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言葉を、大切にしたい。自由に使えるからこそ、丁寧に扱っていきたい。最近よく思います。

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マガジン

  • note予備校~トランスミッション~

    • 115,091本

    とらねこが運営する共同マガジン。グループ合計で参加者1,100名を超えました。フォロワ数2000名以上、120,000記事以上が収録されています。🌱コンテンツを広めたい方の参加をお待ちしています。🌱マナー:①連続投稿はしない②社会一般的に不適切な記事は投稿しない③トップ画面は変えない。参加希望の方は,マガジンの固定記事からコメントしてね(ง •̀ω•́)ง

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さかさ

 6月、無計画に有給をとった。会社の誰かが「今月は祝日がないから辛い」と言った。カレンダーを見ると確かに6月の平日に赤い数字はない。隣の5月にはある。何もないが、明日の有給申請を出した。辛いの伝染だ。  普通すぎる平日で、普通にいつもと同じ時間に起きてしまった。外からは、雨の音が聞こえる。無計画な休暇の罰だろうか。それともただの梅雨だろうか。選択肢から外出が消えてしまった。なぜなら、僕は今、傘を持っていない。多分どこかのお店か駅にあると思う。考えるのが面倒だ。休日最高の過ごし

    • 猫と靴下と

       物探しが苦手だ。僕の靴下や携帯には、きっと足が付いている。僕が見つけたいと念じれば念じるほど、それらは、足速にどこかに隠れてしまう。そのせいで猫が一瞬で駆け抜けることができるような広さの家なのに、探し物は一向に見つからない。  待ち合わせ時間が迫っているが、靴下がない。またどこかに走っていってしまったようだ。靴下は何処へ。靴下は何処へ。  ふと猫を見ると、靴下の片足をくわえていた。なぜか勝ち誇った顔をしている。時間はない。でも、いきなり奪うと機嫌を損ねそうなので、しばらく泳

      • 大人ってなんだ

         早く、大人になりたい。あの頃の僕は、学校がないから宿題もなくて、お金を持っているから自由に好きな物が買えて、料理を自分で作れるから好きな物だけを食べられると思っていた。大人の特権。誕生日ケーキのロウソクの火を消した瞬間から、次の誕生日が来るのを指折り数えていた気がする。1秒でも早く大人になりたかったのだ。  そして、大人になった今、あの頃に戻りたい。とは思わない。正確に言うと、どこに戻ったら良いのか見当がつかないのだ。どこに戻っても、きっとうまくいかない気がする。特に結末を

        • ポスト

           近所にポストがあることを知った。手紙・はがき、その他郵便物が投函できる。存在感抜群の真っ赤なそれを、僕は2年以上認識していなかった。  祖母に手紙を書こう。きっかけをくれたポストに感謝。  「おばあちゃん、お元気ですか。そちらの生活には慣れましたか。こちらは変わらずです。最近、素敵なペンをもらいました。でも、僕は同じ物を持っています。僕のことを考え、僕にピッタリの物を用意してくれたのに、その時笑えていたかどうか・・・。  おばあちゃんは、毎年同じ物をもらう時期があったそうで

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        さかさ

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        記事

          楽しみな日ほど・・・

           しとしと雨が降る。  雨は、僕に囁く。「外に出ると濡れちゃうから、家にいたら。ほら、あの読みかけの本もあることだし。あまりにも読まないと、物語の結末が変わってしまうかもしれないよ」。僕は、寝転がりながら本棚に目を向ける。  本棚には猫が座っている。  猫は、僕に呟く。「ごろごろしていたら。本なんか読まないで、昼寝をするのが一番。物語よりも、素敵な夢が見られるかもしれないよ。どんなものかは、知らないけどね」。僕は、静かに目を閉じる。  音が聞こえる。  アーティストは、僕に叫

          楽しみな日ほど・・・

          立場

           「視点を変えてみよう」。ほろ酔いの先輩が、ハイボール片手に急に話しはじめた。  「鬼には、鬼の生活があると思わないか。やつらにも家族がいて、やつらなりの倫理観があるんだ。それを培うための教育だってあるはずさ。きっと族長には、一子相伝で人間を倒す必殺技とかも引き継がれていたと思う。だけど、犬や猿、雉と人が共同で攻めてくる対策はなかったんだ。しかも、吉備団子のドーピングは想定外だよな」。先輩は、まるでその戦に参加した鬼のように、遠くを見つめている。  「昔の先輩、本当に鬼でした

