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パパも考えてほしいお産の場所。一番大切にしてほしい事とは?

お産をする場所って本当に悩みますよね。

奥さんはきっとたくさん考えているはずです。
旦那さんも親身になって聞いているはずです。

「お母さんが手伝ってくれるって言ってるし里帰りにしようかな」
「大学病院みたいな大きな病院が良さそうだけど遠いなー」
「ここの産院近いし、ホームページも良さそう」
「やっぱり清潔さや食事は譲れない」
「SNSでここの病院の評判良いし、友達も良いって言ってた」
「女医さん多いしここにしようかな」


でも、一旦冷静になって考えて欲しいです。

お産は、健康なお母さんが元気な赤ちゃんを産むことが当たり前の風潮がありますが、実はとっても危険が伴うことなんです。

元気なお母さんがお産をきっかけで亡くなっ
てしまうこともあるし、元気に産まれてくるはずの赤ちゃんが、蘇生の遅れのために重い障害が残ってしまうこともあります。

個人的な意見であり反対もあると思いますが、何よりもまず「安全な場所」を選んで欲しいと思ってます。

でも「安全な場所」って漠然としてますよね。

有名な先生がいるから、大病院だからと言って安全とは限りません。
お母さんにとっては安全だけど、赤ちゃんにとっては安全とは限らない施設もあります。

お産をする施設において、「安全な場所」を紐解いていきましょう。



お母さんにとって安全な場所とは?

 ① 距離が近い

距離が近い施設はお母さんにとって安全な場所と言えるでしょう。
施設外分娩といって道中で産まれてしまう場合もあり、前回のお産時間が短い人は特に注意が必要です。

距離が近い施設の利点は、お産の時だけではありません。
妊娠中に起こる合併症によっては、発生してから病院に到着するまでの時間が非常に重要になることがあります。
例えば、常位胎盤早期剥離と言って、妊娠中に胎盤が剥がれてしまう病気が発生した場合には、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても命に関わることがあり、1分1秒でも早く緊急の帝王切開が必要になることがあります。

かかりつけの病院が近くにある安心感は何にも変え難いと思います。


 ② 出血の対応ができる

妊婦さんがお産で命を落としてしまう原因の第一位が出血です。
下記でまとめているので読んで頂けたら幸いです。

出血に対する治療が速やかに行えていれば、救えた命も多くあります。

具体的には、輸血を行える施設なのかを確認することが大切です。

また出血によっては、子宮の血管を詰めて止める放射線治療や、お腹を開けて子宮を手術で取らないと出血が止まらない場合もあり、放射線治療や開腹手術が出来る施設であることが望ましいです。

IUCと言って成人の集中治療室があれば尚安全です。

 ③ 産後すぐにサポート出来る人がいる

産後のメンタルについては軽視されがちですが、産後1年間で亡くなってしまう原因の第1位が、産後うつを始めとしたメンタル不調です。
産後の心については下記でまとめています。

特に、産後すぐはメンタルの浮き沈みが激しい時期であり、産後のサポートが必要であることは言うまでもありません。
旦那さんの仕事が忙しく産後のサポートが得られない場合は、迷わず里帰りを考えて欲しいと思います。



赤ちゃんにとって安全な場所とは?

 ① 超音波のスクリーニング検査がある

産まれてからすぐに特殊な治療が必要な疾患は限られてはいますが、妊娠中に出生後すぐに治療が必要な病気をピックアップして、適切な場所でお産をすることが非常に重要になります。

例えば心臓の生まれつきの病気によっては、すぐに薬の投与が必要になる場合もあるし、横隔膜ヘルニアという肺がうまく育たない病気がある場合には、生後すぐに全身管理を行って手術が必要になります。

超音波検査の役割は、赤ちゃんの体重や性別を見ることだけではありません。
寧ろ、産まれてからすぐに治療が必要な怖い病気をしっかりピックアップすることの方がよっぽど重要です。

毎回超音波検査をやっているから安心という訳ではなく、忙しい外来では数分しか超音波検査に時間をかけられず、見逃してしまうこともあるでしょう。
そのため、妊娠中に数回で良いので時間をかけて赤ちゃんのスクリーニング検査をやっているかを確認することが重要です。


