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カーキのリュックサック。


お国からの給付金も入ったことだし、そろそろ新しいリュックが欲しいなあと某タウン系ECサイトを眺める。すると意外とあっさり、サイズやデザインがいい感じのリュックを見つけた。限定クーポンの対象にもなっているし、もうこれにしよう。あとはカラーを選ぶだけ。カーキかブラック、どちらにしようかな。

ぼくはこれまで、黒のリュックばかりを買ってきた。いま使っている無印良品のリュックも、フツーに黒。ざっと思い返すと、5個ほど黒リュックを買った記憶がある。その理由は、とにかく「間違いないから」だ。黒を買っておけば外さない。ぼくが好きな青系のアイテムであふれたクローゼットとも喧嘩しない。

そんな事情もあって、今日こそ黒以外を選択してもいいのではないかと迷っていた。ここまでカーキに惹かれるのも珍しいことだ。すっかりクタクタで汚れもあるが、無印リュックもまだ戦えなくない。“堅実担当”はそいつに任せて、ドラマの登場人物よろしく特徴的なアイテムを身に付けるべきではないか。というか、身に付けたい。そろそろ新たな扉を開きたい。そう思っていた。

しかし結局、ぼくがカートに入れたのはブラックだった。レジへ進み注文確定のボタンをクリックすると、画面には「ARIGATO!」の文字が並んだ。

あれから6時間ほどが経過した今、すこし落胆する自分がいる。今回も冒険できなかった。ただウダウダして、堅実な橋を渡った。いわゆる「世の中で成功を収めるタイプ」の人間は、あそこで躊躇なくカーキを選択するのだろう。“過去”であふれたクローゼットとの相性なんてクソ食らえ、大事なのは“未来”だ“今”だと、自分の好奇心を放し飼いにするのだろう。

いつか、カーキのリュックを躊躇なく買える人間になりたい。いやもう、黒以外なら何でもいい。うん、次はチャレンジしよう。もし間違えたとしても、そこからまたやり直せばいいのだから。失敗がチラつく道にこそ、きっと自分にとって大切なものが落ちているのだから。



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