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情報の波に呑み込まれて

 病的に、活字が好きだ。
 祖父母の家には、アンティーク調の大きな本棚があった。祖母が一目惚れで購入したそうだ。本を読まない祖母がなぜ本棚を買ったのかは不思議だが、そこには祖父の読んだ本が並べられていた。あらゆる時代の小説、音楽や旅の雑誌、統計学の参考書などだ。時を超え、僕がそれらを読み漁ることになる。
 読むことが素敵だと思わせてくれたのは、祖母の言葉。「おじいちゃんの話し方が好きで結婚したの。丁寧で優しい言葉って毎日聞きたいでしょ。色々な本を読んでいるから言葉が体の中にいっぱいあるのよ」。それを聞いて祖父のようになりたいと思った。そこからの僕は、そこに活字があるから、読む。みたいな状態になった。今思うと丁寧で優しい言葉で話せていたのは、そんな時期だったような…。今みたいに情報が個人に最適化されていない、ノイズも混じった雑多な状態。
 溺れてもいい、もう一度、情報の波に呑み込まれてみようか。

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