コハルの食堂日記(第3回)~還暦を迎えまして~
平成三十年十一月三日。お昼の営業を終え、のれんを一旦しまった午後二時半、片付けも粗方済んだところで、春子は半紙の上に筆ペンで「本日十一月三日の夜の営業は貸し切りとさせていただきます。 味処コハル 店主・春子拝」と達筆をふるう。
今日、文化の日は春子の夫・勲の誕生日である。今年で六十歳となる。六十歳といえば「還暦」。今日の「味処コハル」、夜の部は勲の「還暦を祝う会」という名目で、勲の同僚の中でもとくに親しい者や旧友らを招待し、店を貸し切りにしたところでの飲み会が行われること