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【連載小説】母娘愛 (23)
広島県庁の貸し会議室では、山岡の熱弁が冴えている!本番を三日後に控えゲネプロを、たったいま終えたところだ。細かい点の再確認をする山岡のテンションは最高潮だ!
「ハイ!まあまあの仕上がりじゃけど・・・佐伯の婆さん役のさっちゃんが、NPOの松ちゃんに連れられてドアから入ってくる!ところじゃが・・・松ちゃん!もっとリラックスしてよ!固いよ!アレじゃあ~まだ芝居ががっとる!」松本の目が鈍く輝く。
「それとおおかた同時に、寄付を終えた人が、取材班のインタビューを受けとる様子なんじゃけど、・・・言葉はもう少しはっきりとな!婆さんに聞こえるように・・・カメラは胸元を狙うように!顔は絶対に狙いんさんな!」カメラマンは指先で小さなOKサインを山岡に返す。
「寄付受付の三人は、当日もその銀行のユニフォームを忘れんさんな!胸の廣嶋銀行の刺繍を、婆さんに意識的に見せつけんさい。信用させるんじゃけぇ・・・銀行員らしゅう!笑顔を忘れんさんな!」
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「その後ろに立っとる警備員!さっきみたいに、二人でコソコソ話しなんかしんさんな!黙って現なまだけを追いんさい!両手は後ろでもっときっちり組んでな!背筋はピンと伸ばすんじゃぞ!」
「そうじゃのぉ?あの横断幕だけど、やっぱりもうちいと大きゅうしよう!」
山岡は壁に貼った<原爆死没者慰霊事業へより熱いご支援を!>の横断幕を、指さしながら、「もうちいと大きゅうして、・・・」文言を、原爆死没者慰霊事業へご支援を!と、簡略化するように提案する。
「山さん!その方が、一目で判るけぇええよ!」カメラマンの一人が、視覚的優位性を、まるでプロのように推した。
「よし!早急に書き直してくれ!」山岡は、会場の小道具を見渡しながら、なんだか寂しいなァ~と思う。「なんか?締りが悪い!・・・なんだか学芸会みたいじゃ・・・」頭をかきながら、山岡は考え込む。
「ボスに会場に来てもろうて、睨みを効かしてもろうたらどがぁ?」亀田がポロっという。選挙のときに、会場の奥で監督官が座っているように、雰囲気が締まるというのだ。
「・・・」山岡は、あまり乗り気がない様子だ。山岡には、仲間たちにも明かしていない、本当の企てがあるからだ。
そんな、山岡の思惑を踏みにじるように、亀田提案に押し切られそうな会場の雰囲気だ。確かに、あのハチゲンなら、場は締まる!と、山岡も思うのだが、『やりにくうなる・・・ボスは邪魔じゃ!』と、人知れず葛藤するのだった。
「山さん!それがええの!ボスに頼もうや!」
松ちゃんが決め打ち発言をして、山岡はすんなり押し切られた。『あとは、ボスが断ってくれるのを望むだけじゃ・・・』山岡は腹でそう思いながら、渋々賛同すのだった。
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