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5.マーケティング戦略って何のために行うの? その2

「事業を相対的に低いコストで運営できる」ようにするためです。

連載もの「骨太不動産投資マーケティング」のつづきです。
前回はこちら、最初から読まれる場合はこちらからどうぞ。

今回はちょっとしたエピソードからスタート!

元上司、事業再生のプロ経営者のBさん

4-5年前のこと。
最初に勤務した一部上場A社の上司Bさんが、公開企業のC社の取締役代表社長に就任したとFBで見たので、名古屋出張の合間に挨拶に伺いました。

このBさんは、A社で不採算部門を立て直し、専務になった後、独立。事業再生のプロ経営者として、事業再生を数社で実施してきました。そして、地元である名古屋で、本人いわく”最後の事業再生”を行うべく、社長としてC社に入社されたのでした。

近況報告や昔話を一通りすませた後、Bさんに、
「よく、そう何社も何社も事業再生できますね~、すごいですよね~、Bさんは!」と思っていることを素直に伝えました。

二人で米国出張(NYからシリコンバレー)に行った元上司と部下です。
しばらく会ってなくても、昔の時間に戻ります。

「いや~、NO-CHI(ボクのこと)、事業再生なんて簡単なんだよ。業界で利益が出ている企業があるなら、利益がでない自体、おかしいことなんだよ。赤字の会社は、絶対コスト構造がおかしくなっている。だから、そこを見つけて、直せば、黒字化は簡単なんだよ。

と、あっさりと、さも簡単そうに言われます。

この「赤字原因のコスト構造を見つけ出し、改善する」ことがなかなかできないことで、Bさんのような人が高給で引き抜かれ、活躍されるのでしょうね。

はい、今回のnoteは、前回の「戦略とは」で2つ目のポイントとして紹介した「事業を相対的に低いコストで運営できる」です。

戦略とは、
・競合他社にくらべて相対的に高い価格を要求できる
・事業を相対的に低いコストで運営できる
・その両方を実現する
・何をやらないか選択する

こと

でしたね。おさらいです。

「事業を相対的に低いコストで運営できる」

ちょっとマーケティングを学んだことがある方であれば、「あー、コストリーダーシップ戦略のことね」と思われるかもしれません。たしかに表面的には、また言葉的にもそういう感じですよね。

でも、ボクはポーター教授の意図は違うのではないかと思います。

前回noteで、戦略定義のひとつとして「競合他社にくらべて相対的に高い価値を要求できる」を取り上げました。その中でアップル、BMWの例とともに、IKEAが「マイケル・ポーターの競争戦略」で解説されていると説明しました。いわゆる高価格製品企業と低価格製品企業が同時に書かれています。

”相対的に高い価値”は価格ではなく、価値だから、同時表記なのだと思います。

では、「低いコスト」はどういう意味なんでしょうか?
「低い価格」とは書かれてませんよね?
そう、あくまでも「コスト」に注目されていると考えるべきだと思います。

低いコストは、より安い価格で製品/サービスを提供する、コストリーダーシップ戦略をとる前提にもなります。高コストでありながら安い価格で販売してしまったら、製品/サービス提供を継続できなくなってしまいますからね。

また、戦略の3つ目のポイント、「その両方を実現する」をみてみると、”価値提供と低コストを両立させる”ことがわかります。

そう考えると、この低コストは「価値を生み出すためにコストをかけるのはいいけど、意味のないコストはかけてはダメだよ」ということだとわかります。

「相対的に」ともあるので、ここでも「Competitor(競合)と比べて」が当然のことのように意識されなければなりません。

Bさんの事業再生のやり方

Bさんにひつまぶしをご馳走になりながら聞いた話をまとめてみます。
このときの、ひつまぶしは、今まで食べたひつまぶしの中で一番美味しかったです!
もちろん、教えていただいた話も最高でした!
ーー
社長就任直後はいろいろな人に話しを聞くそうです。
かならず飲み会付でw

特に注目して聞くのは、現場でおかしいと思っているのに変えられないしきたりや非効率的なプロセス。

次は、そんなことを伝えてきたやる気のありそうな人たちをピックアップして、リバイバルプロジェクトのタスクチームメンバーにアサインします。そのメンバーを中心に改善できそうなところを検討させます。

このリバイバルプロジェクトは、当然、現行のものを削るリストラクチャリングが中心になっています。そのリストラプランをSMARTの法則が可愛いと思うぐらい、ギチギチの数値プランに落とし込みます。そして、PDCAを回しながら進捗を管理。ギューと締め付けながら、マネージ(管理)していきます。


こうなると、当然、意気消沈となるメンバーも出てきます。
そこで、カンフル剤投入です!

