荒木 昌造/トマト農園Soil
舞台監督から塾運営、異色の経歴を経て阿蘇でトマト作り
■プロフィール
鳥取大学農学部卒業後は、子供の頃から続けていたオーケストラやクラシック音楽への憧れから、音楽イベントなどの仕事を経て、オペラ監督事務所や東京フィルハーモニー交響楽団などで舞台監督を務める。
その後は、個別学習塾のグループで5年にわたって塾の運営に携わっていたが、2013年秋、父が脳出血で半身不随になったことがきっかけで退職。
両親が定年退職後に住んでいた熊本県の南阿蘇村には、2015年に移り住み、環境に負荷をかけないトマト作りをスタート。
2016年4月に発生した熊本地震で、ボランティアに宿泊場所を提供したことがヒントになり、2020年夏からは農業体験ができる宿やモーニングカフェを始め、話題となる。
■農業を職業にした理由
大学では農業機械を専門とし、乾燥地作物であるラッキョウの調整機械に関する研究をしていたが、卒業後は音楽の仕事を経て、個別学習塾の教室長として勤務する。
そうしたなか、南阿蘇村に移住していた父親が脳出血で倒れ、半身不随になったことから、介護のため両親のもとに戻り、以前から勧められていた農業を始めることを決意。
阿蘇山のカルデラの南部に位置する南阿蘇村でも、借地として利用できたエリアは粘土質の土壌が多く、水田やソバ、牧草栽培の農家がほとんどだったが、「熊本といえばトマトだろう」とハウス栽培への挑戦を始める。
豊かな地下水とAI灌水施肥システムを利用して作った自社ブランド「あそふるトマト」は、地元・熊本をはじめ、福岡などのスーパーマーケットなどでも人気だ。
■農業の魅力とは
農業を始めたきっかけは、半身不随になった父が望んでいたのが理由ですが、東京でサラリーマンをやっていた時に比べたら、通勤地獄もなく、自然のなかでストレスフリーに仕事できるのが何よりも魅力です。
移住して6年がたちましたが、いまだにどこかに旅行者気分が残っているようで、私の目指す農業は南阿蘇の豊かな自然の恵みをいただきながら成り立っていると思っています。
2020年にカフェや宿泊業を始めたのも、当初は熊本地震が起きた時に、ボランティアに来てくれた人たちに宿泊場所を提供するのが目的でした。
今では私と同じように、ここに訪れた多くの人たちに南阿蘇の恵みを伝えるとともに、農業を志す人たちに農業の現実を体感してもらう場所として活用してもらいたいと思っています。
■今後の展望
2016年の就農当初は、田んぼを転換した土地だったこともあって、カビの病気である白絹病にかかってトマトの半分くらいが枯れてしまいました。また同年7月には台風被害でビニールハウスが破れるなど赤字経営からのスタートでした。
3年間はJAへ全量出荷していたこともあり、収穫量に重点をおいた栽培をしていましたが、少しずつ、ヒマワリオイルやデンプンから抽出された有機JAS規格の農薬や天敵農法を取り入れたことで、環境への負荷を減らして、満足できる品質の作物を安定的に生産することが可能となってきました。
大規模化を考えたこともありましたが、ここ数年、「おてつたび」をはじめとする農業体験希望者を受け入れてきたことで、農業体験の交流の場になるよう目指していきたいと考えています。
今の若い世代はSDGsや環境問題について勉強していますし、社会の役に立ちたいという気持ちが強い。デザインの仕事をしている人が農業体験にいらっしゃった時には、農作物を商品としてどうやって見せていくべきかとか、これからの農業のあり方などをテーマに話しあってとても刺激になりました。
私の農園が、次世代の農業を考える場になってくれたらと思います。
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