意味不明会話.txt（其之二）「31番の受難」

先生「よし、じゃあ、今日は5月30日だから。30日ということで、30番の渡辺。178ページ頭からの段落を読みなさい」
渡辺「あの、先生……、今日は5月31日です」
先生「ああ、そうだ31日だ。じゃあ、31番の安藤に読んでもらおうか」
安藤「えぇ……、はい。……第二次性徴期を迎えると男性には精通、女性には初経が起こり、徐々に大人の身体へと向かっていくことになります……」

――今はここ某高校での2年Q組。保健体育、その座学の授業中である。
　　このクラスは理系クラスなので男子30人、女子10人と、クラスのメンバーでは男子が多くを占める。出席番号は男子五十音順のあとに女子五十音順に並べられている。1番青木君から30番渡辺君までは男子。31番安藤さんから40番吉川さんまでが女子、といった具合だ。
　そして、保健体育の先生は日付を利用してトップバッターとなる生徒を当てるのだ。これもまぁ定番の当て方だが、しかしひと月は最大で31日までしかないので、ほとんど男子しかあたらない。ただ、31日まであるときだけは31日に、出席番号31番の安藤さんが当たってしまうのだ。

――放課後。
出席番号31番・安藤絵理奈はクラスメイトの女子、34番・桜井みちる、38番・中川友里のなかよし三人組で一緒にいる。
安藤「なんか、今日の保健、あの部分読むの恥ずかしかったよ……」
桜井「どんまい、絵理奈。絵理奈は恥ずかしがり屋だもんね。それを押し付けた渡辺も悪いんだよなぁ。あと、近藤（保体の教師）もちょっと気をつかえよって思うけどな」
中川「でもさ、31日は12ヶ月毎月あるわけじゃないけどさ。それでも31日に学校があることって滅多になくない？」
桜井「ユリ、どういうことなの？」
中川「ニシムクサムライって覚えてるよね。31日のない月」
桜井「そうだよね。2, 4, 6, 9, 11月には31日がない」
中川「それでさ、残りの月を見ても、5月31日と10月31日と1月31日は平日だ。だけど7月と8月の31日は夏休み中で、12月31日は大晦日。3月31日は春休みじゃない。残りの31日でも土日に重なるともっと少なくなるね」
桜井「ああ、まぁ、そう言われると、そうだね……」
中川「だからさ、絵理奈。君のトップバッターとしての出番なんて各学期に一度ずつしかないんだぞ！安心したまえ」
安藤「なんか、そう言われても……、全然慰められてない、んですけど」