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【alma】同じ夢を見た僕らなら——alma現体制終了ライブ-Crossroad-に寄せて

almaというグループに出会ったのは2022年7月頃のことで、そう思うとまだ半年と少ししか経っていなくて、不思議な気持ちになる。

出会った経緯はこちらの記事で。

それくらいしか直接は知らないのに、現体制ラストライブのMCのこの3年間を振り返るコーナーを聴きながらうんうん、そうだよね、と頷ける程度にはグループの歴史のことが頭に入っている自分にちょっとびっくりしたりもした。

あと2ヶ月早ければマワループの遠征を前倒して東名阪ツアー行ってマワループのタイテも調整してたのになとか、そういう後悔はわりとどうでもよくて、出会うべきタイミングで出会ったんだなという感覚が強い。
それは色々な運も味方して、推しである小田切るるさんの言葉を借りるなら「濃い時間」を過ごせたからなのだと思う。

2022年9月に、almaに出会う遥か前である1年前から決めていたプライベートの用事で数日東京に滞在することになっていた。
初現場となった9/2深夜の@jamオールナイトイベント、その直後の当時の5人体制ラストとなる対バンライブという重要な2つの現場に参加することができたのは、その予定にたまたまタイミングがあったからに他ならなかった。

オールナイトの方には元alma・当時SAISON所属の米山穂香さんも出演していて、DJタイムのコラボでオリジナル6人体制の空気感をほんの少しだけ感じられたのも嬉しい経験であった。

◇◇◇

5人体制ラスト・飯島桃子卒業のときは、対バンの短い尺ながら重要な楽曲をギュッと詰め込んだ涙涙のステージだったので、今回も何となくそういうイメージを持ちながら迎えた2023年4月9日。
結果的には、自分の感情としても、メンバーの様子としても、どちらかと言えば楽しいが先行して、涙涙の、というライブではなかったように思う。それは、去る9月とこの4月の状況の違いかもしれないし、離れるメンバーの人柄の違いかもしれないし、あるいはワンマンライブというアットホームな空気によるものだったかもしれない。

ずっと終わりの実感が持てずにいて、ただ冒頭の『A Girls』から一曲一曲、この曲をこの4人で(そしてオリジナルから地続きのメンバーで)聴くのは最後だし、これから先しばらく聴けなくなるんだなという覚悟だけは頭の中にあって、ひとつひとつ大事に、でも楽しみながら聴いていた。


蛍の光は我らの勇気
その手を掲げて楽しんで行こう

『A Girls』/alma

Bメロ(ビルドアップ)のこの歌詞がとても好きである。
お店や会社が閉まって(『蛍の光』が街に流れて)、代わりにライブハウスに明かりが灯る時間がやってくる。フロアに掲げられる色とりどりの蛍の光が、ステージのメンバーの「勇気」になる。
almaというアイドルのライブの幕開けとしてこれ以上ない楽曲であると思う。

本当は叫びたい?
そんなのどーでもいいから手を叩け!

『A Girls』/alma

2020年代を生きるアイドルファンなら、読んだだけでグループの生い立ちを少し察してしまうようなこの歌詞が生まれた背景を離れて、この日は好きなだけ気持ちを叫ぶことができるライブだったことも感慨深い(ジャンプ禁止は残念だったけれど!)。

『resoution』についてライブの数日前にこんなことをツイートした。

このときは推しである小田切るるさんの生き様に重ねてこう書いたけれど、この日の4人のパフォーマンスを見て、当然これは4人ともに言えることなんだな、と認識を改めた。

グループを離れることを決めた花沢まりのさんも、残ってグループを守ることに決めた3人も、人生を懸けて、揺るぎない覚悟でアイドルをやっている。

ジャンプ禁止の『測定不能agitate』のもどかしさとそれを上回る盛り上がり、『オルタナティブ』は東名阪ツアー、『タクティクス』は6人で最初で最後の披露をしたAPG、存在する記憶に加えて、当時はその場にいなかったはずの記憶さえも思い出せるような、現体制を締めくくるに相応しい曲の並び。

『フォルティッシモ』と『ステラ』については、何度かツイートしているサビのリンクしたフリコピに改めて感慨深い気持ちを覚えた。

『フォルティッシモ』の指切りを掲げる両手のフリコピは、『ステラ』という文脈との前後関係と、ステージとフロアの相互関係がないと"完成"しない。
almaがアイドルである意味、アイドルがいる意味、ファンがいる意味を感じさせるシーン。
2曲を続けて本編の締めとするセットリストで改めてその意味を感じることができた。

『ステラ』の歌割りを、やっぱり今回も最後まで泣かずに全うできなかった小田切るるさんを改めて愛おしく思った。
後で聞くと、「息が出来なくなって声も出なくて、良くない声を聴かせるくらいなら音がない方が良いかなって」という判断であったらしい。通常、ライブのこういったシーンでは、崩れたパフォーマンスにさえもその時その場の文脈による良さが宿るものであるし、特にアイドルはそういうことが許される土壌を持った世界である。けれどもそれを許さない、どこか頑固とまで言えるようなパフォーマンスへの強いこだわりが、小田切るるという人を作っている。