 ② 夜間の緊急帝王切開の体制がある

お産は何があるかわかりません。
「赤ちゃんが危ない!すぐにお産にしなくてはいけない!」という事態が発生することは稀ではありません。
小さい産院で帝王切開ができない施設だと大きな病院に搬送となるのですが、その間赤ちゃんは危険にさらされています。
出来れば、いつでもすぐに帝王切開が出来る体制が整っている施設であることが望ましいです。
産科医が二人体制で当直を行い、常勤の麻酔科医もいる施設だと理想です。


 ③ 出生直後の蘇生体制が整っている

出産直後に何らかの蘇生(赤ちゃんに刺激したり、人工的にマスクで換気したり、心臓マッサージをするなど)が必要な赤ちゃんはどれだけいると思いますか?

答えは15%です。

結構多いと思いませんでしたか?
すぐにオギャーと泣いてくれて、お母さんが抱っこして幸せな光景をイメージすると思いますが、実際には15%くらいの赤ちゃんがすぐに医療者によって蘇生処置が取られます。
産まれたての赤ちゃんはまだ肺に水が溜まっており、泣くことで水が空気に変わって自分で呼吸できるようになるのですが、うまく泣けず手助けが必要になる場合があるのです。

それが赤ちゃんの背中や足をさすってあげるだけの場合もありますが、本格的に人工呼吸が必要になる場合もあります(人工呼吸が必要になる場合が5%くらいです)。

この蘇生がしっかり行うことができれば、90%くらいの赤ちゃんは何ら障害もなく元気にしてくれると言われています。
つまり、産まれてすぐの初期蘇生が赤ちゃんの一生を左右する場合もあり、非常に重要なんです。

新生児科の医師がいる病院でも、正常お産で立ち会いをしている施設は限られています。
また夜勤帯には新生児科の医師がいない場合も多々あります。
そんな時は産科医、助産師が蘇生に当たります。

NCPRという資格をご存知でしょうか?
お産に関わる医療者は、取得が望ましいとされている新生児蘇生の資格です。
可能であれば、その施設でNCPRの取得が普及しているか確認することが望ましいでしょう。



夫婦で話し合うべき個々人にとっての安全な場所

お母さんにとっても赤ちゃんにとっても「安全な場所」を選択することが理想ですが、上記に挙げた全てを兼ね備えている施設は限られていると思います。

そのため、複数の施設を役割によって選ぶことも選択肢だと思います。

例えば、赤ちゃんの超音波のスクリーニングを別施設で行うことも可能です。
また小さいクリニックで健診を受けて、大きな病院でお産をすることも選択肢です。
小さいクリニックでも大きな病院としっかり連携を取れている所はたくさんあり、小さいクリニックを選ぶ場合にはその点を確認した方が良いでしょう。

また個々人にとって「安全な施設」が異なる場合があります。

例えば、お母さんには何にもリスクがないけれど、お腹の中の赤ちゃんが小さいため初期の蘇生がより重要視される場合には、赤ちゃんにとって安全な施設を選ぶことが望ましいです。

赤ちゃんの成長は全く問題ないけれど、お母さんが前のお産で多量出血の経験があったり特殊な血液型の場合には、お母さんにとって安全な施設を選ぶことが望ましいと思います。

妊娠経過や医療者の話を参考にして、納得できる施設を選べるよう夫婦でしっかり話し合って欲しいと思います。



まとめ

① お産をする施設は何よりもまず「安全な施設」を選んでほしいと思います。

② お母さんにとっての安全な施設は、距離が近いこと、出血の対応ができること、産後すぐにサポートができる環境があること等です。

③ 赤ちゃんにとっての安全な施設は、超音波検査のスクリーニング体制があること、夜間の緊急帝王切開の体制があること、出生後の初期蘇生がしっかり行われていること等です。

④ 複数の病院を役割によって組み合わせることも選択肢です。また、個々人にとって安全な施設は異なるため、何を重要視するのか妊娠経過を元に、夫婦でしっかり話し合って欲しいです。

2024/9/24時点のエビデンスを元に作成しています。

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