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桑原 健太&茜/やつしろサニーサイドファーム

法人名/農園名:やつしろサニーサイドファーム
農園所在地:熊本県八代市
就農年数:1年
生産品目:晩白柚(ばんぺいゆ)、甘夏を中心に複数の柑橘類と、これらを原材料にした生ジュースの販売
HP:https://sunny-side-farm.studio.site/
SNS:やつしろサニーサイドファーム

no.227

将来は中国市場に進出したい!地域の農業基盤を取りまとめる役割を果たしたい!

■プロフィール

 熊本県八代市の特産で、国内最大の柑橘として知られる晩白柚(ばんぺいゆ)農家に生まれる。

 農業は祖父母が行っていたが、父は農政局、母はJAに勤めていたため、子供の頃は農家を継ぐつもりはなかったものの、農家ばかりの地域に育ったため、農業への関心は高く、明治大学農学部に進学。

 授業や農業系のサークル活動を通じて農作物を生産したり、販売するなどの経験のほか、「緑のふるさと協力隊」などの活動の一環として、休みのたびに全国各地のさまざまな農家にファームステイして、泊まりがけで栽培や収穫体験を重ねる。

 2017年の卒業後は、信用組合の地元支店に就職し、企業の融資業務を担当。2020年、大学時代から追っかけをしていたアイドルのライブやイベント会場で出会った茜さんと意気投合して結婚。

 2021年、4年にわたって勤めた金融機関を退職し、祖父のもとで就農までの研修を送る。2022年、祖父から農地を引き継ぎ、「やつしろサニーサイドファーム」を設立。

 研修期間中にプログラミング技術などを学んだ「SUNABACO」の協力を得て、自社ホームページの立ち上げや、柑橘類を使ったコールドプレスジュースを開発し、キッチンカーでの販売を開始。

 2023年11月には「ヒナタフルーツパーラー」もオープンし、就農2年目ながら対前年比500%の売上を実現。

■農業を職業にした理由

 全国の生産量の9割を八代で占める晩白柚農家に生まれ、近隣は農家だらけという環境だったことから、自然と農業への関心を持つようになる。

 大学の農学部では、途上国の農業・農村の開発に関する研究を専攻しながら、農業系のサークル活動を通じて、宮城や福島、関東、広島、山口などの農家でファームステイを経験。

 子供の頃は農家を継ぐ考えなどなかったが、次第に意欲が高まり、ステイ先の農家に相談。すると、多くの農家から「一度は社会人としての経験をつけておいた方がいい」とアドバイスされ、地元の金融機関に就職。

 サラリーマンとして4年働くなか、大好きなアニソン歌手のファンミーティングなどで出会った茜さんと結婚。祖父の下で研修したのち、2022年に「やつしろサニーサイドファーム」を設立。

 祖父の時代は40アールの農地で作った晩白柚や甘夏をJAに出荷していたが、経営を引き継ぐ際に、「それではとても生活できない」と知り、規格外で廃棄する果物を使ったフレッシュジュースを販売しようと、クラウドファンディングを通じて運営資金を集め、キッチンカーの購入や改装に充てる。

 祖父から受け継いだ晩白柚や甘夏をはじめ、レモンやパール柑、不知火などの柑橘類のほか、最近ではアボカドやアスパラの栽培も始めた。

 栽培知識が圧倒的に足りないという自負から、地元農家や熊本の4Hクラブ(農業青年クラブ)に所属する若手農家と交流を広げて、困ったときには相談できる人間関係の構築にも熱心だ。

 また就農2年目ながら、自社ホームページでのネット販売やふるさと納税の返礼品、フルーツパーラーのオープンなど、販路拡大に積極的に取り組んでいる。また地元高校での講演にも参加したり、妻の茜さんと一緒にSNSやYouTubeでの情報発信を通じて、ファン獲得に力を入れている。

■農業の魅力とは

健太さん:大学時代にさまざまな農家を訪ね、作業を手伝う機会を通じて、作物と向き合う農業という仕事の魅力を再発見しました。高齢で営農できなくなった祖父に代わって、事業を引き継ぐ際に初めて経営状況を知って「とてもこれでは生活できない」と悟りました。そこからのスタートです。