◇◇◇

「まりちゃんきっかけでalmaに出会ったって言ってくれた子が沢山いて……まぁ皆まり推しじゃなくなっちゃったんですけど……」と笑いを誘ったまりのちゃんのMCのエピソードには個人的にも少し思い当たるところがある。

almaを知って少ししてメンバーのことを知ろうとし始めた頃、最初に目に入って印象に残ったのがまりちゃんの「昭和の時代を生きてみたかった」というこの固定ツイートであった。


最初の記事で書いた通り、自分にとってのalmaというグループはそのほとんど全てを小田切るるさんの存在が占めているところがあるけれど(語弊のないように強調しておくと「自分にとって」です)、そんな自分にとっても、そしてMCでネタにされた「もうまり推しじゃないんだけど」な人達にとっても、何か一つ大きな爪痕を残す魅力を持っていたのが、花沢まりのというアイドルだったのだろうと思う。

アンコールで披露された『抱きしめんだ、誓い。』は、あの日以降「飯島桃子の不在」を最も如実に感じさせる曲であり、自分にとっては同時に、1人残ったメインボーカルである小田切るるの努力の軌跡を感じさせる曲でもあった。
あれほどの歌を聴かせるグループで、6人が4人になったことによる技術面での負担は相当に大きいものだったであろう。
この日の4人のパフォーマンスは、もはや誰かの不在を感じさせたりしない、4人のこれまでの努力そのものだけを感じさせる素晴らしいパフォーマンスだった。
そしてそれは、花沢まりのが不在となっても、この先3人になって、あるいはさらなる変動があったとしても、そこにalmaがあるまで、そのメンバーでのalmaを作っていけるということの証左でもある。

アイドルにとって持ち曲に別れの歌を持つことは、来るべき別れの日のストーリーをエモーショナルに演出する上で効果的な力を持つように思う。翻ってalmaにおいては、単なる別れではなく「別れとその先」を歌った持ち曲が多くある。

いつかまた出会えるように
夜空に願いを込めて
明日へ向かうから

『ステラ』

いつか君に会いに行くからさ
信じてほしい

『抱きしめんだ、誓い』

もう一切!
弱音吐かないと 決めたあの日の夜空に
笑顔で会える その日を夢見て

『フォルティッシモ』

almaにとって別れは常にその先を見据えたもの。"そこにalmaがあるまで"、「いつかまた会える」という考え方が大きな軸として存在している。その価値観が改めてはっきりと現れたのが、最新曲であり、この日のライブタイトルとして冠された最新曲『Crossroad』である。

溢れる涙は思い出を
映し出したエンドロール
笑い合って抱き合った日々が懐かしい
お互いの夢追って
進んだ先道がいつか
交わり合ったらその時
もう一度笑い合えたらいいな

『Crossroad』

3年間の活動を振り返るMCで、「共同生活、実は嫌だった人~!」とふざけ合うシーンがあった。メンバーの中には既にそうやって懐かしむ日々があって、ここまでの3年間にそれぞれが歩んだ道の交差点が、この日の新宿ReNYであった。既にグループを離れた飯島桃子や、みずきPは2階の客席で、メンバー4人はステージで、彼女たちと同じ夢を見たある中(almaのファン)はフロアで、それぞれが選んだ道が交差した。

「別々の道を歩むことになりました。」「方向性の違いで…」「アイドルとして戻ってくることはありません。」
そうした言葉で人がグループを離れるとき、それはその選んだ方向、道の先に何か目標があるからこその別れであり、であればその目標へと向かっていく先でまた道が交わることもあるのではないだろうか。何故なら、元々同じ夢を見た僕らであったのだから。
『Crossroad』はそういう別れと、その先の再会を歌った歌である。

同じ夢を見た僕らなら
たとえ別々の道でも
いつの日にか逢えるだろう 夢の十字路で

『Crossroad』

だからalmaの別れは涙涙だけで終わるものではない。涙はそこまでのストーリーのエンドロールで、その先にはいつかの新たな交差点へと続く道が続いている。そう期待させるに十分な、素晴らしいパフォーマンスのラストライブであった。

◇◇◇

まりちゃんと、almaの3人がこれからも幸せでありますように!



2023.4.9(日)@新宿ReNY
alma現体制終了ライブ-Crossroad-
セットリスト

0 .Overture

  1. A Girls

  2. 潮騒セレネイド

  3. alma-ism

  4. resolution

  5. 大嫌い。

  6. 測定不能agitate

  7. オルタナティブ

  8. タクティクス

  9. フォルティッシモ

  10. ステラ

En1.ニューワールド
En2.抱きしめんだ、誓い。
En3. Crossroad


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