![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/58706722/rectangle_large_type_2_0c180c3d5456041e0ebaa497f1f6336b.jpeg?width=800)
なんだかよく分からない話
高校の卒業も近くなり部活のメンバーで、卒業旅行に出かけた。運動部ということもあり、長野県にスキーに行くことになった。
既に大学に合格した者、浪人を決めた者、進路やその状況はバラバラだったが久しぶりに部員全員が集まることができた。ただ、後輩が少なかったために、残念ながらバレー部は廃部することが決まっていた。
決して良い成績を残すことは出来なかったが、それなりに仲の良くやれていたと思う。
進路がバラバラになるため、高校最後の思い出にスキーにやってきたのだった。昼までそれぞれのペースで滑ったところで、お腹もすいてきたので、みんなでランチをすることになった。
どのお店にするか考えていたところ、ちょうど良い所にカレー屋があった。
食べ放題ということもあり、満場一致でそのカレー屋に入ることになった。
お店ではライスだけでなく、ナンも食べ放題であり、食べ盛りの高校男子たちにとってはとてもありがたかったことを記憶している。
お腹いっぱいになるまでカレーライスやナンを食べ、少し休憩してまた滑り始めた。
基本、それぞれの技術が違うため、バラバラに滑っていたが、たまにタイミングがあって、メンバーと一緒にリフトに乗って頂上にいく。そんな具合で楽しんでいた。
夕方に差し掛かろうというころ、部員の一人であるナカタ(仮名)とタイミングがあい一緒にリフトにのることになった。
ナカタは、少し天然のところもあるが、試合でもレギュラーで、チームでもっとも得点力があり、ケインコスギのような肉体を持つ男だった。ちなみにスキー経験者というだけあって、スキーもとても上手に滑っていた。
昼間、たくさんカレーを食べたとは言え、少し空腹を覚えてきた僕は、
「昼あんだけ食ったけど、ちょっと小腹すいてきたなぁ」と言った。
そうすると、ナカタがごそごそし始めて、スキーウェアの胸のあたりから何か取り出した。
すると、なぜか
スキーウェアの中からナンが出てきた
しょうもないことは分かっているけど言わずにはいれなかった。
「え?ナンで?」
リフトが到着する前に、僕はひとスベりした。
思考が追い付かない僕はかろうじて「それ?なんなん?」と聞くと
ナカタ「え?ナンやで」
「くうか?」
その昔、織田信長は、木下藤吉郎の胸元から出てきた草履を嬉しそうに履いたというが、草履ではなくプレーンのナンが出てきたら信長はどうしたのだろうか?それでも喜んで食べたのだろうか・・・「織田さん正解を教えてください」
僕「いや・・・・いいわ」織田さん僕じゃ天下はとれなさそうです。。。
断った僕の顔を不思議そうにみながら、現代版木下藤吉郎は、美味しそうにナンを食べている、そして、少しナンを残して、再びスキーウェアの中にナンをしまうのだった。(え?ドラ◯もん?)
そして、頂上に着くなり颯爽と滑っていった。
彼の食べていたナンは昼の食べ放題から持ってきたものだ。
ただそのナンには別にラップがしてあったわけではなかった。彼は、ナンを懐に入れたまま、何本も頂上から滑っていた。当然汗だってかいていただろう。とうかそもそもレンタルウェアだよね・・・。
考えれば考えるほど分からなくなる。とりあえず、僕の空腹は、食べ物以外の何か得体のしれないもので満たされてしまった。
20年たった今でもナンを見るたびに思い出してしまう話だ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?