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『超動く家にて 宮内悠介短編集』宮内悠介(著)

「このままでは、洒落や冗談の通じないやつだと思われてしまわないだろうか」「深刻に、ぼくはくだらない話を書く必要に迫られていた」――雑誌『トランジスタ技術』を「圧縮」する謎競技をめぐる「トランジスタ技術の圧縮」、ヴァン・ダインの二十則が支配する世界で殺人を企てる男の話「法則」など全16編。日本SF大賞、吉川英治文学新人賞、三島由紀夫賞受賞、直木・芥川両賞の候補になるなど活躍めざましい著者による初の自選短編集。

初読み作家。タイトルに惹かれて手にとったが、バカSF短編集だった。最高。大好きなセンス。柞刈湯葉に似てるかな。他も絶対読む。

16編+後書きに解説、どれも素晴らしい。特に会話のテンポと言葉選びがかなり好き。
以下個別感想。

トランジスタ技術の圧縮

初っ端から、あまりのアホさ加減に衝撃をうける。しかしギャグだとおもった本も圧縮も実話であり、競技だけがフィクションであった。笑える。
競技自体はどうでもよく、ラストのセリフが言いたかっただけだろ、と思わずにおれない。

文学部のこと

文学がテーマのオムニバス本にこれを提出した作者の胆力にうなる。
たしかに文学って意味わからないよね、と同意したいが、微妙にできない変な一編。なぜ文学づくりに酵素が出てくるのか(笑)

アニマとエーファ

割とシリアスなファンタジーSF。燃え落ちる独裁国家と小説を書くロボットがなんとも悲しげで雰囲気がある。

今日泥棒

一番好き。だれが日めくりカレンダーをめくったのかを家族会議するだけだが、テンポ、オチともにキレがある。美しさまで感じる。

エターナル・レガシー

AIに負けた碁打ちが立ち直るお話、なのだが、妖精という発想が気持ち悪すぎて笑えた。謎のおっさんと平然と同居する主人公に驚愕だよ。それほど精神を病んでたのかなと心配になる(笑)

超動く家にて

挿絵で笑った。特に外観図。卑怯すぎる。なぜこれを表紙にしないのか? さらに無粋を承知で言うと、ドアが天井に付いてるんですけど(笑)
11人いる!ネタの不意打ちも酷い。

夜間飛行

そのAIに人格いる?と思わざるを得ないが、そのような社会になった経緯の方が興味あるな、と思った一編。

弥生の鯨

海女さんがメタンハイドレートを掘ってお金を稼ぐ社会のお話。ややシリアス。そんな手で拾えるほど固くないだろうし、トン単位の量がいるんでは?と思うと物語に入り込めず。

法則

ヴァン・ダインの二十則が適用される世界のお話。
ミステリーにならないような安直な殺人が物理的に出来ない。素晴らしい発想に感動する。事件自体はチープだが、オチが恐ろしくて良い。

ゲーマーズ・ゴースト

ドタバタドライブ劇。これはイマイチ。

犬か猫か?

海外小説のような舞台で、海外小説ではまず読めない漫才のような会話が楽しい。戦争前の陰鬱な雰囲気もバカバカしさをより盛り上げる。なぜこの話に挿絵をつけないのか(笑)

スモーク・オン・ザ・ウォーター

嫌煙者なので業腹な気分になったが、極小サイズのエイリアンが人体に寄生する、というアイデアは好きだな。病気を治すだけでなく、死ねなくなるとか話を広げてほしかった。

エラリー・クイーン数

ウィキペディアネタ。そういえば、エラリー・クイーン読んだことないな、と思いながら読んでいたが、シオドア・スタージョンの別名義とあり衝撃をうける。知らなんだ。スタージョンは大好きなので、エラリー・クイーンも読もう。

かぎ括弧のようなもの

「文学部のこと」と似たような感じ。バールとかぎ括弧が似てる、というだけで小説がかけるのだから凄い。落ちがあればなお良かったけど。

クローム再襲撃

スチームパンクっぽくて良い。長編で読みたい世界観かな。

星間野球

宇宙で野球盤を本気でやるとこうなる、というお話。嘘喰いを思い出して笑った。

あとがき

作者初のあとがき。自分でねじ込むところが素敵。裏話だらけで楽しい。

解説=酉島伝法

お前ら仲良いな!と微笑ましい。


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