          立場

          最近、大事にしている文房具

           複雑な事を簡単に。それができる人たちの話は、本質というか、核というか、そういった類のものがしっかりあるので、短い時間でも理解できる。  一方、僕は、考えながら書くことができる文章でも、見つけられない。  文章を書く時の僕は古風だ。400字詰め原稿用紙1枚によく尖った鉛筆、消しゴムを持って机に座る。そして、今日こそは太宰治や三島由紀夫が、僕に憑依してくれますようにと祈るところから始まる。ここまでは、儀式的で美しい。  その後は醜い。意味のある言葉も意味のない言葉も不規則に並べ

          最近、大事にしている文房具

          絵文字やらスタンプやら

           年1回の大きな喜びよりも、毎日の小さな喜び。お風呂にゆっくり浸かれた。散歩道にスミレが咲いた。こだわりの傘を買った日に雨が降ったとか。平和な大人になれたと思う反面、現実的な大人になってしまったとも思う。少しだけ、自分に怒りを感じる。  怒りは、疲れる。自分に向ける時も、他人に向ける時もだ。有名な音楽家曰く。「怒りこそが、創作の源」という方もいる。怒りをうまく活かせない自分に、哀しさを感じる。  哀しさは、好き。胸が詰まるような気持ちは、自分を把握できている気がするし、人のこ

          絵文字やらスタンプやら

          普通

           どうして電車の揺れは、こんなにも眠たくなるのだろうか。起きては、眠り。起きては、眠り。短時間で現実と夢の行き来をするものだから、情報の処理が追いつかない。結果、僕は降りたい駅で降りられないことが、結構な割合である。現実で駅名を言われても、もう少し眠りたいから、これは夢だと自分に言い聞かせるのだ。そう、自分自身を騙している。  その日も僕は、友人との待ち合わせ場所に向かうために電車に乗っていた。少し混雑していたが、座ることができた。いつも通りゆらゆらの魔術に誘われ、睡魔に呑み

          猫と僕の休日

           外を眺め、物思いに耽る猫がいる。先ほど食べた、お昼ご飯に思いを馳せているのだろうか。はたまた先ほどテレビで流れていた、今後の日本情勢について熟考しているのだろうか。僕には知る術がない。  幼い頃、猫と散歩をしたかった。一緒に外を歩けば、猫の考えていることが、少しは理解できるのではないかと思っていたのだ。犬を飼っていた友人から聞いた話。「犬は散歩中、家にいる時とまったく違う表情をするんだよ。嬉しい表情だったり、怯えた表情だったりね。そういうのを見ると、好きな物や嫌いな物が分か

          猫と僕の休日

          リズム

           最初は、あの人の声が好きなのだと思っていた。  そう、それは現代文の時間。先生はなぜか生徒に文章を朗読させることを大切にしていた。大人になった今だから、何となく先生の考えていたことや、その意図もちょっとだけ理解できる。  あの人は授業中、朗読するために積極的に挙手する人だった。たしか「スーホーの白い馬」や「スイミー」、「やまなし」だったりの朗読だったと思う。もっと文章はたくさん教科書に載っていたような気がするけど、あの人を意識していたのはそんな時期だった。  ある時、家で好

          リズム

          In the zone

           体感は、2時間。真っ暗な空間で目を閉じて、仰向けになっている。別に切羽詰まっているわけではない。ただ、眠りたいだけなのだ。確かに僕は、深い眠りに入りかけていた。   最初は自分で落とした携帯の音。次は動かした足とシーツの擦れる音。最後は寝返りの枕の音。今では、静寂のなかにある空気の揺れる音も聞こえる。空気の揺れた場所と自分との距離も正確に把握できる。   空気の揺れはどこに行って、どこに消えていくのだろうか。さすがに消えいく音までは聞こえない。徐々に音が小さくなっていくよう

          In the zone