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パキスタンの教育制度

パキスタンの憲法では、5歳から16 歳までの児童に無償かつ質の高い義務教育を保障しています。幼稚園(3~5歳)、義務教育である初等教育(1年生から8年生)と中等教育(9~10年生)、それから、高等中等教育(11~12年生)、高等教育(大学および大学院)の6つの段階に分かれています。

パキスタンの教育制度の概要は次のとおりです。

未就学児

幼児教育(Early Childhood Education / ECE)または、未熟という意味のカッチ(Katchi)と呼ばれるこの段階は3~5歳の児童を対象としており、1年またはそれ以上の就学前教育を提供します。多くの場合、私立学校によって運営されていますが、公立学校も増加しつつあります。

幼児教育

初等教育

パキスタンでは、初等教育(Primary Education)は8年間続きます。5歳から13歳の生徒は、前期初等教育 (1年生から5年生) と後期初等教育 (6年生から8年生) の2つの段階を修了します。

1年生から5年生:日本の小学校にあたるこの段階は5~10歳の児童を対象としています。パキスタンの正式な小学校入学年齢は5歳です。国語(ウルドゥー語)、算数、理科、英語、イスラム学などの科目を習います。

6年生から8年生:日本の中学校にあたるこの段階は 11~13歳の児童を対象としています。科目は増え、専門的な内容が導入されます。

初等教育

中等教育

パキスタンでは、中等教育(Secondary Education)は4年間続きます。各学年を終えた後、生徒は全国試験に合格する必要があります。

9年生から 10 年生:日本の中学校~高等学校にあたるこの段階は 14 ~16 歳を対象としています。9年生は SSC-1 試験、10 年生は SSC-2 試験を受け、 中等学修了証書(Secondary School Certificate / SSC)が授与されます。その後、生徒は 11 年生と 12 年生へと進みます。

中等教育

高等中等教育

11 年生から 12 年生:日本の高等学校にあたるこの段階は 16 ~18 歳を対象としています。11 年生は HSSC-I 試験、12 年生は HSSC-II 試験を受け、高等中等学校修了証 (Higher Secondary School Certificate / HSSC) が授与されます。この試験には、医学部進学準備課程、工学部進学準備課程、人文科学、コンピューター サイエンス、商業などの分野があります。HSSC はそれぞれ通常レベル (O レベル) と上級レベル (A レベル) があり、ケンブリッジ・アセスメントなどの英国試験委員会によって管理されています。

高等中等教育

パキスタンには、技術教育(Technical Education)と呼ばれる別のコースもあり、このカリキュラムは5年生から 10 年生または 12 年生まであり、土木、化学、建築、機械、電気、電子、コンピューターなどの工学分野で、技術学校証明書と準工学ディプロマ(Diploma)を提供しています。ディプロマ取得後に関連分野の高等教育に進むこともできます。

技術教育

高等教育

日本の大学および大学院にあたるこの段階は、さまざまな分野で学士号、修士号、博士号を取得できます。前述の HSSC を取得した後、学生は専門分野の学士課程を4年以上かけて履修し、学位(Bachelor)を取得します。また、修士課程を2年かけて履修し、修士(PhD)を取得します。

大学および大学院

マドラサ

マドラサ(Madrassas)はイスラムの神学校です。コーランの解釈、ムハンマドの言行録、イスラム法、アラビア語などイスラム教の科目を教えていますが、それらに加えて、論理学、哲学、数学などの非イスラム教の科目も教えています。マドラサは、学生に食事と住居を提供していることもあり、貧しい家庭に人気があります。

マドラサ

非公式基礎教育学校

非公式基礎教育学校(Non-Formal Basic Education Schools / NFBES)は、さまざまな理由で正式な学校に通えない子供たちに教育を提供します。親、地域社会、非政府組織を関与し、読み書きや技能訓練などのプログラムを提供しています。

非公式基礎教育学校

課題

都市部と農村部の間、また男女間でも教育へのアクセスに大きな格差があります。特に女子の入学率を上げるための取り組みが続いています。2022年現在、パキスタンの識字率は、イスラマバードの 96%から農村部の 23%までとその差は歴然です。パキスタン政府は、教育へのアクセス、公平性、および教育の質を向上させるために、さまざまな政策と計画を導入しています。

ビジョン 2025計画(Pakistan Vision 2025)では、パキスタンが 2025年までに達成すべき一連の目標をまとめ、パキスタンが 2025年までに中所得国となり、2047年(建国100周年)までに世界のトップ 10の経済大国になることを目指しています。その一環として、小学校の就学率と修了率を100%に、識字率を90%に引き上げること、高等教育率を12%に引き上げ、博士号取得者数を15,000人に増やすこと、初等教育と中等教育における男女平等を実現し、女性の労働力参加率を45%に引き上げることなどが盛られています。

ビジョン 2025計画

パキスタンは2021年現在、年間約 445,000人の大学卒業生と 25,000~30,000人のコンピューターサイエンスの卒業生を輩出しています。パキスタン政府は教育へのアクセス向上、教育の品質向上、現代社会のニーズに合った教育に重点を置き、同国の教育システムを改善するための取り組みを行っています。

コンピューターサイエンス