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憧れの文章は、小一からの手紙

仕事で文章を書くけど、個人として何を書きたいということは今のところない。

ただ、あんなふうに書いてみたいと憧れる文章に心当たりがあるとすれば、小学校1年生のときにもらった手紙だ。

差出人は、同じマンションに住んでいた男の子。

当時、マンションには私とその男の子を含めて 6人ピカピカの1年生がいて、一学期は毎朝一緒に登校した。

引っ込み思案でインドアな私と違って、その子はクラスでも明るく目立つタイプで、1年中半袖半ズボンみたいな活発な子だった。

そんな彼が、お父さんの仕事の都合か熊本に引っ越してしまったのは夏休みだったろうか。

神戸に住んでいた私からすると、熊本なんてもう外国である。めっちゃ遠いとこに行っちゃったんや。ぼんやりしていた私は、さみしいとかいう感情がすぐに浮かばなかった。

1人減っても、マンションにはまだ同級生が5人。
登下校だってさみしくない。
元気かなあどうしてるかなあと思わなくもないけれど、熊本のことは遠すぎてよくわからない。
新学期にも慣れ、熊本が幻の土地のように思われてきた頃、一通の手紙が届いた。

開いてみると、紙いっぱいに大きな文字。


「ますだ、熊本はな、どこまでも真っ直ぐや!自転車でどこまでもいけるぞ!」


坂ばかりの神戸とちがって、えんえんとまっすぐに伸びる熊本の田舎道。照りつける夏の太陽の下、自転車で駆け抜ける、半袖半ズボンの姿がありありと浮かぶ。

元気とか、元気ですかとか、そんなことは何も書かれていない。いなくともわかる。ああ、あの子は元気で楽しくやってるんや。

なんの飾り気もない、けれど確かな意思をもった言葉。
子どもにもちゃんと意味が伝わる、子どもの言葉。

「ますだ、熊本はな、どこまでも真っ直ぐや!自転車でどこまでもいけるぞ!」

あんなふうに、自由で真っ直ぐな言葉を、子どもの言葉を、いつでも書いてみたいと思う。

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