物語
私は矛盾でできている。
読書をしていると、このことを突きつけられる気がする。
作家たちはありったけの感性を駆使して言葉を紡ぐ。
紡がれた言葉を咀嚼しようとする私たちは、その言葉たちがつくりあげる世界の広がりを見ると同時に、というよりむしろ有限性を突きつけられることがある。
何かが有限である、ことを知ることができた時、人は足るを知り、求めすぎることをやめる。
「物語」が好きな人は空想好きで浮き足立っているというのは間違いだ。
心の中に「物語」を多く蓄えている人ほど、より多くの視角から現実の輪郭を掴もうとし、現実に近づいていくから。
言葉を紡げば、世界が無限に広がっていくようでむしろその有限性が顔を出し、
「理想」や「妄想」に溢れているかのように思える実体のない「物語」は、「現実」をより色濃く染めていく。
世界は、矛盾でできている。
大好きな吉本ばななさんの「キッチン」を読んでいて思ったことでした。