皆が不便や不満を感じていて、Bさんが収益向上に価値があると思う業務やプロセスを、改善策とともに追加投資をします。IT企業出身なので、IT分野が多かったかな?という印象です。

往々にして昔ながらの経営をし、赤字化してしまった企業はITが遅れすぎていたのかもしれません。そこは定かではありませんが、IT化で非効率な業務は、効率化され、その業務に不便や不満を感じていた人も、ちょっとはハッピーになるのです。

そして、一番の肝は、社員モチベーションアップのための特別ボーナス支給です。

目標収益を達しした場合は、役職関係なしに、一律X万とかの特別ボーナスをイベントとともに手渡しで実施します。これはA社でもやっていたことで、効果があると感じていたのかもしれません。時間拘束されるので、ボクはあまりうれしくなかったですがw

このように、
「価値を生み出すコストはいいけど、意味のないコストはかけてはダメだよ」を徹底的にPDCAで回していきます。

そして次の段階、赤字を脱却した段階で、「競合他社にくらべて相対的に高い価格を要求できる」を実施するのでした。赤字部門立て直しが最初の目的なので、順番が「低コスト」→「高価値」になります。

そして最後の段階、数年後、「その両方」を目指すのがBさんの経営戦略のお決まりのパターンのようです。
ーー
Bさんの執務室に戻ると、かわいい元部下とはいえ、「それ見せていいの?」と思われる、実際のリバイバルプロジェクト進行の数値データを見せてくれました。Excelのグラフデータが複数表示され、進捗状況が一目瞭然でわかるようになっています。

このグラフを見ていたら、昔、Bさんが事業部長をやられていた時のマネージャーミーティングのことを思い出しました。

当月の数字を達成していたボクは、来月用にと大型案件を隠していました。数字行かないと、Bさんに怒られますからね! 

でも、余裕をかましているボクの様子で、Bさんはそれを見抜いたようで、「NO-CHI、お前、なんか隠しているだろ? 今月、事業部の数字が苦しいんだから出せ」と言います。

”これ出したら、来月数字ないので、ボウズになってしまいます”、というボクの抵抗を聞いてくれ、「来月はいいから、気にするな」という、優しい言葉とともに提出させたのでした。

その次の月はどうなったか?
はい、想像通りです。素直に大型案件出したことは忘れられ、ガッチリ締め上げられたのでしたw

ボクの低コスト運営

本当に、ちなみ程度で、ボクの低コスト運営をご紹介します。
まー大した内容ではないですが、チリツモの例としてお読みいただければと思います。

ボクは自社の新築物件についての運営は自主管理で行っています。自主管理を行っている大家さんは、あまり多くないと思います。

通常物件管理を任せると月額家賃の3-5%を管理料を管理会社に支払うのですが、これをやらずに自分で3棟管理しています。

外資系IT企業勤務でありながら、物件管理ができるのか?
と思われるかもしれませんが、新築だとできます。

モノが壊れる可能性が限りなく低いので、入居者の方からの連絡がほとんど来ないのです。

連絡が来たとしても、「インターネットがつながらない」「鍵を実家に置いてきてしまった」など”かわいい”トラブルがほとんどです。それも、年0-2回あるかどうかです。

問題なく対処できます。

「インターネットにつながらない」と問い合わせを受けたら、インターネット業者のコンタクトセンターの連絡先を教えて終了。

「鍵を実家に忘れた」と問い合わせが来たら、「ボクのうちまで取りに来て下さい」と言うだけ。入居者の方は、片道90分かけて鍵を取りに来ることになるのですが、24時間対応といえば24時間対応なので近くの管理会社よりはいいかもしれません。

自主管理による節約金額
この自主管理により節約できる金額はいくらになると思いますか?
賃料の3-5%とはいえ、かなりのチリツモ金額になります。

家賃月額が65万円とすると、それの3-5%、26,000円(4%で計算)が節約価格です。それが3棟だと78,000円です。では、年間だと?

約100万円!95.7万円にもなります!

年に数回、”かわいい”トラブル対応するだけで、これだけのコストを節約することができます。まーコストを節約したところで、30%は税金に持っていかれるのですがw

自主管理の緊急対応
物件に行かないとできないこともあるのでは?と思われるかもしれません。
はい、本当に、たまーにあります。

その対処は、入居を決めてくれた仲介会社さんにお願いします。
(もちろん、代金は支払います)

管理にお金はかけないのですが、入居を決めてもらった時には、普通以上のお礼をしているので、仲介会社さんとはいい関係を保てています(いると思ってます)。

メリハリです。

仲介会社さんとのリレーションにはお金をかけ、気前のいい大家という価値を創造し、発生確率が少ない、対処がほぼほぼ自分でできる管理コストは、自主管理でセーブしています。

仲介会社さんとのリレーションに年間10-20万円かかったとしても、75-85万円のコストを節約していることになります。

自分が日々行っていることを、ポーター教授の戦略に無理やり当てはめてみましたが、戦略的行動がとれているようです。安心しました。

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