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『マレ・サカチのたったひとつの贈物』王城夕紀(著)

誰か、私を留めて。どこかへ跳び去ろうとする私を――世にも奇妙な「量子病」を発症して以来、自らの意志と関係なく世界中をワープし続ける稀。一瞬後の居場所さえ予測できず、目の前の人と再び会える保証もない。日々の出会いは儚く、未来はゆらぐ。人生を積み重ねられない彼女が、世界に爪痕を残すためにとった行動とは?

ポエミーなディストピアSFモノ。
世界経済は破綻し、バイオ食物会社とコンピューター会社に乗っ取られつつある世界で、主人公は量子病となり、世界中をワープし続け、世界の有様を見つめてゆく。

正直、この本で一番良かったのは「量子病」というネーミングかな。
実態は意図せずワープするだけなので、波と粒子や観測者問題までは表現できてはいない。青い衣服だけワープについてゆくが、説明もなし。
量子がテーマなのか、脳を量子コンピューターにコピーし、人の意識をインターネットに移そう、という運動も起こる。

 トンデモSFなのは今更なので良いとしても、世論をこの風潮にするため、テロを巻き起こしたり、世界経済を破綻させる意味がわからず。ポエミーなりに、もうちょっと説得力が欲しい。

さらに、量子病の主人公を、量子コンピューター上にコピーしようとするのが理解できない。臨床試験というが、量子病の原因は全く不明なのだから、量子コンピューターに影響を与える可能性があるのに。量子コンピューターがワープするかもしれないのに。

また、頭が良さそうな雰囲気の会話が盛り込まれているが、あらためて、森博嗣って凄かったんだな、と思わずにおれない。よっぽど頭が良くないと、頭の良い会話は書けない。

ちなみに、量子論入門については、鏡の中の物理学が良書。ノーベル賞学者が一般人向けに超噛み砕いて説明してくれている。波は電光掲示板上の光点にすぎない、という例えは感動した。しかしド素人の私には場がイメージできない(場が何で出来てるのかわからないしサイズもわからない)し、ベクトルについてはお手上げだったけど。

ついでに日頃の疑問を書くが、量子テレポーテーションがよくわからない。
量子もつれの片方を観測したら、もう片方も観測された状況(粒子)になるの? 
もう片方は観測しなくても状況が確定するってだけじゃないの?
作中でもアインシュタインが、これを利用すると光速を超えて通信できてしまう、という事象が紹介されてたけど、片方観測しても、もう片方は波のままだから、観測した方から、未観測の方へ情報を連携しないと、もう片方が何かはわからないのでは? 
理系の有人が欲しい。。


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