑顔を見せると、僕の前にあった写真のなかから、一人の女性の写真をつかんでマネージャーに差し出した。

「この男、この子お願いね・・・」

マネージャーは眉をぴくっと吊り上げると、いやらしい笑顔で僕に向かって微笑んだ。

「お客様、マライアさんですね、この子はナイスの中のナイスガールです・・・。かしこまりました」

 「・・・マライアさん?」

 「はい、ナイスガール、ナイスバディーのマライアさんです」

「じゃあ、俺は、キャサリンー、キャサリンがいいっすー!!」
僕が首をかしげている横で、鉄が鼻息を荒げ叫びながらマネージャーに写真を手渡していた。
見るとその目は、血走った獣と化していた。

(いったいぜんたい、ここは、どこなんだ?)

学生時代からまじめ一筋で育ってきた僕は、ここまできても、自分がいったい何処にいるのか理解できなかったのだった。

それから数分後、例のごとく片方の眉毛を吊り上げたマネージャーが、てかてかのポマード頭でにんまり微笑みながら顔を出した。 

「大変お待たせいたしました。マライアさんでお待ちのお客様・・・、どうぞこちらへ」

「ほら、お前だよ、吉宗」
銀二さんはイタズラな顔で笑いながら、僕の手に一万円札を4枚持たせてくれた。

「がんばって、男になって来いよ・・・!」
「え、男にって?」
「いいから頑張って来いっての・・・」
銀二さんに背中を押された僕は、しかたなくマネージャーの後をついて歩き出した。

豪華だけれど、悪趣味にチャラチャラした廊下を、僕はマネージャーに導かれながら、不安な気持ちでついていった。
やがて廊下の突き当たりの小さなホールでマネージャーは立ち止まると、またしても片方の眉をピクリと吊り上げ、僕にいやらしい笑顔を見せた。

「お客様、こちらで少々お待ちくださいませ・・・」
マネージャーはそう言いながら僕を、ホールの真ん中にあるキラキラ、ラメの入ったカーテンの前に立たせ、その場から立ち去っていった。

「え?あの、ちょと!」

その時、突然僕の目の前のラメ入りカーテンがサーッと開いた。 

「えっ!?」

何とそこには、さっき銀二さんが選んだ写真の女性が、ピンクにのカウボウイハットに金色のベスト、ぴっちぴちのショートパンツ姿で、かっこいいポーズをとりながら立ってたのだった。

「いらっしゃいませー、今宵お客様を、素敵なハメリカンナイトへ導かせていただく、マライアで~す!」
そう言うと目の前の女性は、僕に微笑みながらセクシーに胸を突き出し、かっこよくクルッとターンをした。

プルン、プルン、ボヨヨーーン!
彼女の豊満なバストが、僕の目の前で、楽しそうに弾んだ。
なぜか僕も、その巨大なバストの前でボヨン!ボヨンと無意識にはずんでしまった。

「それでは、お客様、ご案内いたしま~す」

そう言うとマライアさんは片手に小さなカゴをかかえ、僕の腕に手を回し超豊満なボインを僕の腕に押し当ててきた!

「あっ、あの・・・、ちょと!?」

「さあ、どうぞ、一緒にお二階へ行きましょ・・・、貴方と私の、素晴らしいハメリカンナイトのお部屋へご案内いたしま~す」
マライアさんは僕の腕にむぎゅっとボインを押し付けながら、セクシーな瞳でウインクをしてきた。

「・・・あ、は、はい・・・」

僕はあまりの衝撃に逆らうこともできず、ダイナマイトバディー、マライアさんに導かれ愛の螺旋階段を登って行ってしまったのだった。

まさかここが、あの有名な、『ソープランド』という所だったなんて、まったく気がつかずに・・・。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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※このお話はフィクションです。なかに登場する団体人物など、すべて架空のものです^^

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