 柑橘は1年1作ですから、本来なら栽培技術や知識を身につける研修期間を充実させたかったですが、その代わりとして全国に展開しているコミュニティ運営スクール「SUNABACO」でプログラミングの勉強をしました。

 ここではホームページ作成などのITスキルだけではなく、経営や人材育成などさまざまなことが学べます。規格外品のフルーツを使ったフレッシュジュースをキッチンカーで販売するアイディアや、フルーツパーラーの運営などはSUNABACOの八代チームに協力してもらって実現にこぎつけました。

 祖父は長年、晩白柚を作っていましたが、僕自身は東京の大学に進学したあと、サラリーマンをやっていたので、地元から離れていた期間が長かったため、まずはいろんな人を巻き込める人間関係を築いていこうと、4Hクラブに参加して、栽培や経営を相談できる仲間を作ったり、SNSを通じて全国の農家とのつながりを増やしています。

 本来、SNSでの情報発信は苦手なのですが、今は妻が、農業の専門知識はなくても役に立ちたいと、X(旧ツイッター)とインスタグラムを駆使して、ファン獲得に頑張ってくれています。

茜さん:新規のお客さまももちろんですが、まずは何度も果物を買ってくれるリピーターを増やしたいので、Xとインスタグラムを使い分けて密にやりとりしています。

 私は結婚前、東京で販売の仕事をしていたので、農業に対する知識はありませんが、ネット販売やSNSでファン獲得するノウハウはわかります。

 長女が生まれてからは、子育てしながらでもできるようにスマホ片手にやりとりしています。

 結婚して熊本に移り住む前は「よそ者の自分が馴染めるかな」とか「農家って、おじいちゃんとおばあちゃんしかいないのでは」という不安もありましたが、とんでもない!皆さん大歓迎してくれましたし、健太くんが参加している4Hクラブの仲間たちや、SNSで知り合った若手農家は、自分で考えていろいろなことにチャレンジしていて、とてもパワフルです!

 内と外から見る農家のイメージにはこんなにギャップがあるんだなあと毎日驚いています。

■今後の展望

 2022年の独立後、SUNABACOの協力を得て、規格外フルーツを使って、コールドプレス製法で作ったフレッシュジュースを開発し、クラウドファンディングで運営資金を募ってキッチンカーを購入しました。

 八代市内でのイベントやコミュニティの集まりに出店して、僕らを知ってもらう機会を増やしています。また2023年にはフルーツパーラーもオープン。ここはワークショップやイベントスペースにもなるので、僕らのドリンクや地元の特産品を使ったパンケーキなどを提供しています。

 フルーツパーラーの営業場所を提供してくれたSUNABACO八代と一緒に、「ヤツシロヤ」というECサイトを作り、地元の特産品である晩白柚やトマト、生姜、イチゴを使ったジャムやドリンクを開発し、販売してます。ウチの果物だけではなく、八代という場所を広く知っていただきたいと思っているのです。

 晩白柚は八代で国内流通の9割を作っている特産品ですが、僕の祖父を含め、生産者は高齢化しています。5年後、10年後は減ってしまうでしょう。僕が生まれ育った八代への恩返しとして、将来は地域の農業基盤を取りまとめる役割を果たしたいと思っています。そのためにも、今から人間関係の構築は重要です。

 農家としてはスタートしたばかりですが、将来は中国市場への輸出を夢見ていて、2024年にはテストマーケティングを行う計画を進めています。最大3kgの重さに育つ晩白柚は、黄金色が美しく、中国人には間違いなくウケると思うのです。

 農業だけが生産から加工、販売までできる産業です。農家が100人いれば、100通りの経営があって、規模も異なります。一人でやっても、会社組織にしてもいい。それだけ選択肢が多い、自由度の高い産業です。僕はゆくゆくは栽培を任せられるスタッフや販売スタッフなど、それぞれを事業にして法人化を目指したいと思っています。

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